つくろう、島の未来

2024年04月27日 土曜日

つくろう、島の未来

島にまつわる音楽や映画、本を紹介する島Books。リトケイの公式設置ポイントより東京は浅草橋の書店「書肆(しょし)スーベニア」の酒井隆さんが選ぶ5冊を紹介します。

※この記事は『季刊ritokei』44号(2023年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

生まれついて、流れついて、ここで暮らし、商う

『離島の本屋22の島で「本屋」の灯りをともす人たち』
朴順梨・著

北は礼文島(れぶんとう|北海道)から南は与那国島(よなぐにじま|沖縄県)まで、日本全国の離島にある本屋を巡ったルポルタージュ。
著者の丁寧な視点が経営者の「日常性」をよく表し、小さなビジネスは決してドラマチックなものではなく、置かれた環境や時の運に押し流されたり、受け流したりしながら毎日を過ごすことであると教えられます。本書を気に入ったら、続編もありますので、ぜひそちらも手に取ってみてください。
(ころから/税込1,760円)

手足を伸ばして、言葉にして、手に入れるもの

『誰もいない場所を探している』
庄野雄治・著 大塚いちお・イラスト

徳島市内でコーヒー豆専門店・アアルトコーヒーを経営する庄野雄治さんが、飲食業の経験もなく、お金も人脈もない状況で焙煎士を志し、なんとか事業が軌道に乗るまでが綴られています。
無いものは無いなりに身近にあるものを活かしながら、自分がやるべきと思ったことを積み重ねていく姿は、これから自分で何かを始めようとしている人の背中を押してくれるはずです。
(mille books/税込990円)

私たちが価値を生み出せる社会を

『手づくりのアジール「土着の知」が生まれるところ』
青木真兵・著

人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」を運営する在野研究者・青木真兵さんによるエッセイ&対談集。市場原理主義に基づいた社会に私たちは何を差し出し、代わりに何を得ているのか。
既存の公的な価値観だけで仕事を選ぶべきではない。自らの内側から湧き出る声に耳を傾け、それらを実行するための「アジール(避難所)」が社会にあることで、新しい価値が生まれるのだと思います。
(晶文社/税込1,980円)

自分の心が健やかにありつづける商い

『山の上のパン屋に人が集まるわけ』
平田はる香・著

ひとりで始めた移動販売から、年商3億円の企業へと成長したパン屋・わざわざ。本書はそんな成功のノウハウを伝えるものではなく、経営経験を通した著者の心の変遷を書いています。
どのように働き、どんな価値を提供したいのか。誰をお客さんにし、受け手にどうなって欲しいのか。小さな商売はそれらを愚直に考え発信していくことが、これからもっと必要になるでしょう。
(ライツ社/税込1,760円)

アジールの発信と連係から生まれる「つくる喜び」

『つくる人になるために若き建築家と思想家の往復書簡』
光嶋裕介、青木真兵、青木海青子・著

本書では、『手づくりのアジール』をきっかけとした思想を、より深く丁寧に考察していきます。私たちがつくり出す価値はまったくのオリジナルである必要はありません。自らが大切だと思うことを発信し続けることが大切です。
いつかその声が誰かに届き、他者と協働して「つくる」ことに一人ひとりが喜びを見出せる。そんな社会を作れたら良いですね。
(灯光舎/税込2,420円)


紹介者

酒井隆(さかい・たかし)さん
古本屋店主。2017年に古本と新刊書肆スーベニアを開業し、現在は台東区浅草橋で営業。最近の趣味は朝のラジオ体操とスキンケア。長年の趣味は園芸。お気に入りの植物は、開業時から育てているフィカス・アルテシマ。


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