海に囲まれた島国日本の食生活を彩る、海の幸。私たちが口にする魚介類の背景や楽しみ方など知ることで海の幸がもっとおいしくなる6冊をご紹介。
(文・石原みどり)
※この記事は『季刊ritokei』35号(2020年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
魚食の楽しさあふれる手づくり図鑑
『さかな博士のレアうま魚図鑑』
難関の「日本さかな検定」1級に史上最年少で合格したお魚大好き小学生による、手づくりの魚図鑑。著者がこれまで食べてきた約400種類の魚の中から、店頭に並ぶことの少ない「レアうま魚」197種を選び、活き活きとしたカラーイラストと手書き文で紹介。レアうま魚の入手法やさばき方、調理法も掲載され、めいっぱい魚を楽しむ心意気に満ちたこの本は、魚食に親しむためのガイドブックとしても楽しめる。(日東書院本社/税込1,650円)
多彩な昆布の魅力を伝える写真絵本
『和食のだしは海のめぐみ①『昆布』』
北の海で育つ海藻としての昆布と生き物の関わりや、江戸期の北前船による流通の歴史、縁起物としての文化、だしの取り方や調理法など多彩な昆布の魅力を、水中カメラマンによる迫力ある写真と文で紹介。利尻島(りしりとう|北海道)をはじめとする北海道の昆布産地で撮影された、昆布漁や海岸での昆布干し風景、加工までの過程は、海の幸が人の手が関わることで食材となる「人の幸」であることも教えてくれる。(偕成社/税込2,640円)
豊かな海を育む森を想う
『人の心に木を植える「森は海の恋人」30年』
著者は「森は海の恋人」を合言葉に、木を植えカキの養殖を続けてきた気仙沼の漁師。東日本大震災で被災し、一度は壊滅した養殖場に、被災者を励ますようにホタテやカキが姿を現した。漁師は、こつこつと植えてきた木が森に育ち、きれいな川を通じて海に栄養が届いたことを喜ぶ。読み終えたとき、あなたの心にも灯火のように「木が植えられている」ことを感じるだろう。(講談社/税込1,430円)
魚食を支えるプロフェッショナルの仕事を知る
『魚と日本人 食と職の経済学』
漁師、卸、仲買人、鮮魚店、板前など多種多様な職人たちが活躍する日本の魚食文化。全国の漁港や市場を歩き研究してきた著者は、人が人を頼り、敬意を払い大切にする関係のなかで、自然からの恵みをうまく回し活用する連鎖が日本の魚食文化を支えてきたのだと説く。消費者として食と職の経済を知ることは、その文化を支える一助となるはずだ。(岩波書店/税込902円)
捕まえて食べてみた!驚きの体験記
『捕まえて、食べる』
身近な自然の中で狩猟を楽しむ著者が、富山湾のホタルイカや多摩川の野草など、さまざまな動植物を捕まえ採取して食べた体験記。新潟の粟島(あわしま)では「磯ダコ捕りツアー」に参加し、粟島流のタコ捕りの道具や技法も紹介。味が濃いという粟島のタコを捕まえに島を訪ねたくなる。巻末には「捕まえて食べられるリスト」も掲載。童心にかえって、海や野に出てみたくなる一冊。(新潮社/税込1,430円)
全国の漁港を訪ね地魚料理を食べる旅
『日本全国地魚定食紀行』
お魚好きのイラストレーターである著者が、日本全国18カ所の漁港で食べた地魚料理を紹介。北は礼文島(れぶんとう|北海道)のウニ丼にはじまり、佐渡島(さどがしま|新潟県)のアワビ磯焼き、地元では「ヘカ」と呼ばれる隠岐諸島(おきしょとう|島根県)の漁師料理、淡路島(あわじしま|兵庫県)のアナゴの棒寿司や小豆島(しょうどしま|香川県)のひしお丼、南はサンゴ礁に囲まれた宮古島(みやこじま|沖縄県)の煮モズクや波照間島(はてるまじま|沖縄県)のカツオのハラゴの塩焼きなど島々の海の幸も登場し、旅心を誘う。(徳間書店/税込1,650円)