つくろう、島の未来

2022年09月27日 火曜日

つくろう、島の未来

【奄美大島イベントレポート】奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)内で余興芸のナンバー1を決める「Y-1グランプリ」。結婚式で披露する余興のために日々、芸を磨くシマッチュ(=島人)たちによる芸の数々に会場が笑いと感動に包まれた新春イベントを、鹿児島在住ライターさわだ悠伊がレポートします。

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余興と笑いの群島!奄美「Y-1グランプリ」開催

1月27日、鹿児島県奄美大島で
「余興芸」のナンバーワン決定戦『Y-1グランプリ』が開催されました。

今回で3回目を迎えるこの大会。
今大会からは奄美大島だけでなく、
徳之島、沖永良部島、与論島など奄美群島の人々も参加して
大いに盛り上がりました。

会場は奄美大島の中心地・名瀬にある奄美観光ホテル・孔雀の間。
開演の1時間以上前から多くの観客が行列を作っていることからも
島民たちのこの大会への関心の高さが伺えます。

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開場時間になると次々と席が埋まり、
あっという間に満員御礼。
立ち見を含め650人以上のシマッチュたちが集まりました。

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,p>観客たちはブースで買った
ドリンクや軽食を片手に開演時間を待ちます。

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そしていよいよ開演。
13組の出演者がそれぞれの芸を競います。
コント、寸劇、戦隊もの、ダンス、落語、島口ネタなど
各々のスタイルで会場を湧かします。

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ジャンルは様々ですが、
共通していたのはどの余興にも「笑い」があり、
綿密に案を練り、練習を重ねたものであること。

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会場を見渡すと、どのシマッチュたちも笑顔。
子どもも若者もお年寄りもみんな笑っています。
奄美のシマッチュたちは、楽しみや喜びをみんなでシェアすることを
何よりも大切にしているのです。

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会場で目にしたシマッチュたちの笑顔は
そんな奄美の気質を表しているようでした。

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そしてすべてのパフォーマンスが終わり、
結果発表の時間がやって来ました。

優勝賞金は10万円。
順位は観客の投票で決まります。

見事優勝に輝いたのは、
同級生3人で結成した名瀬の『いちごみるく』でした。

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彼らは稲川淳二さんのモノマネを交えながら
実にシュールな笑いを散りばめたコントを展開し、
会場に笑いの渦を生み出していました。

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一般的に余興というと
アイドルグループの曲や振り付けをコピーするだけとか
即興に近い芸をするというパターンが多いですが、
そういった場当たり的なものではなく
微に入り細に入り笑いのエッセンスを加えて脚本をつくり
きちんと練習していることがわかります。

これは大会だからなのではなく、
実際の結婚式においてもそうなのだそう。

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また、『Y-1グランプリ』は、出演者の芸だけではなく
演出や大会運営にも積極的に『笑い』を取り入れています。

たとえばそれは映画『酔拳』を模したポスターだったり
開演前に流れた手づくりのスポンサーCMだったり
奄美出身のアーティスト・元ちとせさんが
さり気なく演出に協力していることだったりするのですが
細部までとても手が込んでいて、私は感動すら覚えました。

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でも、ここに辿り着くまでには様々なドラマがあったよう。
そもそもこの大会を主催しているのは
名瀬の『マイライフスタジオ』という
ブライダル会社のカメラマン・安田祐樹さんです。

仕事柄、奄美でたくさんの結婚式を間近で見てきた安田さんは
奄美の余興芸の面白さを実感し、
多くの人にこれを伝える方法として、『Y-1グランプリ』を思いつきました。

そして会社の同僚とともに
ライブハウス・ASIVIのオーナー兼奄美のコミュニティFM
『ディ!ウェイヴ』代表の麓憲吾さんに協力を仰ぎ、
3年前にASIVIで第1回『Y-1グランプリ』を開催。
当時集まった観客は120名ほどだったそうです。

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それが評判を呼び、
今では内地のメディアも取材にやってくるほどの注目ぶりです。

また、Ustreamでも中継していたため、
群島のシマッチュたちからも出演要望が出るようになり
今年からは群島を挙げての一大イベントとなりました。

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元々、奄美大島の結婚式はとても盛大。
ゲストは300名以上というのも当たり前なので
結婚式は会費制がほとんどだそう。
そして、式の運営は同級生や同僚などからなる実行委員が担当するのです。

人と集い、楽しむことが好きなシマッチュにとって
余興は式の中で最も大切な要素。
余興が第3幕まで続くことも珍しくありません。

幼い頃から集落の集まりなどで
劇や歌などの芸を披露する機会が多いこともあり、
シマッチュたちは人を楽しませる術を知っているのでしょう。

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奄美群島「本土復帰60周年」を迎える節目の年に
余興という1つの目的で集まった群島のシマッチュたち。
大会の盛況ぶりを目の当たりにして
「余興は奄美の文化」と語る安田さんの言葉に
確かなリアリティーを感じました。

なぜなら彼らは『笑い』を自給自足することができるのだから。
情報に対して受け身になりがちな私にとって
シマッチュたちのクリエイティビティーは眩しく映りました。

そして最後にもう一つ。
大会後にASIVIで行われた関係者の打ち上げで
私たちは「与論献奉(よろんけんぽう)」に参加させてもらいました。

「与論献奉」とは与論島に伝わる客人をもてなす儀式で
親となる人が注いだ焼酎を口上を述べてから飲み干すというもの。

この「与論献奉」を通じて
シマッチュたちの温かさに触れた気がして
目の奥が熱くなりました。

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訪れるたびにこの島が好きになるのは、
こんなにも温かいシマッチュたちのおかげなのかもしれません。

– END –
奄美大島「Y-1グランプリ2013」
写真・石神和哉

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