プロ野球投手を現役引退後、野球解説者やスポーツ評論家として活動するとともに、全国の島々で少年野球教室を開催するなど、各地で少年野球の指導に取り組む、村田兆治さん。2007年から各地の島を舞台に開催する国土交通杯 全国離島交流中学生野球大会(通称「離島甲子園」)の提唱者でもある。
この夏第11回を迎える「離島甲子園」や、島々の子どもたちへ向ける思いを聞いた。
(インタビュー前編はこちら)
※『季刊ritokei』24号(2018年5月発行号)掲載記事です
※文末に読者プレゼント募集があります
聞き手・石原みどり 写真・石津祐介
—「離島甲子園」第10回の記念大会となった昨年は、全国の23自治体から最多の24チームが参加と、年々参加数が増えていますね。
「離島甲子園」は、島の子どもたちが参加しやすいよう、中学校の単独チームに限定せず、複数校の合同チームやクラブチームを中心とした選抜チームなどでも参加可能としています。
また、初戦で敗退して、やることがない……とならないよう、トーナメント戦のほかにも、敗退チーム同士での交流試合や、プロ野球OBによる野球教室、日本プロ野球選手会による「キャッチボールクラシック」(※)大会なども実施しています。
※キャッチボールクラシック……日本プロ野球選手会が考案したキャッチボールの正確さとスピードを競うゲーム。9人1組のチームが2分間で何回キャッチボールができたかを競う。
—大会を続ける上で、大変だと思うことはありますか。
毎年苦労しているのが、開催費用の捻出です。参加する球児たちの旅費などを補助するため、国交省や内閣府などの行政団体、離島地域の自治体などに後援を呼びかけたり、企業などの協賛や寄付を募るため、球児たちに作文を書いてもらい、それを手にスポンサー回りをしています。
—島々での活動を通じて目指すものは。
「離島甲子園」は、大会に向けた練習や、当日の試合、他地域との交流などの体験を通じて、島の子どもたちが人生を生き抜く力を養う場。子どもたちに、野球を通して判断力や実行力を養い、礼儀や思いやりを備えた人間になってほしいと願っています。
ハンデのある離島地域同士、言い訳の効かない場で思い切り勝負することで感動と絆が生まれます。精一杯戦って試合に負けたとしても、「最後まで諦めない心」は選手1人ひとりに残る。そんな先輩の姿を目にすることで下の世代も勇気付けられ、頑張るようになるんです。本気でやり切った経験は、彼らが成長した時に必ず役に立つと信じています。
また、「離島甲子園」では、子どもたちが野球を通じて島同士の交流を図ることも大きな目的の一つです。
最終日の試合後は「さよならパーティ」と称して、バーベキューを囲むなど参加チームの交流の場を設けています。石垣島ではヤギ汁が出たり、三線の演奏が始まってオバアが踊りだしたりと、島ならではのもてなしも楽しみの一つです。
東京ドームなどに球児を集めて開催しようかという話も出たことがありますが、お互いの島を知ることで、より深い交流ができるのではないかと思い、島々を巡回する形で続けています。
長年島に関わってきましたが、最初の頃に出会った子たちが大人になり、島で再会することも増えてきました。
昔野球を教えた子が島の学校で先生として教えていたり、大工さんになって島で働いていたり。島に行くと子どもたちの成長を見るのが楽しみなんです。野球で養った力を活かして、頑張ってほしいと思っています。
—「離島甲子園」10年間を振り返り、思い出に残るエピソードはありますか。
思い出に浸っている場合ではない、前を向いて実践あるのみ!です。体調を崩して入院した時期もありましたが、「離島甲子園」だけは休まずに毎年続けてきました。自分の体が動くうちは、この活動を続けていくつもりです。
お話を聞いた人/
村田兆治(むらた・ちょうじ)
元プロ野球投手。1949年広島県豊田郡本郷町(現・三原市)生まれ。1967年ドラフト1位で東京オリオンズ(現・ロッテ)に入団、プロ入り4年目の1971年に「まさかり投法」を編み出し、1976年に最優秀防御率投手、奪三振王を獲得するなど注目を集めた。1982年に右肘の故障のため渡米手術。約3年間のリハビリを経て復帰し、17勝5敗でカムバック賞を受賞。1987年には無死球完封試合達成、史上13人目となった2000奪三振など記録を重ね、1990年現役引退。2005年野球殿堂入り。全国離島交流中学生野球大会(通称「離島甲子園」)提唱者。2017年東久邇宮国際文化褒賞受賞。
読者プレゼント/
村田兆治さん「サインボール」または「サイン色紙」
応募締め切り:2018年7月末日
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(★を@に変えてお送りください)
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イベント情報/
離島甲子園 第11回大会
2018年8月7日(火)〜11日(土)
開催地:鹿児島県種子島
会場:西之表市営グラウンド・中種子町中央運動公園野球場・南種子中学校野球場・南種子町健康公園野球場・種子島宇宙センター内野球場
【関連サイト】
離島甲子園
東京在住、2014年より『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。鹿児島県酒造組合 奄美支部が認定する「奄美黒糖焼酎語り部」第7号。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。ここ数年、徳之島で出会った巨石の線刻画と沖縄・奄美にかつてあった刺青「ハジチ」の文化が気になっている。