つくろう、島の未来

2024年12月07日 土曜日

つくろう、島の未来

島にまつわる音楽や映画、本を紹介する島Books。今回は、リトケイ編集部がキャッチした気になる新書や島の魅力や価値をより深く学べる一冊を紹介します。

※この記事は『季刊ritokei』45号(2023年4月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

半径 20メートルの日常で繰り広げられる実践を描く民族誌

『海と路地 のリズム、女たち ―モザンビーク島の切れては繋がる近所づきあい』
松井梓・著

アフリカ南東部のモザンビーク島に通う 研究者が綴った本作は、著者曰く、半径 20メートルの日常で繰り広げられる実践を描く民族誌。

小さな島で暮らす女性たちは、ご近所同士で 食べものをやりとりしながらゴシップ話に花を咲かせる。 

そこまでは日本の島でもよく聞く話だが、 特異に映るのは、時にその関係をバッサリ断ち切る流動性。その異質な空気感と島への親しみに魅了される。(春風社/税込 5,500円)

味なたてもの探訪

『離島建築 島の文化を伝える建物と暮らし』
箭内博行・著

日本各地に同じような風景が増えた気がする今、島々にはまだまだ個性豊かな建物群がある。世界で新島だけにしかないコーガ石でできた建物に、小さな島に残るかわいらしい木造校舎に、島特有の文化や自然が反映される石垣や塀など。

国内350島の島々をめぐり、伝統文化や風景を活写してきた写真家の著者が切り取る離島建築には、その背景にある人々の生活の礎も写しだされている。(トゥーヴァージンズ/税込 2,200円)

国内シリーズ初の「 島 」特化版

『地球の歩き方 東京の島々 永久保存版』
地球の歩き方編集室・編集

多くのトラベラーに支持される歴史あるシリーズが東京の有人離島11島を完全ガイド。

都内からほど近い伊豆大島から、片道27時間以上かかる小笠原諸島・母島まで、知る人ぞ知る東京離島には、ダイナミックな自然があり、固有の文化があり、味わい深いグルメがあり。

旅立つ前から島気分を味わえる「竹芝桟橋徹底紹介」や「習慣とマナー」は、旅立つ前に一読しておきたい。 (地球の歩き方/税込 2,640円)

その存在はまさに秘境の守護神

『奄美でハブを40年研究してきました。』
 服部正策・著

奄美や沖縄地方に生息する毒ヘビ「ハブ」。世界自然遺産にも登録される雄大な自然は、「森の守護神」であるハブがいてこそ守られてきた。

東大の研究所から奄美病害動物研究施設に配属され、40年にわたって何千匹ものハブと向き合い、研究を続けてきた研究者のエッセイには、ハブと島への尊敬と愛情がたっぷりと描かれる。

ハブが暮らす島を訪れる時の副読本にもおすすめ。(新潮社/税込1,760円)

島の基本情報が一冊に

新版『島々の日本』
日本離島センター・編

昭和41年に設立した歴史ある団体、「日本離島センター」が刊行した『島々の日本』は、島の数、法律制度、自然・歴史・文化などの基本を網羅。

これだけは知っておきたい情報がまとまり、巻末の「島と海の地図」は時を忘れてながめてしまう。驚くべきはこれだけの情報が「無償配布」であること。

無くなり次第配布終了となるため、気になる人は日本離島センターのホームページでお申し込みを。 (日本離島センター/無償配布 ※1人1冊限定)

子が学ぶだけではない佐渡島の「村を育てる学びの共同体」

『村に立つ教育 ―佐渡の僻村が挑んだ 「村を育てる学びの共同体」の創造』
知本康悟・著

教育を軸にした地域づくりが全国で広がっている。そこで島を見渡すと、佐渡島に豊かな事例がみつかる。1930年代から敗戦をはさんだ1950 年代にかけて佐渡島の旧羽茂村では村をあげて学校がつくられた。

若い教師を人材育成のために本土の学校へ送り出す内地留学制度や、母親が教養を高める母親学級など、子が学ぶだけではない「村を育てる学びの共同体」には、どの時代にも通ずる、学びと地域づくりの根幹がある。(本の泉社/税込2,200円)

     

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