海に隔てられた離島地域では、医療過疎地の救命救急に欠かせないドクター・ヘリをはじめ、島に医療を届ける病院船や健康診断船などが活躍しています。島々の命と健康を守るため活躍する乗り物をご紹介します。
※この記事は『季刊ritokei』43号(2023年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
病院船・健康診断船
瀬戸内海では1962年に運航を開始した瀬戸内海巡回診療船「済生丸(さいせいまる)」が活躍。島の住民が「自分の体は自分で守る」ことを支援する予防医学を重視した巡回診療が行われている。
阪神・淡路大震災の発生時には陸路が寸断された地域に出動。海路を使って災害救助活動を行う重要インフラとしても注目されるほか、医療関係者が予防医学やへき地医療のあり方を学ぶ場としても重要な役割を担う。
7島に約600人が暮らすトカラ列島(鹿児島県)では、がん検診などを行える車両をフェリーに積載した通称「レントゲン船」が、年1回全島をめぐりながら住民の健康診断を行っている。
モバイルクリニック
五島市(長崎県)は2023年1月より巡回車両モバイルクリニックを導入。車内にはオンライン診療の設備と医療機器が搭載され、通院が困難な住民の自宅を訪問しながら、テレビ会議システムを通じた診断が行われる。
五島市の療養支援事業所と、長崎大学や長崎市内の医療機関、民間企業の連携協力により実現。車両の運行は地元タクシー会社が担い、同乗する看護師が診療をサポートする。
ドクターヘリ・防災ヘリコプター・救難飛行艇
海を隔てる医療過疎地の救命救急に欠かせないヘリコプター。防災ヘリコプターを使った患者搬送や、奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)を拠点にトカラ列島から奄美群島全域をカバーする奄美ドクターヘリ(鹿児島県立大島病院が運航)や、有人離島数日本一の長崎県の島々をカバーする長崎医療センターのドクターヘリなども活躍。
小笠原諸島(おがさわらしょとう|東京都)の急患搬送では、海上自衛隊のヘリや救難飛行艇が活躍するが、硫黄島(いおうとう|東京都)を経由しながらの搬送には9〜10時間を要する。