拾えども拾えども島に押し寄せ続ける海洋ごみ。特に人口の少ない島々では人手や資金不足、搬出の問題など多様な課題を抱えています。
そこで離島経済新聞社では、有人離島の6割以上を占める人口500人未満程度の小規模離島の海洋ごみ問題を考えるオンラインコミュニティ「小規模離島の海ごみ問題を考える会」を設立。
2022年11月には、3つの先進事例と3島の現状や取り組みを共有するオンライン勉強会を開催しました。そこで語られた現状やアイデアの一部を紹介します。
※このプロジェクトは日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて実施しています。
※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
ゲスト出演者
金城由希乃(きんじょう・ゆきの)さん
沖縄市出身。「サンゴに優しい日焼け止め」の企画販売や、地域とビジターを繋ぎ海岸清掃を行う「プロジェクトマナティ」を立ち上げ、地域の人と繋がりながらいつでも気軽にクリーンアップできるプロジェクトを展開
宮坂大智(みやさか・だいち)さん
村おこしNPO法人ECOFF代表理事。国内外の離島や農山漁村で「住み込み型ボランティア」ツアーを主催。創業から延べ2,600人の若者が参加する同ツアーでは、海洋ごみ清掃を含む多様なボランティア活動が行われている
松本友哉(まつもと・ともや)さん
合同会社とびしま業務執行社員。UIターンと「合同会社とびしま」を設立。近年は飛島のオンラインコミュニティ「Cloud Island」構想を推進。海洋ごみと戦う「飛島クリーンアップ作戦」や海洋ごみ回収ロボットの開発などに携わる
地島(じのしま|福岡県)
発表者・宗像市元気な島づくり課 内野由太(うちの・ゆうた)さん
周囲9.3キロメートル。人口約130人。2003年にスタートした離島留学が人気。海洋ごみ清掃の一部で島外人材の協力も得ているが、人手・費用の不足や島外搬出など課題が残る。
魚島(うおしま|愛媛県)
発表者・愛媛県上島町地域おこし協力隊 佐藤滉治(さとう・こうじ)さん
周囲6.5キロメートル。人口約120人。因島の土生港から魚島港まで船で約60分。公民館活動として海洋ごみ清掃を行っているが、人口減少や高齢化による人手不足が深刻化している。
浮島(うかしま|山口県)
発表者・周防大島町生活衛生課 大谷快(おおたに・かい)さん
屋代島さとうみネットワーク 田中貞徳(たなか・さだのり)さん
周囲6.8キロメートル。人口約180人。水産業が盛んな浮島では海洋ごみ清掃も漁協が中心となり実施。費用不足や海洋ごみにより魚が傷つくなどの問題を抱えている。
【後編】ごみ拾いロボットも開発!飛島のユニークな海洋ごみ対策
続いて、小さな島の海洋ごみ問題に対してヒントとなる先進事例を紹介したいと思います。
まずは「プロジェクトマナティ」を推進する金城さん、お願いします。
阿嘉島(あかしま|沖縄県)や久米島(くめじま|沖縄県)などの離島を含む沖縄県内100カ所以上で、ビジターがワンコインでごみ拾いに参加できる仕組みの導入を進めています。
ごみはパートナー店舗などで処理していただくので、地域側で準備やごみ処理の手間がかからないのが特長です。導入も無料です。
「受け入れ側」としてプロジェクトマナティに参画するのは個人でも可能なのでしょうか?
電話やメールなどでの受付が可能であれば個人でも大丈夫です。実際に波照間島(はてるまじま|沖縄県)では主婦のグループが窓口になり、携帯電話で受付をしてくださっています。
また、地域の事情に合わせて処理のしやすいごみに限定して集めていただくなどのルールづくりも自由にしていただけます。
ごみ拾いに参加することで地域の方とのコミュニケーションも生まれるので旅も充実しそうですね。
次は、学生を対象に国内外の離島や農山漁村で海岸清掃を含む「住み込み型ボランティア」ツアーを主催しているECOFFの宮坂さんにお話を伺いたいです。
学生を中心とした参加者が参加費を払い、現地側の費用負担がない「村おこしボランティア」として各地域に10日間滞在して活動しています。
これまでの11年間の活動で、関わった離島は30地域になりますが、ほぼ全てが海洋ごみ問題に直面していました。
北海道の焼尻島(やぎしりとう)や奥尻島(おくしりとう)、広島県の江田島(えたじま)、沖縄県の渡嘉敷島(とかしきじま)などで海岸清掃ボランティアを行っているほか、2018年のタンカー沈没事故で重油が流れ着いた鹿児島県の宝島(たからじま)では、重油回収作業を実施し51名の方に参加いただきました。村おこしボランティアと海岸清掃は相性が良いと感じています。
ちなみに、私の暮らす台湾の離島ポンフーでは、本島だけでなく無人島の海岸清掃を実施したり、浜辺に設置したネットにごみを集める仕組みも取り入れています。
村おこしボランティアは、世話人と宿泊場所がそろえば受け入れができるそうですね。
小さな島では人口14人程度の屋形島(やかたじま|大分県佐伯市)でも受け入れがあるそうなので、希望される地域の方は宮坂さんまでお問い合わせください。
最後に、山形県酒田市の飛島(とびしま)で活動する合同会社とびしまの松本さんにお話しいただきます。
平均年齢71歳と高齢化の進む飛島に移住して、島の自然や歴史文化、暮らしを継承していくための合同会社を立ち上げました。
活動の一環で、島外ボランティアと海岸清掃を行う「飛島クリーンアップ作戦」や、山形県内の親子を対象に海洋ごみ問題を学ぶ環境教育プログラム「とびしまクリーンツーリズム」を実施しています。
島のいい部分だけを見せるのではなく、海洋ごみというネガティブなものも扱うことで独自のツアーができたと思います。
また、コロナ禍で島外ボランティアの受け入れが難しくなったことをきっかけに、島外の教育機関や企業と協力し、海岸から道路までバケツリレーしていた海洋ごみを自動で運搬できるロボットも開発しました。
島内外のつながりと知恵で海洋ごみ問題の解決へ
海洋ごみの問題を解決するためには、島の内外の人がつながることが大切だと思います。
参加者からの事前アンケートでは「島内の意識改革が課題」との意見もありましたが、その点はいかがでしょうか?
まずはテーマを定めて集まり、活動プロセスを共有する中で仲良くなるのが基本かなと思います。活動を続けていれば意識が変わる人も現れるのではないかと思います。
楽しい雰囲気で活動するのは大事ですね。台湾は行政からの支援が多いのも特徴です。離島のポンフーのイベントでも、台湾本島からの参加者が半分くらいいます。
私たちの場合、地域の人たちの笑顔がモチベーションになっていますが、地域の方にとってもビジターの協力が励みになるようです。
海洋ごみ問題は一朝一夕に解決できるものではないため、たくさんの人手や資金、アイデアが必要となります。
「小規模離島の海洋ごみ問題を考える会」でも引き続き、情報やアイデアの共有を行っていきたいと思います。
アーカイブ動画を限定公開中!
オンラインイベント「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」の様子をYoutubeで公開しています。(2023年5月31日まで)お申し込みいただいた方に、視聴用URLをお知らせします。
>>お申し込みフォーム
参加しませんか?
Facebookグループ「小規模離島の海ごみ問題を考える会」
人口規模の少ない離島地域が世界規模の課題に立ち向かうためには、多くの仲間が必要です。私たちと一緒に「サポーター」として島の海洋ごみ問題について考えていきませんか。読者の皆さまの参加をお待ちしております。
>>Facebookグループ「小規模離島の海ごみ問題を考える会」
【「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」概要】
内容:2022年度に離島経済新聞社が実施した小規模離島地域の実態調査より、課題を抱える3地域の実情を共有。海洋ごみ清掃に関する先進事例の紹介や意見交換を実施
日時:2022年11月25日(金)13:00~15:00
開催場所:Zoom MTGによるオンラインイベント
参加人数:170人(リアルタイム70人/アーカイブ動画視聴100人)
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/