日本の総人口は2017年をピークに減少に転じ、2023年の推計では1年間で83万7,000人の減少が記録されました。この先の日本で、人口減少によって引き起こされる「変化」が次々と現れてきたとき、私たちは自分の心をどのように対応させることができるでしょうか。リトケイの新著『世界をかえるシマ思考 -離島に学ぶ、生きるすべ』(以下、『世界をかえるシマ思考』)より、人口減という変化を可能性に変えるヒントを紹介します。
※この記事は『季刊ritokei』45号(2024年4月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
人口減少を可能性に。2050年に向けた「シマ思考」
歴史を振り返ると日本の総人口は過去100年で急激に増え、2017年をピークに減少に転じました。総務省が4月12日に公表した2023年10月1日時点の人口推計によると、過去1年でマイナス83万7000人。過去最大の減少幅を記録しました。
坂道を転がるボールが徐々にスピードをあげていくように、この先の日本では、人口減少によって引き起こされる「変化」が次々と現れてくるでしょう。
-毎日運行している船が、ある日を境になくなってしまうかもしれない。
-ガソリンや灯油が、地域では手に入らなくなってしまうかもしれない。
-通える学校がなくなり、子育て世代が暮らせなくなるかもしれない。
今は当たり前にあるものがなくなってしまう「変化」が起こった時、私たちは自分の心をどのように対応させることができるでしょうか。
米国の医学博士・心理学者であるスペンサー・ジョンソンは世界的なベストセラーになった著書『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)で、「変化を受け入れ、楽しむ」ことを説きました。
リトケイが島の皆さんとつくった新著『世界をかえるシマ思考』も、人口減という変化を可能性にかえるヒントを収録しています。
2050年にかけて起こりうる「変化」をどのように受け入れ、どのように対応するか。『世界をかえるシマ思考』に収録する「シマ思考」をもとに、イメージトレーニングしてみましょう。
人口が減ると消費者が減ります。消費者が減って売れる商品の数が減ると、お店に並ぶ商品や種類も減ってゆきます。
コンビニや大型スーパーが身近にある人にとっては、「牛乳」だけでもいろんな種類から選べることが当たり前。しかし、そんな当たり前も人口減少によりなくなってしまうことがあります。
今、あなたが買い物に出かけたとして、陳列棚に並ぶ牛乳が1種類だとしたら、どのように感じるでしょうか。ある島に移住した人は、こう考えました。
「商店などで、牛乳などが一種類しかなくてほかに選びようがないことは、シンプルでとてもよい」(2015年『季刊 ritokei』15号・読者アンケートより)。
選べないことを不便と捉えるか、シンプルで良いと捉えるかは、自分自身の考え方次第。自分自身が満ち足りていればそれでいいのです。
近年、多くの市町村で行政職員や財源の不足が深刻化しています。2036年には3人に1人が65歳以上の高齢者となり、現役世代が減って国の経済力が下がると、過去60年にわたって続いてきた社会保障制度も成り立たなくなると言われています。
社会保障制度のような「公助」に頼れなくなった時に、重要になるのは「共助」。もともと多様なサービスがなく、ひとたび巨大台風が襲来すれば流通が止まる島では、地域内での支え合いが今も当たり前に行われている地域がたくさんあります。
奄美大島の大和村では地域内にある「支え合い」を活かした地域づくりを推進。「世話好き」として知られる地域住民を中心に、集落ごとに「支え合いマップ」をつくりながら生まれた10の支え合いグループが、交流サロンや安否確認、健康づくりや文化継承を担っています。
大和村の考えは「そこに暮らす人が動かなければ、住みたい地域はつくれない」。行政から支援メニューを提供するのではなく、住民側からの求めに対して必要な支援をする。公助の減少という変化に対応するには、住民と行政が共に「住みたい地域を自分でつくる」思考を持ち、実践することが重要です。