『世界がかわるシマ思考-離島に学ぶ、生きるすべ』(以下、『世界がかわるシマ思考』)では「シマ」を「人と人が支え合えるコミュニティ」と定義しています。沖縄・奄美地方では集落を「シマ」と呼ぶように、地縁の濃い小規模コミュニティが「シマ」の代表格です。
2050年に向けて起こりうる社会変化により、存続が危ぶまれる地域も少なくないなか、生き残っていけるのは、どのようなシマなのか。哲学者の内山節さんと、海士町で持続可能な地域づくりに携わる阿部裕志さん、リトケイ統括編集長の鯨本あつこが語り合いました。
『世界がかわるシマ思考』に収録する座談会より、その一部を紹介します。
※この記事は『季刊ritokei』45号(2024年4月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
人物紹介
哲学者 内山節(うちやま・たかし)さん
1950年生まれ。哲学者。1970年代に入った頃から、東京と群馬県の山村・上野村での二重生活を送る。現在はNPO法人・森づくりフォーラム代表理事など。著書に『共同体の基礎理論』(農文協)、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』(講談社現代新書)など多数
海士町/風と土と 阿部裕志(あべ・ひろし)さん
1978年愛媛県生まれ。大学院終了後、トヨタ自動車の生産技術エンジニアに。競争社会のあり方に疑問を抱き、2008年、持続可能な社会のモデルを目指す島・海士町に移住。株式会社巡の環(2018年より「風と土と」に変更)を仲間と創業。1児の父。著書は『僕たちは島で、未来を見ることにした』(木楽舎)
NPOリトケイ 鯨本あつこ(いさもと・あつこ)
1982年生まれ。大分県日田市在住。地方誌編集者、経済誌の広告ディレクター、イラストレーターなどを経て2010年に仲間と共に離島経済新聞社を設立。NPO法人離島経済新聞社代表理事、『ritokei』統括編集長。2児の母。自身のふるさとを生活拠点に、全国の島々を訪ね、人の暮らしや自然、社会のより良いあり方を探求中
島の共同体は可能性に満ちている
共同体には普遍的な形はなく、常に変化するもの。
一番小さい共同体の単位は『家族』。ただし、家族だけではうまく暮らしていけず、集落単位の共同体がある程度うまくまわってないと、家族という共同体もうまくいかない。
阿部さん
共同体とは災害時などに『お隣さんどうしてるかな?』と、すぐに助けに行ける距離感。島では何かあったときに相談できる人がいるから、自然災害にも対応できるし、安心していろんなチャレンジができる。
世界のルールがガラッと変わってしまったときに信じられるのも、リアルな共同体の中にあるリアルなつながりや関係性。
海士町の強みは『権力者がいないことじゃないか』と、よく副町長と話している。圧倒的な権力者はいないけれど、たくさんのリーダーがいる。それも強い共同体にとって重要な要素。
ひとつの共同体の中に、たくさんのリーダーがいることが良い状態。
想いを持った子どもたちに対して、大人が『世界で羽ばたいておいで』と送り出すことが大切。
共同体における子どもの教育で、重要な役割を果たしていたのは『子ども組』の存在。比較的年齢の近い年上の子どもから年下の子どもに、大事なことを教えていく。
今は子育てにしても教育にしても責任の所在が追求されがち。共同体のなかではそのあたりを暗黙のルールとしておおらかに捉えやすい。
それぞれに役割を与え、挑戦する機会をつくることによって、結果として、子どもも、自分自身も生きる力が高まり、生き残れる共同体が育っていく。
『ここで生きていこう』という覚悟を持って生きている人がいる島の共同体は、可能性に満ちている。
人口減少に向かう社会を心豊かに生きるヒントを多数収録
『世界がかわるシマ思考–離島に学ぶ、生きるすべ』
『世界がかわるシマ思考–離島に学ぶ、生きるすべ』
世界がかわるシマ思考制作委員会・著 離島経済新聞社・編
2024年4月20日発売
200ページ
本体1,900円+税
issue+design発行
英治出版発売
書籍『世界がかわるシマ思考』には、人口減少に向かう社会を心豊かに生きるヒントを多数収録しています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
>>クラファンから1年。『世界がかわるシマ思考ー離島に学ぶ、生きるすべ』4/20発売決定!目次を公開