つくろう、島の未来

2024年11月12日 火曜日

つくろう、島の未来

佐渡島(さどがしま|新潟県)の新潟県立佐渡総合高等学校では、2020年度の授業で島で働く大人たちへのインタビュー取材が行われました。高校1年生(当時)が実際に話を聞き、写真を撮影した大人は96人。それらを収録したインタビュー集『佐渡に暮らす私は』(発行:3710Lab)より、11の記事を抜粋して掲載します。

今回は、葬祭業をされている、今井一洋さんのインタビューをお届けします。インタビュアーは竹内大地さん。

私は「セレモニーホールしんや」を経営している今井一洋です。創業から7年目に入りました。

元々は両親が経営していた「新屋商店」で地元の姫津港で捕れた魚の加工と料理の仕出しの仕事をしていました。しかし、十年前の東日本大震災により、海の様子が変わり、不漁が続き、価格高騰により、加工業が厳しくなりました。また、昔のように冠婚葬祭を自宅で行う家庭が少なく、仕出しの注文も減少しました。

その中でこれからの時代に合う事業を思案する日々を送っていました。両親も高齢となり、世代交代を機に、料理の経験も活かせる葬祭業をやろうと決意しました。オープンまでは、たくさんの方々にお世話になりました。感謝の気持ちで一杯です。

葬祭業を始め、人の死と向き合い、多くのことを学びました。葬儀は、故人の人生の卒業式のように思います。大切な家族を亡くされたご遺族の悲しみに寄り添い、心を込めてお手伝いをさせて頂きます。一番辛いのは、火葬場での最後のお別れです。心の中で「お疲れ様でした」とつぶやきながら、お見送りしています。通夜、葬儀の二日間の式典の中では、故人の歩んで来られた道のり、人生模様を見せて頂き感動しています。

私の座右の銘は「感謝と笑顔」です。ありがとうの気持ちを忘れず、日々笑顔で暮らせたら、何より幸せなことと思います。両親が経営していた店のおかげで商売ができています。地元の方との信用を築くことや商売のノウハウを、身をもって教えてくれました。

二人とも他界しましたが、商売根性はしっかり受け継ぎ、子ども達に伝えていきたいと思っています。尊敬する両親でした。私の好きな北島三郎さんの歌の詩に「かけた情けは忘れても、受けた恩は忘れてはいけない」とあります。この言葉にいつも勇気をもらい、お世話になった人達に感謝の気持ちを忘れず、進んでいきたいと思います。

佐渡は素晴らしい島です。自然が豊かで、キレイな海に囲まれ、人情味がある人たちに包まれています。しかし、年々観光客が少なくなり、寂しく残念です。また、半数が高齢者と聞きました。若い人たちが働く企業が少ないことが課題かと思います。Uターンしても、安心して暮らせるように、佐渡の将来を真剣に考えてほしいと思っています。

最後に私にとって、佐渡は生まれ故郷で最愛なる島です。海が大好きな私にとって、朝起きて、窓から見える姫津港の風景が何よりの癒しであり、「今日も一日頑張るぞ」という気合も入ります。年を取って、楽しみも増えました。畑作りや大工仕事、今は船に乗って魚を釣ることに夢中になっています。故郷佐渡は、私の自慢の島です。


【書籍情報】
『佐渡に暮らす私は』
定価 2,200円(税込)
撮影・執筆 新潟県立佐渡総合高等学校
企画・監修 田口康大
アートディレクション・デザイン 伊藤裕
撮影 小倉快子(BOOKS f3)
サイズ W156mm×H231mm
発行 3710Lab
助成 日本財団
みなとラボ『佐渡に暮らす私は』販売ページ

【販売店一覧】
【佐渡島】
丸屋書店(両津)/池田屋商店(真野)/ニカラ (羽茂大崎)
【新潟県】
北書店 (新潟市)/ブックスはせがわ(長岡市)
【宮城県】
曲線(仙台市)
【神奈川県】
本屋・生活綴方(横浜)
【長野県】
mountain bookcase(富士見町)/栞日(松本市)
【京都府】
恵文社一乗寺店(京都市)
【大阪府】
スタンダードブックストア(大阪市)
【兵庫県】
1003(神戸市)/ASOBU KAPPAN(淡路島)
【愛知県】
ON READING(名古屋市)
【広島県】
READAN DEAT (広島市)/本屋 UNLEARN(福山市)
【鳥取県】
汽水空港(湯梨浜町)
【熊本県】
橙書店(熊本市)

     

離島経済新聞 目次

【寄稿|佐渡に暮らす私は】

新潟県立佐渡総合高校1年生の「産業社会と人間」という授業で制作されたインタビュー集『佐渡に暮らす私は』より、記事を抜粋して掲載します。
自己の将来の生き方や進路について考えることを目的に、佐渡島の高校生が島で働く大人たちに話を聞いた96組のインタビューからは、とても多様な「佐渡に暮らす私」がいることの豊かさを感じられます。

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