島で暮らす人、島が好きな人、豊かな生き方を求める人へおすすめしたい本や映画を紹介する 「島Books & Culture」。今回は『ritokei』編集員の石原みどりが選書した5冊を紹介します。
島に集う家族のひととき『港たち』
『港たち』著・古川真人
小説の舞台は、長崎県のとある島。芥川賞受賞作『背高泡立草』にも登場した、島にルーツを持つ一家が盆行事のため再び島に集う。
島に暮らす祖母と関東で暮らす孫息子の意識が交差し、とりとめもない家族の会話から溢れ出す言葉の海に、心地よく、沈むように、溶け合っていく。
島と外界を隔てたコロナ禍を振り返り、心にそっと染み入る薬草のような短編集。(集英社/税込1,980円)
米国人が記録した島の造船技術『佐渡のたらい舟 —職人の技法—』
『佐渡のたらい舟 —職人の技法—』
著・ダグラス・ブルックス 訳・ウエルズ智恵子
岩礁地域の沿岸での漁に適した「たらい舟」。木桶や樽の製造と関わりが深く、かつては各地にあったが現在は佐渡島南部の小木で観光や漁に使われるのみ。
貴重なこの船を未来に受け継ごうと佐渡島に渡り、たらい舟職人に弟子入りし製造技術を記録したその人は、アメリカの船大工ダグラス・ブルックスさん。
太平洋を越えるほどの情熱が残した記録から、新たな担い手も生まれていることを讃えたい。(鼓童文化財団/税込2,200円)
芸術祭を支える人々の想い『こえび隊、跳ねる!瀬戸内国際芸術祭外伝』
『こえび隊、跳ねる!瀬戸内国際芸術祭外伝』
監修・北川フラム 編著・こえび隊
銅製錬所による公害、排水による赤潮、海砂利の大量採取、産業廃棄物の不法投棄など、かつて、さまざまな苦しみを抱えていた瀬戸内の島々。
2010年に「海の復権」を掲げ始まった芸術祭の活動は、作品制作や展示会場となる空き家の掃除のみならず、会期以外にも草刈りや行事への参加などを通し、島内外の人々の交流の中で受け継がれてきた。
それはまさに、人間らしく生きるアートの実践といえる。(現代企画室/税込2,750円)
キリスト教が根づく奄美のシマジマ『ゆるしの奄美 —福音を生きる—』
『ゆるしの奄美 —福音を生きる—』著・諏訪勝郎
教会の多い島といえば五島列島が知られるが、実は奄美大島も30近くの教会がある福音の島である。
明治期、薩摩藩からの自立を目指す精神的支えとなり、昭和に迫害・戦争・差別の三重苦を負いながらも奄美に根づく、信仰の歩みを丹念に記す。
女子教育、島にミシンを導入した職業訓練、ハンセン病療養所への出産保育環境の整備など、キリスト者たちの残した遺産は、今も島に生きている。(南方新社/税込2,200円)
島々が連なる「島国ニッポン」を知る『地図で読み解く日本の島』
『地図で読み解く日本の島』監修・長嶋俊介
監修者の独自集計(※)によると、1万5,528もの島が連なる日本列島の多彩な姿を、地図を使いわかりやすくビジュアライズ。
※国土地理院の地図情報から河口部・汽水域などの島を除いた海鳥データベースより長嶋俊介氏が独自にカウントした島の数
地形、交通、歴史、産業・文化に分類された島に関する55のトピックの中には、知る人ぞ知るマニアックな話題もあり、島好きさんの知的好奇心をくすぐる情報が満載。ページをめくるうち、島旅に出たくなってくる。(カンゼン/税込1,980円)
紹介者
石原みどり(いしはら・みどり)
常時数冊を併読する、活字中毒の本読み。本の町・神保町で会社勤めの傍ら『ritokei』編集員や「島酒の語り部」として執筆やイベント企画など、島をライフワークとして活動中。奄美大島酒造「推し蔵アンバサダー」。著書に『あまみの甘み奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)
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東京在住、2014年より『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。鹿児島県酒造組合 奄美支部が認定する「奄美黒糖焼酎語り部」第7号。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。ここ数年、徳之島で出会った巨石の線刻画と沖縄・奄美にかつてあった刺青「ハジチ」の文化が気になっている。