つくろう、島の未来

2025年06月02日 月曜日

つくろう、島の未来

島の世界に一歩深く足をふみいれると見えてくる、 強くて、 うつくしい人々の姿は、写真集・小説・ドキュメンタリーなど、 多様な作品に描かれる。リトケイ編集部がおすすめする、強くて、 うつくしい島を知る一冊。

※この記事は『季刊ritokei』48号(2025年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

島の祭りを追いかけて『百島百祭』

『百島百祭』黒岩正和・著

ウェブ版『ritokei』で連載を重ねた「百島百祭」が写真集になりました。著者の黒岩正和氏は、20年以上をかけて硫黄島を除く全有人離島を訪れ、400以上の祭りを撮影。その中から厳選された77の祭りにはどれも、島の魂が映される。

瀬戸内海の島々の里海特有の盆行事や水軍由来の祭事、異国文化を感じる南西諸島の祭りなど、自然とともに生きる島の豊かな多様性を感じ取る一冊。(光村推古書院/税込4,950円)

マフィアの島がおこした軌跡『シチリアの奇跡』

イタリア南部のシチリア島で巻き起こった命懸けの地域おこしを、 『スローフードな人生!』 の著者が10年以上の現地取材を経て著した一冊。

映画『ゴッドファーザー』でも描かれた“マフィアの島”が、オーガニックやエシカル消費の最先端地域に変貌を遂げるまでの背景には、みかじめ料の不払い運動に、反マフィア観光ツアーなど命懸けの戦いがあった。 その物語に胸が熱くなる。(新潮社/税込902円)

直木賞作品に描かれる見島『藍を継ぐ海』

『藍を継ぐ海』伊与原新・著

今年1月、直木賞に選ばれた作品。ウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子や、老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性など、人間たちの人生に、科学的な読み解きを重ねた5つの短編小説。

そのひとつに描かれるのは、山口の見島で萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男。その姿とは?(新潮社/税込 1,760円)

『地方創生に駆けた男 天草架橋・離島振興に命を賭した森國久』

『地方創生に駆けた男 天草架橋・離島振興に命を賭した森國久』
編著・森純子、段下文男

5つの橋で本土とつながる天草諸島。その歴史的変遷に貢献し、48歳でこの世を去った若きリーダーの姿を記した貴重な一冊。

天草諸島・樋島で生まれ育った森國久は、新聞記者や警察官、 兵役を経て38歳で村長に。1953年に制定された「離島振興法」にも関わり、草の根民主主義を貫き地方創生に命をかけた姿に学びたい。(熊本出版文化会館/税込2,090円)

『元気な漁村海を守り、にぎやかに暮らす』

『元気な漁村海を守り、にぎやかに暮らす』著・水口憲哉

海洋国家・日本には多様な漁村がある。著者が追いかける「元気な漁村」とその理由を探っていくと、時の移り変わりによって変化する漁村の中にある「昔からあるもの」と「変わらないもの」として相互扶助が見えてくる。

小笠原諸島の父島母島に、山口の浮島角島祝島、東京の利島御蔵島神津島に、沖縄の渡嘉敷島など江戸時代から変わらない漁村の姿に注目したい。(フライの雑誌社/税込2,200円)

『ニッポンはおいしい! 食と農から未来は変わる。地域に豊かさをもたらす女性たちの活躍』

『ニッポンはおいしい! 食と農から未来は変わる。地域に豊かさをもたらす女性たちの活躍』著・金丸弘美

食環境ジャーナリストとして活躍する金丸弘美が追いかける日本全国の「おいしい」から「観光・経済・地域振興」までをまとめた一冊。

日本全国のパワフルな事例のなか、食と農と体験を離島や農村の観光に繋ぐ例として、山口・周防大島(屋代島)の瀬戸内ジャムズガーデンが登場。「海の見える風景と180種類のジャム」が地域にもたらした豊かさとは?(理工図書株式会社/税込2,090円)





     

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