つくろう、島の未来

2022年12月09日 金曜日

つくろう、島の未来

島とは何か? この問いに向き合う人へお届けする日本島嶼学会参与・長嶋俊介先生(佐渡島在住)による寄稿コラム。今回のテーマは、無人島を含めて「6,852島」といわれてきた日本の「島の数」について。

日本の自然海島総数は15,528以上

従来、公的には「6,852島」とされてきた日本の島数が、国境無人離島の「岩」が「島」に変更されても、数に変化がない。

皆が違和感を抱き続けている数字について、もの言える私人の立場から、数え直し、議論してよいほど、政府公表の公開資料も出揃いはじめた。

長嶋俊介・渡辺幸重監修・編集『新版日本の島事典』(三交社)が間もなく刊行される。同著で開示するデータベースを礎に、日本の島総数を数え直してみたら、「15,528島」が抑制的数値として見い出された。

手順は以下の様なものである。
旧基準では、海図で「満潮高水位1.0メートル以上かつ周囲100メートル以上の自然島」を数えている。1平方キロメートル以下の島名は非公開とし、都道府県別の数字のみ公開されてきた(過去経緯は長嶋俊介著『九州広域列島論』/北斗書房2015等参照)。

そこで国土地理院の地図情報から河口部・汽水域のもの等を除いた、海島データベースで数え直した(ただし後述の理由で標高は問わない)。その結果が [表1]となる。

※ 本土島各1を便宜上同県に加えた数字(なお海島岩礁には人工島が含まれる)
※※ 新基準島とは周囲0.1㎞未満の名有島に新基準島を加えたもの
※※※ 準島とは低潮線保全地域をも島的扱いとした場合
※※※※ 本土繋がりとは橋伝いに本土と往来できる自然島

近年政府は、国境無人離島の積極的公表に歩み出した。
指定された排他的経済水域(EEZ)及び領海の基点となる島の中には、周囲100メートル未満のもの、標高1.0メートル未満のもの、岩等から島名に変更されたもの、名なしに名付けされたもの、所有登記がなく国有化されたものがある。

加えて低潮高地(干潮時のみ水面上に出るもの)も「国連海洋法条約第13条」により、全部又は一部が本土又は島から領海の幅を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海の幅を測定するための基線とできる。政府は沖ノ鳥島環礁内の元は明確に露岩であった2つを低潮高地(低潮時高地を形成するもの)として島に指定した。

[表1]の海岸線長100m以上の自然島数14,455島と、政府(内閣府総合海洋政策推進本部)が新基準で海岸線長に関わらず新たに「島」としたものには、無論重複が発生する。そこで従来の島基準外であった島(対比表は多数になり割愛するが、確認できた島数)を加えた数が、15,528島になる。

島数の算出には、長崎県・西彼の九十九島のように植生などの「島価値」を付与した数え方もある。島名がついた「世間認知」の極小海「島」も算入可能である。しかし語尾のみでは線引き出来ないほど、岩礁・瀬・根・神・城・バエ等への認識や想いは多様であるので、客観化できる「国土地理院地図に名付け」のもののみを算入した。

分かりやすくまとめると【公表島数(海上保安庁等1982年)】周囲0.1km以上満潮高水位1.0m以上のものを海図から拾い出したもの。


【新定義島】周囲0.1km以上全自然島に加え、内閣府が領海・EEZを外縁づける岩(周囲0.1km未満・満潮高水位1.0m未満を含む)に名を付した基準に準拠する自然島。

【島状地以上】内閣府が指定した、低潮時のみ露出する境界汀線を新定義島に加えたもの。新定義島と名有自然島との差=海図上名有+地元地名(国土地理院地図や海図には未記載)のものがある。

後者の地元知(別名世間遺産)の発信・発掘に期待する。なお名付島を具体名で全て掲載する試みはやはり日本離島センター・編『日本島嶼一覧(改訂版)』以来40年ぶりのことである。

瀬戸内の海島数:島岩礁7,161(名付自然島1,115)+人工島748

瀬戸内の島々については専門家の間では、海上保安部の「周囲0.1キロメートル以上727島」「名前のある島681島」等はよく知られた数値で、5万分の1の国土地理院地形図で数えると約3,000島とされてきた。今回、『新版日本の島事典』海島データベースの作成により、より緻密な数が[表2]のように確認できた。

瀬戸内海には7,161の島岩礁が存在し、自然島は1,115。人工島は掘状運河で本土と一体化したものを除いた「周囲0.1キロメートル以上の人工島」が748も存在する。

人工島比率42.6%は全国屈指の現象であり、新しい瀬戸内像が数値的にも出現した。全国の島のうち24.4%の人工島が瀬戸内にあり、大阪府は100%人工島、福岡県・大分県が各85%・80%、兵庫県では63%、岡山県・愛媛県44%、広島県・香川県36%、山口県34%になる。 

また相対的に名付小島比率が高い。地域知 local knowledgeで記された名前には、単なる形状・色彩などを超えた、関わりあいの深さ(親交)・想い(信仰)・地域資源性(振興)等が刻まれていたりする。文化・伝承・生業の歴史などの掘り起こしにも繋がる糸口でもある。

豊後水道・関門海峡・紀淡海峡で区切られた瀬戸内海は、世界屈指の多島海美の地である。豊饒と神話と信仰の海・島の地であり、縄文時代には陸域であり往時貝塚からは汽水域生息のヤマトシジミも発掘されている。海人・水軍・海軍・北前船文化の地であり、国立公園最初の指定地でもある。

島があり瀬戸が複雑に絡み、灘に奥域ある島文化が育まれてきた。本土と橋で繋がった島々の数(58島)も全国の3割を占めており、「半島状(=架橋された)の島」も、新しい形の「島嶼振興」の一翼として「島嶼振興モデル」イニシアティブが求められる。

景観・産業・文化・歴史・暮らしに色濃く漂う「島嶼性」は「半」端なものではなく、「瀬戸内らしさ」そのものを色濃く体現している。それは地域・全国民・世界の宝である。

国境離島では低潮汀線(満潮時水没する低潮高地の海岸線)の保全が課題であるが、国境離島がない瀬戸内海の島々では、人工島周辺の渚保全が、内海自然環境保全において重要テーマになっている。

離島振興対象外である架橋島・人工島の陸上緑化・海浜保全は、軽視できぬ重みをなす課題であることを示す数値とも言える。

地区別島数の概要

北方四島や竹島・尖閣諸島についてのデータもなかなか更新されない。沖縄・奄美・小笠原についても島数・岩礁・かつての有人島等に関しては、史実もデータも中途半端な扱いであった。

郷土史家の協力などを得て今できる最善の掘り起こしを解説編では試みた。ここではデータのみを示しておく。島国日本の広がりと多様性、加えて海洋国家としての縁辺部の島々の重要性を自覚する上で、それぞれの島の果たすそして果たしてきた役割は実に重い。

また仔細を見ると例えば小笠原諸島には周囲100m未満のEEZ外縁島15・領海のみ外縁島21島もある。小島といえども侮るなかれである。

* 与那国島トウイシは保全地域に指定されているが国土地理院地図に地名記載されたので島扱いとした

島毎の知見の整理

島国日本の全容がもっと知りたいという読者も多いであろう。
『日本ネシア論』(藤原書店/2019年)では、100+1名が、島々からの視座で現況認識に立つ諸論を展開した。『新版日本の島事典』では、本格的に年表も作成した。島の全容というより、奥深く幅広い島事実の一端にすぎないが、既往知のイントロ的整理は不可欠である。

島嶼一覧等の民間での開示開始努力は、まず島数については1957年に山階芳正・宮本常一・柳田國男ら島嶼社会研究会員により3639島が提起された。島名毎のデータ開示は『日本島嶼一覧(改訂版)』(日本離島センター 編/1982年)で4,917島が示された。それを踏まえて刊行されたのが『島嶼大事典』(日外アソシエーツ/1991年)、『日本の島事典』(三交社/1995年)。有人島解説に関しては『離島振興30年史(下巻)』(全国離島振興協議会/1990年)で地誌的・行政史的整理の第一段がなされた。しかし昭和期のうねりは中断し、平成期の継続努力は日本離島センター『シマダス』『日本離島統計年報』以外は、部分的かつ断片的であった。

無人島になると、その情報はさらに限定的であった。国の無人国境離島指定等の動きを受け2019年刊行の新『シマダス』(日本離島センター)は無人島を多く扱い、画期的であった。加えてオンライン辞書・事典検索サイト『ジャパンナレッジ』等で提供される事典類等も増え、国土地理院地図情報も写真計測等での精緻化やデジタル情報公開が進み、既往知の確認も作業難度も改善した。

こうして40年(『日本の島事典』に関しては27年)の中断を経て平成期の動きも盛り込んだ事典内容・数値を刷新する好機が訪れた。無人島統一比較項目はじめ、有人島では社会変動を確認できるデータも加えてみた。

今回は時間的制約で省いたが、希望があれば市町村単位での島数の集計も可能である。残された課題は、島側からの無名島扱いの解消と島岩礁郷土地誌の掘り起こし、学び手集団による海図データも含んださらなる探求、追加的で意欲的なデータベースづくりと、それらの共有システム化である。

離島経済新聞 目次

寄稿|長嶋俊介・日本島嶼学会参与

長嶋俊介(ながしま・しゅんすけ) 鹿児島大学名誉教授。佐渡生まれ育ち。島をライフワークに公務員・大学人(生活環境学⇒島の研究センター)・NPO支援(前瀬戸内オリーブ基金理事長)。カリブ海調査中の事故(覆面強盗で銃創)で腰痛となり、リハビリでトライアスリートに。5感を大切に国内全離島・全島嶼国を歩き、南極や北極点でも海に潜った。日本島嶼学会を立ち上げ、退職後は島ライフ再開。島学52年。佐渡市環境審議会会長・日本島嶼学会参与(元会長)。著書に『日本ネシア論』『世界の島大研究』『日本一長い村トカラ』『九州広域列島論』『水半球の小さな大地』『島-日本編』など

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