佐渡島(さどがしま|新潟県)の新潟県立佐渡総合高等学校では、2020年度の授業で島で働く大人たちへのインタビュー取材が行われました。高校1年生(当時)が実際に話を聞き、写真を撮影した大人は96人。それらを収録したインタビュー集『佐渡に暮らす私は』(発行:3710Lab)より、11の記事を抜粋して掲載します。
今回は、建築士・工務店経営をされている、川上 巧さんのインタビューをお届けします。インタビュアーは松村柊生さん。
私は、設計をしたり、大工スタッフに指示を出したり、他の職種の方達と一緒に力を合わせて家を作っています。私にとって仕事のやりがいは、人が安心して暮らせる場所、そしてくつろげる場所をつくるということです。安心できる場所やくつろげる場所というのは、それぞれの家族によって違います。その違いを形にしていくのは、すごく面白く、意義があります。
この仕事の最大の魅力は、お客様の色々な話を聞いて、それを形にしていくことです。また、その住宅が出来上がった時に、その家族が楽しんで、くつろいで、大事にしていってもらえるのであればありがたいです。
新型コロナウイルス感染症防止のため、外に出る機会が少なくなった状況の中で、家でどうやってくつろぐかということは、これからも考えていかないといけないことです。
普段外で仕事をしているお父さんが、テレワークになり、家で仕事をするということになると、くつろいで仕事ができる場所があれば、テレワーク自体の能率も上がるし、他の家族が家にいても、仕事の邪魔にならない場所がちゃんとあるような家がこれからは求められていくでしょう。その家族にあった家を作って、家族がそれを大事にしていけば、孫の代にまで受け継いでもらえる。そんな家をつくっていくことが、僕たちが挑戦し続けていることです。
仕事をする上で気を付けていることは、お客様の話をよく聞くということと、そこにプロとしての提案をするということです。
高校生に伝えたいのは、自分たちが学校に通えて、生活できているのは、親が頑張っているから、という基本を忘れないことです。いずれ社会人になるということは、自分で生計を立てていくということですし、生活していくということだからです。
高校時代には、きれいだなとか、かわいいなとか、そういったものに気づく、興味を持つということが、僕らの仕事に関して言えば一番大事かなと思います。例えば窓を開けるときに、「窓からどういった景色が見えたらきれいだろうか」とか「その景色があればそこにいるだけで楽しくなるだろうな」とか、そういうようなことに気づくなどといったことです。身近にあるものの美しさを感じ取れる、自分をそういう状況にしておくということが大切だと思います。
佐渡では一つ一つの建物がバラバラではなくて、まとまりがあるような風景が見られるのですが、それが建築家からすると貴重なことだと思います。いろいろ違うデザインの家を建てたいという気持ちはあるのですが、引いて見たときに「佐渡って黒い瓦の家が多いよね」とか、「島全体の建物にまとまりがある感じがいいな」と思いますし、それは佐渡の景観にとって、とても大切な要素だと思います。
【書籍情報】
『佐渡に暮らす私は』
定価 2,200円(税込)
撮影・執筆 新潟県立佐渡総合高等学校
企画・監修 田口康大
アートディレクション・デザイン 伊藤裕
撮影 小倉快子(BOOKS f3)
サイズ W156mm×H231mm
発行 3710Lab
助成 日本財団
みなとラボ『佐渡に暮らす私は』販売ページ
【販売店一覧】
【佐渡島】
丸屋書店(両津)/池田屋商店(真野)/ニカラ (羽茂大崎)
【新潟県】
北書店 (新潟市)/ブックスはせがわ(長岡市)
【宮城県】
曲線(仙台市)
【神奈川県】
本屋・生活綴方(横浜)
【長野県】
mountain bookcase(富士見町)/栞日(松本市)
【京都府】
恵文社一乗寺店(京都市)
【大阪府】
スタンダードブックストア(大阪市)
【兵庫県】
1003(神戸市)/ASOBU KAPPAN(淡路島)
【愛知県】
ON READING(名古屋市)
【広島県】
READAN DEAT (広島市)/本屋 UNLEARN(福山市)
【鳥取県】
汽水空港(湯梨浜町)
【長崎県】
BOOKSライデン(長崎市)
【熊本県】
橙書店(熊本市)