つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

特集【きれいな島をいつまでも】では、「きれいな島がいつまでも続くように」という願いを込めて、島のごみについて考えていきます。今回は、人口約230人の阿多田島で行われた、実証実験の様子をお伝えします。

約140島の有人島が多島美を織りなす瀬戸内海には、外洋から流れ着く海洋ごみは少ないものの、年間4,500トンもの海洋ごみが発生しているといわれます。小規模離島も多く、島だけでは対処できない海洋ごみ問題の一助となるべく行われた実証実験にご注目ください。

※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

2022年秋、広島県の阿多田島(あたたじま)で海洋ごみを“一掃”する実証実験が行われた。主催は「瀬戸内オーシャンズX」。日本財団と広島・岡山・愛媛・香川の瀬戸内4県が共同し、瀬戸内海へのごみの新規流入量を7割減・回収量1割以上増を目指す包括的海洋ごみ対策プロジェクトだ。この日、一掃されるのはフロート(発泡スチロール製の浮き)や大型のプラスチックごみなど。

風光明媚な瀬戸内に浮かぶ阿多田島

人口約230人の阿多田島ではそれまでにも、地元漁協や住民の手により熱心な清掃活動が行われてきた。しかし、集落の外れにある使われなくなった海水浴場には、北風の影響により多くの漂着物が流れ着くため大量のフロートやごみが堆積。

車でも近づきにくく、住民だけでは処理が難しい状況にあったところ、島の現状を知った関係機関との出会いを経て、今回の実証実験に至った。実証実験で検証されるのは、人の立ち入りが難しい場所に漂着した海洋ごみの回収をいかに効率的に一掃できるかだ。

左:港近くには海洋ごみが入れられた拾い箱も。島の住民は日常でも清掃活動を行なっている/右:巨大なフロート(手前)と桟橋がない場所でも陸揚げが可能という上陸用船舶(写真右奥)

実験が始まると、貨物運搬やビーチクリーンに使用される特殊車両などが、上陸用船舶に積載されて阿多田島に上陸。フロートをその場で圧縮することのできる「減容装置」や砂とごみを分ける「風力分別機」も運び込まれ、漁業関係者や海上災害防止センター隊員など約200人で、約350メートルに渡って散乱するごみをバケツリレー形式で船に運び、計約1.2トンの海洋ごみが一掃された。

回収・処理されたフロートはこの日だけで400本にのぼる。そのままでは運搬の労力やコストがかさむが、減容装置を使い10分の1に圧縮すれば労力・コスト共に削減できる。島では回収・処理できない海洋ごみにいかに立ち向かえばいいか。阿多田島での実験が美しい海や島を守る良策に発展することが願われる。

左:海岸で集められたフロートは、卸売市場や工場で用いられているプラスチックの減容装置にかけられ、その場で破砕される/右:破砕されたフロートはこのあと10分の1に圧縮され島外に搬出された

特集記事 目次

特集|きれいな島をいつまでも ごみについて考えよう

最近、島に「ごみ」が増えていると感じませんか?
あちこちの海辺や、人が立ち寄らない隠れた場所にもう、どうにも隠れきれなくなったと言わんばかりに佇むごみ。
島の人々は口々に「昔はそんなになかった」と言います。ごみと呼ばれるものが自然界に存在しないとすれば、それはすべて、人の営みと価値観から生まれたものといえるでしょう。
この特集では、「きれいな島をいつまでも」という願いを込めて島のごみについて考えていきます。

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