つくろう、島の未来

2024年10月13日 日曜日

つくろう、島の未来

2016年8月、島旅作家・斎藤潤(さいとう・じゅん)さんの新著『ニッポン島遺産』(実業之日本社)が発売された。北海道から沖縄まで40の島が登場する「島遺産」とは。著者の斎藤さんと、担当編集者に話を聞いた。(画像提供:実業之日本社)

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黒島プーリィの旗頭

日本各地の有人島をほぼすべて踏破している斎藤潤さんの新著『ニッポン島遺産』(実業之日本社)が、2016年8月に発売された。

著者の斎藤潤さんは、「ある島の見どころをいくつか挙げて紹介する方法もありますが、今回は一つの文化や事象にこだわり、それを窓口にして島の知られざる魅力的な表情を描いたつもりです。多様な顔を持つ島のほんの一部分ですが、これをキッカケにより広く深い島世界へ踏み入れてもらえれば、それほど喜ばしいことはありません。今回は、特に思い入れの強い島を中心にセレクトしましたが、まだまだ他にも、エッ? と思うような島遺産がたくさんあります。続編が出せるよう、どうぞ皆さんの声援をよろしくお願いします」と語る。

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新居大島のとうど送り

本著では、「島遺産」としてトカラ列島・悪石島(あくせきじま|鹿児島県十島村)の仮面神「ボゼ」など祭祀文化をはじめ、礼文島(れぶんとう|北海道礼文町)や屋久島(やくしま|鹿児島県屋久島町)などの大自然、横浦島(よこうらじま|熊本県天草市)の漁具「籠船」や、朴島(ほおじま|宮城県塩竈市)の菜の花畑のように島々の暮らしを感じさせる風景など、40島の多彩な魅力が紹介される。

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横浦島(熊本県天草市)の籠船/朴島(宮城県塩竈市)の菜の花畑

西表島(いりおもてじま|沖縄県竹富町)の「西表島の森に響く音」のような謎めいた遺産もあり、読み解いていくのがおもしろい。太平洋戦争で激戦地となった硫黄島(いおうとう|東京都小笠原村)、瀬戸内海にある四阪島(しさかじま|愛媛県今治市)など、一般には上陸できない島を訪ねた貴重な体験記も収められている。

同書の編集担当者は、刊行のきっかけを「離島は、古き時代の日本を色濃く残す、ある意味 “日本の縮図”ではないかと思っています。ただ、日本国内でありながらも、まだまだ知られていないことが多いですよね。島へ行き尽くされている斎藤さんであれば、各地の島で密かに息づく自然や文化のすばらしさ、そして島と人との関わりや歴史の変遷をご存じですので、そのことを広く知っていただければと思い、執筆をお願いしました」と話す。

将来も受け継がれてほしい個性的な「島遺産」の数々に触れる事ができる本書。島々の集まりである日本の自然や文化の多様性、時代とともに移ろいゆく島々の暮らしの変遷なども感じ取る事ができる一冊になっている。


【関連サイト】

実業之日本社『ニッポン島遺産』紹介ページ

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