つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

  • 佐渡市伝統料理レシピ集
    『さどごはん』
    1,800円(税込)
    問い合わせ先:
    佐渡市役所 農業政策課
    販売流通係/0259-63-5117

後世に伝えたい味と想い 6年かけてまとめたとっておきのレシピ集

佐渡の風土が生み、佐渡の人情が育てた島の味覚、昔ながらの郷土の味を後世に伝えたい──。佐渡市が出版した、島の郷土料理を一冊にまとめあげた伝統料理レシピ集『さどごはん』が話題となっている。

沖合で暖流と寒流がぶつかり合う佐渡は、多様な水産物が獲れ、北限と南限の植物が混生することから、山海の幸に恵まれる“食材の宝庫”としても名高い島。
その豊かな自然環境から「自給自足可能な島」と言われてきたが、実際は米以外の農産物は、その多くを島外から輸入している“輸入地域”でもある。あまり知られていないが、農家の減少や高齢化により、島内にあった野菜の生産地が姿を消し、島内産の農産物を安定供給する体制がなくなっていったのだ。島内でつくられる農産物が減り、住民が島外産の農産物を手にすることが増えると、島は負のスパイラルに陥ってしまう。

そこで佐渡市は、2009年全国に先がけて「佐渡市地産地消推進条例」を制定し、島内産の食材の消費拡大を図る取り組みを続けて来た。その一環として、2010年からは島内の各地区に約400名いるという「健康推進員」を訪ね、冠婚葬祭で出すおもてなし料理や、各家庭に伝わる“地のもの”をふんだんに使ったレシピを収集。料理の再現から編集までに6年の歳月をかけて、満を持して出版したのがレシピ集『さどごはん』である。

全210ページの中には、正月やお盆の定番料理である「煮しめ」や、夏場に採れるいご草という海藻を煮詰めてつくる「いごねり」など、昔から愛されてきた郷土の味188品が揃う。料理によっては、地区ごとに味付けや材料が異なるものもあり、それぞれの味を作り比べてみる楽しみもある。また本書にはレシピ以外にも、だし汁のとり方や野菜の切り方、箸の使い方まで収録されており、家庭における伝統料理の継承だけでなく、食育の推進に役立ててほしいという願いも込められている。

佐渡には古くから伝わる習わしや祭りが数多く残っているが、年々行事が簡素化され、郷土料理を語り継ぐ場も、体験する機会も少なくなってきている。しかし、未来を担う子どもたちには、島で採れる“旬の味”を知り、島の風土を体いっぱいに覚えてもらう必要がある。人々が忘れかけてしまった“身土不二(しんどふじ)”の心をもう一度思い出し、後世へと伝えていくことが島の文化と伝統を守ることに繋がっていく。

その土地の文化を照らす鏡となるという“食”を通じて、佐渡を元気にしたいという人々の郷土愛が詰まった一冊は、レシピ集の枠を超えて、佐渡文化を伝える貴重な資料として残っていくだろう。

(文・北坊あいり)

     

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