©️2019「僕に、会いたかった」製作委員会
隠岐諸島を舞台にした映画『僕に、会いたかった』が5月10日に公開を迎えた。記憶を失った島の漁師・池田徹(TAKAHIRO)と、そんな息子の葛藤に苦しむ母親の信子(松坂慶子)の元に、都会の子どもたちがやってくる。「島留学」の好事例として実在する海士町(中ノ島)の隠岐島前高校と隣島・西ノ島で撮影された映画で長編映画単独初主演を務めたTAKAHIROさんと、錦織良成監督に話を伺った。(インタビュー・鯨本あつこ)
錦織良成監督インタビュー|島留学の背景にあるものを描けたら。
映画『僕に、会いたかった』あらすじ
島で一二を争う凄腕の漁師だった池田徹(TAKAHIRO)は、漁をしている最中に嵐と遭遇して、目覚めた時には全ての記憶を失っていた。
事故後、徹は一切漁に出ることなく、失った記憶に怯えながら日々を生きていた。過去を振り返ることも、未来へ動き出すこともできないまま葛藤していたのだ。そんな息子の姿を見て、母親の信子(松坂慶子)も苦しい思いを抱えている。
一方、島のフェリー乗り場には木村めぐみ(山口まゆ)、福間雄一(板垣瑞生)、横山愛美(柴田杏花)、の高1の留学生が到着する。県立隠岐島前(どうぜん)高校では「島留学」と称し、都会から越境入学で生徒を受け入れているのだ。
「島留学」では、単身やってくる生徒に島で親代わりになってくれる世話役を島内から募集して、生徒ごとに「島親」としてあてがい、島で生徒たちが快活に生活できるようサポートしている。 池田家もこの取り組みに賛同し、雄一の「島親」になった。徹は漁協の休みに釣りに出かけ、距離を縮めていく。高校では生粋の島生まれの生徒と島留学できた都会育ちの生徒が悩みや葛藤をもちながらも、それぞれ将来への夢や希望に向かい、絆を深めていく――。
島の絶景と人々の温かさを見てほしい。TAKAHIROさんインタビュー
- ritokei
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撮影が行われた西ノ島の印象を教えてください。
写真・梅谷秀治 スタイリスト・渡辺康裕 ヘアメイク・下川真矢
- TAKAHIRO
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僕の地元(長崎)にも五島列島や壱岐、対馬など、たくさん島があって、幼少期とか学生時代に見ていた景色とすごく共通する部分があったので、どこかしら懐かしさを感じていました。
東京から飛行機に乗って、船も乗り換えて7時間くらい。グアムよりも遠いので海外に行っているような感覚だったんですが、行ってみるといい意味で東京とは全く違っていて。コンビニもないし、商店は7時半に閉まってしまう。
便利さで言うと不便かもしれないんですけど、東京でずっと過ごしていると感じられないことがあって、逆にその不便さを贅沢に感じる瞬間もありました。
何よりどこに行っても景色がきれいで、すごく居心地がよくて、島の皆さんも温かくて、映画の撮影にもかなり協力していただき、本当に島の皆さんや島の風景があってできた映画だと思います。
©️2019「僕に、会いたかった」製作委員会
- ritokei
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映画には釣りのシーンもありますが、実際に釣りがご趣味とも伺いました。
- TAKAHIRO
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僕の役は記憶喪失の漁師なんですが、船に乗れない役柄だったので、ただただ陸っぱりから釣りをしていたんです。記憶喪失でもそういう手に職をつけた人には体に染みついているものがあると感じていたので、空き時間とか空き日には常に釣りをしていました。
衣装のまま島を動き回って、無精ひげも生やした風貌なので気づかれることなく。こんな兄ちゃんいたっけな? という感じでした(笑)。
©️2019「僕に、会いたかった」製作委員会
- ritokei
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印象に残ったことはありますか?
- TAKAHIRO
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知らないおじさんと2時間近く釣りをしたことがありました。
- ritokei
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!!!
- TAKAHIRO
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ある時、釣りをしていたら島のおじさんがやって来て。ずっと同じ場所で釣りをしていたので話をすると、自分の家のまわりに住んでいる猫の餌をとるために釣りに来ていたんです。
釣りには趣味のイメージもあるんですが、みんなで釣りに出かけようということではなく、庭先の堤防に行って餌を釣り、猫にあげるという生活の一部で。
そのおじさんとは2時間近く釣りをしていたんですけど、奇しくもルアー釣りをしていた僕のほうが釣れたので、ぜんぶおじさんにあげたら「いいの?!」と(笑)。
- ritokei
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良いお話ですね。
- TAKAHIRO
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結構いい型が釣れたので、猫じゃなくておじさんが食べたかもしれません(笑)。
- ritokei
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釣りも楽しまれたんですね。
- TAKAHIRO
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そうですね。こういう経験は東京ではなかなかできないので、役にも落とし込めてよかったです。
©️2019「僕に、会いたかった」製作委員会
- ritokei
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西ノ島では何が釣れたんですか?
- TAKAHIRO
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なんでも。仕掛けや狙う場所によって釣れる魚が変わるんですけど、アジとかすごく大きくて。30センチくらいあるアジやメバル、カサゴとか。いろんな魚が釣れて、それを旅館に持って帰ったらさばいてくれたんです。
釣った魚を刺身で食べられるという、本当に贅沢な生活をさせていただきました。
- ritokei
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美味しかったものは?
- TAKAHIRO
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アジの刺身は本当に絶品でしたね。
自分が釣ったアジをお腹いっぱいになるほど食べたことはなかったですし、スタッフもみんな美味しいと食べてくれました。
- ritokei
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西ノ島の風景が「懐かしい」とおっしゃっていましたが、長崎の島にも思い出がありますか?
- TAKAHIRO
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幼少期には家族と一緒によく宇久島に行っていました。佐世保の港から2時間半くらい。目を見張るような美しい景色があるのに人は少なくて、ビーチも貸切状態。魚を釣ったり獲ったりして、旅館に持って帰ってさばいてもらい、夕食で食べたり……。その記憶が自分にとって、とても良い思い出だったので、西ノ島の撮影でもそれを思い出していました。
- ritokei
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他の島にも行かれていたんですか?
- TAKAHIRO
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専門学生の時に壱岐にも行きました。友人たちとバイクを積んで唐津からフェリーで島に行って、ツーリングしながらウニ丼食べたり、猿岩を見たり。かなり楽しかったですね。
- ritokei
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ご出身の佐世保市にもたくさんの島がありますね。
- TAKAHIRO
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たくさんありますね。先日は黒島小中学校の校門門柱の銘板の文字を書かせていただきました。
黒島小中学校の門柱(提供・やまうちゆき)
- ritokei
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映画にも出てきますが、隠岐島前高校の離島留学では留学生を受け入れる「島親」という制度がありますが、この制度についてどのように感じましたか?
- TAKAHIRO
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僕も知らなかったんですが、それ(離島留学や島親)に関していろんな話を伺った時に、とても素敵なことだと感じました。
僕はもともと田舎暮らしだったので、まわりに森も海もあったんですが、都会で生まれ育つと、どうしてもそういう(自然な)経験ができる場所がないんですよね。自然に触れて学ぶことや、心が豊かになるような経験は、ああいう場所に行かなければできないので、とても賛成できました。
©️2019「僕に、会いたかった」製作委員会
- ritokei
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TAKAHIROさんは役のなかで島親にもなられますが、島親になってどのように感じられましたか?
- TAKAHIRO
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(島留学は)島の人たちが毎年楽しみにしてることなのかなと感じました。島では若い子たちもどんどん減っていると思いますが、そこに都会からの留学生が自然に関して無知の状態でやってくる。
島の子どもたちの感覚と、島留学してきた子どもたちの感覚が違うことで、島の子たちのためにもなるのかなと思いました。
- ritokei
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島の子どもたちとも会話されましたか?
- TAKAHIRO
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島の子たちにはエキストラで主演してもらっていたので少し話すこともあったんですが、本当に純粋で。自分も心が洗われるような感覚でした。
- ritokei
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撮影中に特に印象に残った絶景は?
- TAKAHIRO
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とにかく夕日がすばらしくきれいでした。「ローソク岩」を見に行ったんですが、こんなにロマンチックなところがあるとは、もっと早く知りたかったです。
- ritokei
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そんな美しい景色のなかで育つ子どもたちはうらやましいですね。
- TAKAHIRO
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ないものねだりですが、島にいるとコンビニに行きたいとか、買い物したいとか、流行り物を身に付けたいとか思うと思います。でも、東京にいてもないものねだりはあって、家のすぐそばで釣りができて、あんな絶景をいつでも見れると思うと、僕はうらやましいと思いました。
©️2019「僕に、会いたかった」製作委員会
- ritokei
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最後に、リトケイ読者へのメッセージをお願いします。
- TAKAHIRO
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1ヶ月近く島で過ごさせてもらって、島の景色や雰囲気に溶け込みながら撮影をさせていただき、島の方の温かさや、心豊かな子どもたちの雰囲気など、なかなか日頃経験できないことばかりを体験しながら映画を撮ることができました。
島の景色や人々の絆とか、温かな人間模様が描かれた映画なので、そういったところを見ていただけたらと思います。
錦織良成監督インタビュー|島留学の背景にあるものを描けたら。
『僕に、会いたかった』作品情報
EXILE TAKAHIROが長編映画単独初主演を務める隠岐諸島を舞台にしたヒューマンドラマ。記憶を失った男を島の人々の優しさが包み込む。家族の絆と再生を描いた感動作。母親役の松坂慶子をはじめ、山口まゆ、小市慢太郎などが共演。5月10日よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。
https://bokuai.jp/
配給:LDH PICTURES(2019/日本/カラー/5.1ch/シネマスコープ/96分)
監督:錦織良成
エグゼクティヴ・プロデューサー:EXILE HIRO
脚本:錦織良成、秋山真太郎