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インタビュー

【島Interview|訊く】「島嶼学から見つめる 日本の島々」嘉数 啓さん(前編)

国連の定義によると世界には3,000〜4,000万の島があり、その5%弱が有人島と推定されている。島はそれぞれ環境が違っていて、ぜんぶ違うからおもしろい。そう語る嘉数啓氏は、沖縄で生まれ育ち米国留学を経て、ハワイや南太平洋の島々をはじめ、世界中の海域にある島々を歩いてきた社会経済学者だ。

1994年に仲間とともに世界島嶼学会を立ち上げ、1998年に日本島嶼学会を創設した嘉数氏は、英語で「Nissology」と呼ばれる「島嶼学」を専門に、自身の専門分野である経済学の枠を超えた超学的アプローチで、島々を見つめている。島嶼学に精通する嘉数氏に話を聞いた。
※この記事は『季刊ritokei』22号(2017年11月発行号)掲載記事です。

写真・聞き手 鯨本あつこ

−世界中の島の事例で日本の島々に暮らす人々が参考にできる事例はありますか?

たくさんありますが、たとえば観光などで成功しているマルタ島の事例をそのままもってくれば成功すると考えることは間違いです。

マーシャル諸島やトンガなど、南太平洋にある14の国が集まる会議では「沖縄で成功している技術を移転してほしい」という合意がなされており、赤土防除やココヤシからディーゼル燃料をとる技術などを移転する話があります。

ただ、そこでは技術を紹介するだけではなく、各島に適合するように修正することが必要です。そこの土壌に合った技術にするにはやはり「人材」が必要ですから、まずは人材育成からやりましょうと言っています。

−人材育成が鍵になるのですね。

教育は非常に大きな問題ですが、学校のない島がたくさんある。伊計島ではN高(※)が開校していますが、そのシステムはアメリカからスタートして、やり方によっては普通の対面教育よりも効果があると『Newsweek』でも評価されている。

※ N高……2016年に開校した角川ドワンゴ学園が運営する通信制の私立学校。インターネットを介して授業を受け、卒業資格を取ることができる。伊計島(沖縄県うるま市)に沖縄本校が所在。

島には「距離の暴虐」という距離が遠いため、交通費がかかって、不便という点がありますが、それを克服するのがインターネットです。ですから、かつて久米島で提案したのはインターネットと無料Wi-Fiを入れることでした(※)。

※ 久米島のインターネット……久米島は2006年に光回線を敷設。2013年には全国の島々に先駆け、島の80%をカバーする全島Wi-Fiを設置している。


−『島嶼学への誘い』で紹介されていた、イギリスのマン島(※)に伝わる「どこに放り出されても、私は自活できる」というバイキングの教えが印象的でしたが、島の「自活」について教えてください。

※マン島……人口約8万人のイギリスの離島。8世紀の終わりにバイキングが上陸し、定住した島としても知られる。

かつて久米島の物流関係について調べたところ、コンビニで販売された消費物資のうち、島内産は2割程度だった。土地は余っているのに、なぜ自分で生産できないのか?自分たちでつくると高くつくから、農家が少なくなっていたのです。

「お金を島で循環させる」ことが重要です。入ってきたお金を島の生産や所得向上に循環させていけば島全体のためになるわけですが、なんでも輸移入してしまうとお金がかかる。
もともと島には土地もあるし、ある意味、時間もある。だからそれをフルに活用するには技術のあり方を変えるべきです。

僕は高校まで伊江島が見える本部半島で育ち、ウミンチュをやりながら、大豆も豆腐もタバコもサトウキビもつくっていました。ひとりで複数の技術を持っていたのです。

高度な技術でなくてもいいので、自分たちで生活していける技術をすべて取得していることが大事ですが、今は全部分業化されている。運転なら運転手がやらなくてはいけないとかね。その体系をちょっと直したら、島は自己完結型になっていき、島に仕事をつくっていくことにもなります。

−海外でも同じですか?

ミクロネシア諸島も全く一緒です。自分たちでつくれるのに、ぜんぶ海外から船で運んでいて、卵まで持ってくるわけです。

僕は小さな島の自給度を調べるのに卵を調べるのです。経験上、一番自給しやすいのが卵だったから卵を自給していない島は、ちょっと自立心が足りないですね。

輸移入し始めるとそれが当たり前になるのです。昔はそうじゃなかった。沖縄本島もそうですがサトウキビ畑のあとにつくるものがなくて耕作放棄地もどんどん増えている。土地が足りないんじゃなくて、活用するノウハウと人がいなくなっているのです。

インタビュー後編へ続く)


(お話を聞いた人)
嘉数 啓(かかず・ひろし)

1942年沖縄県生まれ。ネブラスカ大学大学院経済学博士号(Ph.D.)取得後、アジア開発銀行エコノミストや沖縄振興開発金融公庫副理事長、琉球大学理事・副学長等を経ながら、ロンドン大学政治経済大学院(LSE),ハワイ東西文化センター・フルブライト上級研究員、ハワイ大学、グアム大学、済州大学校、マルタ大学、コロンボ大学、台湾国立澎湖科技大学などの客員教授等歴任。島嶼学関連では国際島嶼学会創設理事、日本島嶼学会名誉会長、島嶼発展に関する国際科学評議会(UNESCO-INSULA)東アジア代表、内閣府沖縄振興審議会会長代理・総合部会長等を歴任。現職は、台湾澎湖県アドバイザー、琉球大学名誉教授、沖縄キリスト教学院寄付講座教授等。


著作/
『島嶼学への誘い –沖縄からみる「島」の社会経済学』(岩波書店/2,800円+税)

地理、文化人類学、経済学など異なるジャンルの研究を集結させながら、超学的アプローチで島々の有り様を議論する島嶼学。島嶼学発祥の地といわれる沖縄を基軸にさまざまな視点から、島を知ることができる入門書。

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』インタビュー

離島経済新聞社が発行している 全国418島の有人離島情報専門のタブロイド紙『季刊ritokei(リトケイ)』 本紙の中から選りすぐりのコンテンツをお届けします。 島から受けるさまざまな創作活動のインスピレーションや大切な人との思い出など、 島に縁のある著名人に、島への想いを伺います。

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