つくろう、島の未来

2025年03月12日 水曜日

つくろう、島の未来

400島あれば400通りの個性がある島と文化。島に関わる文化人が、リトケイ読者に紹介したい島文化とは?今回はカメラマンとして活動しつつ、島々の食を楽しむレシピの発信やイベント企画などを手がける幸秀和さんです。

※この記事は『季刊ritokei』47号(2024年12月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

ソーメンとニンニクの芽や豚肉などを炒めてつくる油ぞうめんは、奄美の島酒・黒糖焼酎との相性も抜群

島には地域ならではの島料理がたくさんあります。 特産品を使ったモノから、身近にある食材が独自の調理法によって、見たことのない料理になったり、島の食は奥深いのです。

一番驚いたのが新潟県・佐渡島のふぐの子の粕漬でした。ふぐの卵巣といえば、特に注意しなければいけない部位のはずですが、長年培われた工程を行なうことで、毒が抜けるそう。プチプチする食感がおもしろく、酒粕で漬け込まれた独特で濃厚な風味は、佐渡島の日本酒がついつい進んでしまいました。

他にも山口県周防大島のみかん鍋、東京都・伊豆諸島(伊豆大島ほか)のべっこう(お刺身の唐辛子醤油漬け)、長崎県・対馬島のかすまき、聞いただけでは想像がつきません。鹿児島県 ・ 奄美群島(奄美大島ほか)には油ぞうめんという島じゅーり (島料理) があるのですが、どんな料理が思い浮かびますか?

見た目は、沖縄県の郷土料理であるソーミンチャンプルーとかなり似ています。そうめんと具材を炒めるのですが、違いはだし汁を加えること。パスタとソースを合わせるような感じです。具材もさまざまで、各家庭によって違います。まさに島のおふくろの味といったところでしょうか。

そんなそうめんにまつわる変わったお祭りが鹿児島県・喜界島で行なわれています。そうめんが夜空を飛び交う「ソーメンガブー」です。喜界島・中里集落の豊年祭(集落の安全や豊年などを祈願するお祭り) 行事のひとつで、100年以上も続いているそうです。

乾麺の束がやぐらの上から投げられると、みんな一斉に手を伸ばして、無事にキャッチ!と思いきや、それを奪い取られます。誰かが先に取ったそうめんを奪うことも許されるという荒々しさ。油断できない緊迫感にみなさんも真剣な顔、子どもたちが取り合う様子に周囲から笑い声があふれます。

伝統行事と食は密接につながっていて、食から知る島の文化はまだまだあります。また、日本の島々は北海道から沖縄までと幅広く点在し、気候や風土の違いもあり、島の恵みから季節を感じるのも楽しいです。

私はいろんな島から食材を購入しています。香川県小豆島からは旬の野菜セット、5月は鹿児島県三島村・竹島の大名筍、6月は鹿児島県・中之島 (トカラ列島) から届く、島らっきょ。旬ならではのおいしさがありがたく、次に届くのが待ち遠しい。

島食材を日常に。おうちに居ても島とつながっている。そんなしみじみとした喜びが広がればと願い、今日も島食材でレシピを考えています。


幸秀和(こう・ひでかず)さん

クリエイター、島コーディネイター。祖父が鹿児島県・奄美大島。島や地域の風景、料理の写真撮影をメインに活動。全国の島が集まるオンラインコミュニティの運営、イベント企画、島食材を使ったレシピも発信中

     

関連する記事

ritokei特集