400島あれば400通りの個性がある島と文化。島に関わる人々が、リトケイ読者に紹介したい島文化とは?今回は佐渡島に移住し、地元ケーブルテレビに勤めながら島をめぐる佐橋響さんの心に響いた島文化を紹介します。
※この記事は『季刊ritokei』50号(2025年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
佐渡島の人々に 「おんでこ」 と呼ばれて親しまれる鬼太鼓
東京から佐渡に移り住み、1年と少し。まだまだ佐渡初心者の私ですが、そんな私が紹介したい魅力的な島文化のひとつが「佐渡の祭り」です。屋台が並び、浴衣で楽しむ関東の祭りとは、ひと味違うのです。
佐渡の祭りは神事としての意味合いを強く持ち、無病息災などを祈願する芸能が奉納されます。地域ごとに見られる芸能が違ってくるところも楽しみのひとつ。今年6月に行われた「新穂天神まつり」に参加しました。
毎年6月に行われる管明寺というお寺の祭りで、地域が一体となる神輿・提灯行列と、佐渡の伝統芸能「鬼太鼓」の奉納が行われます。はじめに行われたのは、神輿・提灯行列。3基の神輿を先頭に、山車と提灯が一列になって街中を練り歩き、「チョーサヤ」という掛け声があたりに響き渡ります。
私は行列の一番後ろにくっついて、行列を追いました。仕事ではカメラを持って祭りの会場を取材することが多いのですが、カメラを持たずに純粋に祭りを楽しむのは何だか新鮮で、少し緊張しました。
でも、そんな緊張も束の間。提灯を持った地元の方がすぐに話しかけてくれて、あっという間に提灯行列の一員に。気がついたら私も、片手に提灯を持ち「チョーサヤ」と声を響かせていました。「私もまつりの一員になっている!」という興奮が、今でも忘れられません。
神輿・提灯行列が終わった20時ごろからは、「鬼太鼓」の奉納が行われました。起源は諸説ありますが、江戸時代には芸能として佐渡に定着したとされ、今も約120の集落で受け継がれています。さまざまな経緯を経て島内に伝播し、集落から集落へと伝わるうちに形を変え、太鼓の叩き方、踊り、鬼の面や衣装などに個性が生まれ、二つとして同じものはないと言われています。
新穂天神まつりでは、鬼太鼓を見に来た人たちが大きな円をつくり、その中で太鼓の音に合わせて鬼が舞い、獅子の舞と地域の人々の掛け声が絡みます。太鼓の音が胸にドンドンと響き、神輿・提灯行列の山車の灯りに照らされた鬼太鼓が、とても幻想的でした。
佐渡の祭りは、神事としての一面のほか、地域の人たちみんなでつくる一体感が魅力です。祭りに参加したいからと、島外からこの日のために帰省する人も多くいるほどです。
祭りは佐渡の人々の繋がりの強さや温かさを象徴するもの。今回、カメラを置いていち島民として祭りに参加してみて、これからも受け継いでいくべき大切な島文化だと改めて感じました。
佐橋響 (さはし・ひびき)
東京都出身。2024年より佐渡島へ移住し、地元ケーブルテレビ局「佐渡テレビジョン」で番組制作・アナウンサー業務に従事。島内での取材活動や撮影、ニュースの放送に日々奮闘中