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インタビュー

【島Interview|訊く】もたいまさこさん「暮らすように訪れた島で」

与論島で撮影された映画『めがね』では、真っ白なビーチで不思議な体操を教える謎めいた人物を演じ、広島の4島で撮影された『モヒカン故郷に帰る』では、どこの田舎にもいるかもしれない熱血母ちゃんを演じている、女優のもたいまさこさん。どんなに個性的な役でも、その風景のなかにすっと溶け込む、自然な佇まいが魅力のもたいさんは、撮影で訪れる土地をどのように見て、どのように感じているのか。話を伺った。
※この記事は『季刊ritokei』17号(2016年5月発行号)掲載記事になります。

聞き手・鯨本あつこ 写真・コセリエ

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− もたいさんは渋谷のご出身とのこと。大都会から島へ行って驚かれたことはありますか。

島というと、20年くらい前に初めて沖縄に行った次の年に「今度は与論島に行ってみようか」と遊びに行ったのが最初でした。プロペラがついた小さな飛行機で行ったんですが、島もすごく小さくて。海外の島には行ったことがあったんですが、与論島も海外にいるような感じで、空気も風も全然違うんだなぁって思いました。

− 映画『めがね』は与論島に遊びに行ったことをきっかけに撮影されたとか。映画では与論島の真っ白なビーチが印象的でした。

それはもう、あんなにきれいな海を見たのは初めてで。海の美しさには本当に感動しましたね。

− 『めがね』では、登場人物が島で黄昏れるシーンも印象的ですが、実際はどうでしたか?

黄昏れていましたね(笑)。普通だったら、街中に出て遊んだり、飲みに行ったりするんでしょうけど。与論島では何もしないで、じっとしていましたね。

ビレッジ(※1)の目の前にある浜に行くのに、海の家も何もないから、ビーチパラソルをかついで、クーラーボックスを持って生協に行って、氷を買って、ビールを買って、お昼ごはんを買って。陽を追っかけながら、日がな一日遊んでいました。

※1 ビレッジ
ホテル与論島ビレッジ。『めがね』のロケ地になった宿泊施設

「何もしない」って、本当に贅沢で、それを初めて知ったのが与論島でした。いろんなものがなくても自分たちの工夫で楽しめるということを。

− 一方、『モヒカン故郷へ帰る』では、広島の4島(※2)で撮影をされています。瀬戸内海の島々の印象はいかがでしたか。

※2 広島の4島
上蒲刈島(かみかまがりじま)、下蒲刈島(しもかまがりじま)、大崎下島(おおさきしもじま)、豊島(とよしま)(いずれも広島県呉市)

広島の島には立派な橋が架かっていたので(※3)、毎日、泊まっている呉から30分以上かけて車で通っていたんです。3月から4月にかけて、まだ天候が定まっていない季節でしたから、霧がばあっと立ち込めていて。視界が真っ白でどこに行くのか分からないところを、次から次に橋を渡って行って、着く頃には晴れたりして。とても幻想的なところに来ているんだなぁと思っていました。

※3 立派な橋
安芸(あき)灘に浮かぶ7つの島は「安芸灘大橋」など7つの橋で結ばれ、安芸灘とびしま海道と呼ばれている

− 与論島とは全然違いますね。

違います違います。広島の島には、段々畑があってね、獲れる魚は見たことがある魚ばっかりでした(笑)。与論島は「(獲れる魚が)なんでこんなに青いの?!」っいう鮮やかな南の島特有の色彩の魚もいましたね(笑)。

− 『モヒカン故郷に帰る』では、島の方々が島の住民役を演じていますが、みなさんの演技はいかがでしたか。

すっごく上手でした。宴会や結婚式のシーンなどで、4つの島からみなさんが集まってくれて。みなさんすごく明るい素敵な雰囲気を出していて、映画自体にもそういう明るさがありますが、その土地にある気候風土って人にも出るのでしょうね。

− 瀬戸内海は温暖ですからね。

橋が架かっているから、島に来ているというよりは、日本の田舎の風景の中におじゃまさせていただいている感覚でしたが、圧倒的な自然がすぐ側にあって、どの家にもみかんの木がある。それで、そのみかんをみんなが「持ってけ、持ってけ」って。どれだけみかんをいただいたことか(笑)。温暖な気候だからか、みなさんがとても優しかったです。

− 与論島でも島の方と交流されることもあったんですか?

与論島に遊びに行っていたときは、島の人たちと仲良くなるというよりは、ただ風景の中に自分の身を置いていたような気がします。東京から行くと、人に疲れていたりするじゃないですか?だから、何もないところに自分の身を置くことが自然だったんでしょうね。

それでも、20〜30代の若い人たちとはずいぶん知り合いになりました。みんな一旦は、島の外に出てしまうけど、みんな島に戻ってくるんですって。やっぱり島の空気が好きなんでしょうね。

− 島にはどのくらい滞在されていたんですか?

撮影のときは約1カ月いたので、1週間くらい、リゾートに行くのとは違う、暮らすような感覚で滞在していました。町にも入って「ああ、こんなところにこんなお店があるのかぁ」なんて思ったりして。

1カ月いると、ちょっとはそこの場所が分かってくる気がするんです。そこに住む人たちの空気とか、気質とか。広島の人たちは、無理しないで淡々と生きていて、「ここ、暖かくていいでしょ?」という雰囲気で暮らしている。

− 1カ月もいると血がすっかり入れ替わりそうですね。

そんな感じがしましたね。だって、二層式の洗濯機で洗濯するのが単純に楽しくなったりして(笑)。

− それから東京に戻ると、かなりのギャップを感じそうです。

本当にもう、何もいらないのに、なんでこんなにたくさんのモノを持って生活しているんだろうって思うんです。だから、ヤドカリみたいに、どんどんどんどん大きいところに移っていく状態から、今度は「反対ヤドカリ」しなくちゃならないのかなって。どんどん小さい殻にしていくっていう(笑)。

− 感覚がシンプルになりますよね。『モヒカン故郷に帰る』で、印象深いシーンはありましたか?

父と息子が二人でお墓参りに行くシーン。墓がすごく高い所にあるから、ずっと階段を上がっていくと、墓から海がぱあっと見えるんです。その一連のシーンがすごく好きでしたね。ああ、この二人はこんなところで生まれて暮らしてきたんだなあって。

− そこにある暮らしを感じ取られたんですね。

そうですね。島じゃないんですけど、ずいぶん前に和歌山で空き家になったお家を借りて、遊んでいたことがあるんです。1週間いるだけでも、けっこうおもしろい時間が過ごせるから、もう少し長く休んで、暮らすみたいに休みを楽しむような、日本の人もそんな休暇をもっと取った方がいいのにと思います。

広島の撮影のときも、私たちが住んでいる設定の家は、空き家になっているところをお借りしたような感じだったから、そういう風に使える家があるかもしれませんよね。需要と供給がうまくいって、貸したい人と借りたい人がうまくいったらいいのにね。

− 訪れるうちに住んでみたくなることもありますか?

小さい頃からそうなんだけど、私はそこに行くまでは時間がかかるんだけど、行っちゃうと帰りたくなくなっちゃう人で。広島も住んでみたいなと思いました。

それと、ずいぶん前ですが、石垣島にも遊びに行きましたね。与論島に比べたら石垣島は大都会でした。あとは、長崎の離島(※4)。私は見てないんですけど、夜はタヌキも歩いていたみたいで、見たかったなあ。その島は町の中がものすごく昭和的で、かわいい島でした。夕方になるとおばちゃんが、船着場で釣りをしてたりして。って、話しながら段々思い出してきましたね(笑)。

※4 長崎の離島
映画『SWEET SWEET GHOST』のロケ地となった長崎県の崎戸島

それと、今行ってみたいのは田代島(たしろじま|宮城県石巻市)。佐渡(さど|新潟県佐渡市)にも行ったことがないから行ってみたいですね。

− 最後に上映中の『モヒカン故郷に帰る』について、これから見ようという方へメッセージをお願いします。

撮影した島で上映会をやったらしいんですが、知っている人が出ているからって親戚縁者もみんな集まって、相当盛り上がったみたいです。

どんなところにいても、人の気持ちは変わらないもので、(映画に描かれているのは)日本人の普通の家の暮らしという感じなので、誰もが登場人物の誰かに感情移入できて、楽しんでいただけると思います、きっと。そんな、おもしろい映画です。


(お話を聞いた人)
もたいまさこ

1952 年東京都渋谷区出身。主な映画出演作は『めがね』(07/ 荻上直子) 、『ALWAYS 三丁目の夕日』(05・07/山崎貴監督) など。『それでもボクはやってない』(07/周防正行監督) では、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。

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©東京テアトル

『モヒカン故郷に帰る』
モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン永吉は、妊娠した恋人を連れて、故郷の島へ7年ぶりに帰省。そこで待ち構えていたのは、矢沢永吉をこよなく愛す頑固親父・治や筋金入りのカープ狂の母・春子など。余命わずかな父とぶつかり、家族で笑いあうコメディードラマ。
>> http://mohican-movie.jp/

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