都会の少女と島の少年の出会いと成長を描いた物語、
島で培われた自然や歴史文化を散りばめたダークファンタジー、
美しい自然と島人の温かさの中で生きる親子の愛と葛藤、
知られざる島の歴史を紐解くドキュメンタリーなど
「島」にインスパイアされた6つの映画作品を紹介。
(文・石原みどり)
※この記事は『ritokei』30号(2019年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
島から家出した少年のボーイ・ミーツ・ガール 『天気の子』
天から海面に差し込む「光」を追いかけるように船に乗り、
島を出た家出少年・帆高が目指したのは雑踏ひしめく東京。
雨の降り続く街で帆高は晴れ女の能力を持つ少女と出会う。
厳しい現実に抗い、生きようともがく少年少女が出会い、
未来を選び取る姿を疾走感溢れる映像で描く。
劇中、帆高が船で東京港へ向かう場面は印象的。
島へ向かう船内の食堂やレインボーブリッジなど、
島旅好きの心踊るリアルな描写も見所。
©️2019「天気の子」製作委員会
配給:東宝 原作・脚本・監督:新海 誠 音楽:RADWIMPS
声優:醍醐虎汰朗/森 七菜ほか 全国順次公開中
長島を舞台に、親子の愛と葛藤を描く
『夕日のあと』
自然豊かな鹿児島県長島町で養殖業を営む夫妻は、
子宝に恵まれず、里子の豊和を迎え、育ててきた。
豊和との特別養子縁組申請を控える中、
7年前に起きた乳児置き去り事件が浮上し、実母が現れる。
育ての親と生みの親がぶつかり合い、
家族とは? 子どもの幸せとは?正解のない問いを突きつけられる。
穏やかな海に沈む燃えるような夕日のあとに、
二人の母親が下した結末とは。
©2019長島大陸映画実行委員会
配給:コピアポア・フィルム 監督:越川道夫 脚本:嶋田うれ葉
出演:貫地谷しほり/山田真歩/永井大ほか 全国順次公開中
意地っ張りな母娘が綴る、3年間の物語 『今日も嫌がらせ弁当』
八丈島で娘2人を育てるシングルマザーの人気ブログが
書籍化され、累計20万部超の大ヒットを記録した
原作を元にオール八丈島ロケで撮影された本作。
反抗期で口をきかない高校生の娘に、
母は娘の嫌がるキャラ弁をつくり応戦。
3年間続いた「嫌がらせ弁当」はいつしか、
母から娘へ向けたメッセージへと変わっていく。
母娘を優しく見守る島の人々や島の空気感も心地よい作品。
©️2019「今日も嫌がらせ弁当」製作委員会
配給:ショウゲート 監督・脚本:塚本連平 出演:篠原涼子ほか
12月18日 Blu-ray&DVD発売 発売・販売元:ポニーキャニオン
胸苦しいほどの怒りと悲しみを描く
『悪人』
島で祖父母と暮らしながら解体業に従事する祐一と、
退屈な地方暮らしを送る光代。
あるはずみから保険会社のOLを殺害してしまった祐一は、
出会い系サイトで知り合った光代を車に乗せ、あてのない旅へ。
道中、互いの孤独を埋め合うように惹かれ合った二人が
最後にたどりついたのは、広大な海を見渡す五島の灯台。
そこから先はどこにも行くことができないのか。
主人公のふたりが紡ぐ言葉が心に響く。
「『悪人』スタンダード・エディション」
配給:東宝 監督:李 相日 原作:吉田修一
DVD/3,800円+税 発売元:アミューズソフト 販売元:東宝
佐渡を舞台にシェイクスピアと世阿弥が融合する
『テンペスト SADO TEMPEST』
ロックバンドがライブ中に連れ去られる。
存在を抹消された絶海の島で鎖につながれ、
仲間たちが次々と世を去る中、ボーカルのジュントクは
島で出会った鬼に導かれるように新しい音楽を紡ぎ始める。
シェークスピアの戯曲と世阿弥の謡「山姥」を重ね合わせ、
流人の歴史を持つ島を舞台に再構築したダーク・ファンタジー。
荒涼とした海岸や鬱蒼とした原始林の陰影が恐ろしくも美しい。
©️2012「佐渡テンペスト」製作委員会
配給:百米映画社 監督:ジョン・ウィリアムズ
DVD販売:オンリーハーツ/3,900円+税
沖縄の島にもたらされたパインの歴史
『はるかなるオンライ山~八重山・沖縄パイン渡来記~』
「オンライ山」とはパインの山を指す台湾の言葉。
八重山で豊年祭の供物にも使われるパインや観光客向けの牛車を引く水牛を最初に島へもたらしたのは、台湾からの入植者だった。石垣島を舞台に、台湾人と地元住民が文化の衝突や太平洋戦争中の苦難を乗り越え、戦後のパイン缶全盛期を実現する姿を描く。隣島・台湾と八重山の深い絆が感じられる。
©2015シネマ沖縄
監督:本郷義明 原案:三木健 撮影:與那 良則、本郷 義明
DVD/3,800円+税 販売元:シネマ沖縄