つくろう、島の未来

2021年12月06日 月曜日

つくろう、島の未来

鹿児島県大隅半島の南に浮かぶ屋久島(やくしま)。周囲約130kmの円い島の、山と川と海が接するわずかな平地に、ひしめき合って暮らしています。Uターンして、自らもコーヒーショップを営む島記者が、島ならではの小さな商いの話と季節のたよりを届けます。

#08 お正月のダブルレインボー

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近づいたり遠ざかったり、山の雪景色に冬の深まりを感じるころ。

 

天気のいい日はセーター1枚で磯遊びに興じたり、運転に自信がある人は、しっかり着込んで雪遊びのために山まで出かけたり、標高の高い山を抱える島ならではの冬の日常です。年末、コーヒーショップにいらしたお客さまとお正月のプランをあれこれおしゃべり。2日から営業する店は多くなったものの、元旦ともなるとなかなか。

 

天気が崩れれば、山岳部は道路の凍結による通行規制が敷かれることもあります。山や海に繰り出すことも困難で、宿でのんびりとはいかないお子さま連れなど、貴重な時間を持て余してしまうのではないでしょうか。

 

我が家の元旦は、島の南、尾之間(おのあいだ)の谷崎鼻(たんざきばな)にあるJRホテル屋久島の外来入浴で初湯を楽しみました。美容液のようにとろりとした独特のアルカリ性単純温泉で、大浴場からは窓いっぱいに広がる水平線が望めます。涼しい潮風の吹く露天風呂も冬ならではの爽快感です。

 

ちょうど、照ったり降ったりのお天気で、いくつもの虹が車窓からみられました。高い山のために、不安定な天候の島では、虹に遭遇することが珍しくありません。虹を探すポイントは、太陽に背を向けること。雨上がり、薄曇りの中で虹を探すと、かなりの確立で遭遇できます。

 

同じ尾之間の山手に建つ、いわさきホテルも名峰モッチョム岳を望むガラス張りのロビーラウンジが気持ちのよい場所。ある年の正月、島一周ドライブの途中、ここに立ち寄りました。雪をたっぷりとまとい、白く輝くモッチョム岳は普段とは違う壮麗な美しさで、強く心に残っています。

 

島の南東、安房(あんぼう)の屋久杉自然館も例年、元旦営業を行っています。屋久杉と人との関わりや島の植物について学べる施設。パズルやクイズも充実していて、大人も子どもも楽しめること請け合いです。

 

初詣は「はちまんさま」へ

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初詣は、地元で「はちまんさま」と慕われる「矢筈嶽(やはずだけ)神社」へ。島の北端、矢筈岬の西、一湊集落を望む洞窟に、漁師が少しずつ砂を運びならして社殿を設けたといわれています。海岸沿いの参道を10分ほど歩く必要があるので、海がしけている際はお参りできません。

 

島の東、宮之浦集落の名前の由来にもなったといわれる益救(やく)神社は、駐車場からも近く、階段も少なく、アクセスしやすい神社です。平安時代の『延喜式(えんぎしき)』にも記載される歴史ある神社で、街なかにありながら、栴檀や楠などの生い茂る境内は静謐(せいひつ)な空気が流れています。

 

年越しには、和太鼓演奏の奉納があったり、ときおり手作り市が立ったり、様々な催しの場として親しまれています。縄文杉が織り込まれた登山守も旅の記念に喜ばれています。

 

ほかにも各集落の神社は、とびきり景色のいい場所に立地しているので、神社廻りの島一周も楽しいかもしれません。

 

島の恵みを閉じ込めた贅沢ジェラート

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元旦に開いているのは、ホテルと自然館くらいかと思っていたら、島の南のエリアはポツポツ営業中。初外食は島の南、麦生(むぎお)のジェラテリア「そらうみ」へ。

 

桃色のグァバや山吹色のたんかん、白いのは屋久島の塩。ショーケースに並んだ鮮やかなジェラートの中から、味や色の組み合わせを考えながら、選ぶひとときが楽しい。評判が評判を呼んで、オフシーズンでも地元客でにぎやか。

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名産の柑橘類ポンカンやたんかん、パッションフルーツ。それ以外にも、マンゴーやグアバ、パパイヤ、ドラゴンフルーツ、びわ……、日持ちしなかったり、まとまった量が確保できなかったりで、味はいいのに名産とはいかない島産のおいしいフルーツたちはたくさんあります。年に数週間しか出回らない、そんな幻のフルーツを知ることができるのも、この店の魅力なのです。

 

店主の毛利さんは、初めて訪れた屋久島にひかれ、二度目に夫婦で訪れたときには、不動産を巡り、住まいの購入を決めたといいます。「島の既存店とかぶらない商売」を模索していたときに知ったのが、奄美大島のジェラテリア「ラ フォンテ」。こころよく研修を受け入れてもらい、住宅とは別に店舗も新築して、2014年の5月、オープンにこぎ着けました。

 

ダイビングに沢登り、テニスに集落の活動。活動的な毛利さん夫妻は、移住して2年とは思えないほど交友関係豊か。友人たちが、季節ごとに次々と新たなフルーツを提案したり、持ち込んだり、試作につぐ試作の日々。うかがうたびに新作が並んでいて、好奇心を刺激されます。

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お話を伺っている最中にも次から次に訪れる友人知人の会話が、あちこちで広がり、小さなサロンのよう。はやくも島の人々に愛される名店となりそうな気配に満ちています。

 

 

(つづく)

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