つくろう、島の未来

2020年07月13日 月曜日

山口県柳井市から南に約20キロメートル、平郡島(へいぐんとう|柳井市)の平郡東小学校は2003年に最後の在校生が卒業したことで休校となった。

2007年に横浜から移住した松川潤さんの長女・洵子さんが、2012年に小学生となることを機に、平郡東小学校の再開が浮上。校舎の新設が必要であったことから、議会でその可否が問われたが、市は10年間のリース契約で2教室、1職員室の3室の新校舎建設を決め、9年ぶりに平郡東小学校が再開した。

9年ぶりに新入生を迎えた入学式では、島民約40人が駆け付け、学校の再開と新入学を喜んだ。洵子さんは担任と1対1で行われる教室での授業だけでなく、課外授業として行われる島のフィールドワークや、島外から招いた講師による専門知識の学習など、1人だからこそできる細やかな学びを体験していた。

その後、洵子さんの学校生活や島の暮らしがテレビ番組に取り上げられたことをきっかけに、島に移り住む家族が現れ、2014年には児童数6人に。2017年には新入生が加わり複式3学級となり、新たに教室が増設された。

2018年3月に行われた洵子さんの卒業式には、6年前の再開を祝ったように島民約30人が洵子さんの晴れ姿を見に集まり、テレビや新聞も取材に訪れた。小学校再開をきっかけに、平郡島の知名度が上がったことも、島の関係者から喜ばれている。

平郡島(山口県)

一方、平郡島には中学校がないため、洵子さんを含む卒業生4名のうち2名は、往復4時間かけて本土側の中学校へ通い、2名は進学をきっかけに他県に転出している。

2019年度は、2世帯4人が平郡東小学校に通っているが、新たな移住者が増えない限り、2020年度は1世帯3人になる。島には未就学児もいるが、転出した場合、再度休校してしまう可能性もある。

磯部祥生校長は「島で子育てをしたいという方を一人でも増やすことができれば」と願い、今年度よりFacebookページを立ち上げ、ホームページを再開するなど、学校活動を頻繁に更新。同級生の少ない教育環境を補完するため、テレビ会議システムによる遠隔授業の実施や本土側の児童との交流学習、和太鼓交流公演など外部の方々との交流機会も設けられている。

2006年には、家内安全や無病息災を祈り、子どもたちが島の家々を回る伝統行事「亥の子(いのこ)」も復活した。島にこだまする子どもの声は、島全体の活気にもなる。今年7月には新たな福祉施設ができるため、「施設の職員に子育て世代が採用されると学校としてもありがたい」と磯部校長は展望している。(取材・武原由里子)

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特集|島にみる再生復活という希望
台風、噴火、地震、津波、人口減少、人口流出、産業衰退に学校の統廃合etc……。自然の猛威や社会変化により、昨日まであったものが無くなることもあれば、じわじわと姿を消すこともあります。自然災害の多い日本列島では毎年のように台風や豪雨、地震などの被害が起き、地域を支える人口減少にも歯止めはかかりません。 島から無くなろうとしているもの、あるいは無くなってしまったものの中には、人々の生活やつながり、心を支えていたものも含まれます。失ったものが大事であるほど、心に大きな穴があき、寂しさや悲しさ、無力さがその穴を広げてしまいます。 とはいえ、絶望もあれば、希望もある。有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』30号と連動する「島にみる再生復活という希望」特集で、島々で実際に起きている希望に目を向けてみませんか?

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