つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

そもそも何が「ごみ(廃棄物)」と呼ばれているか知っていますか?廃棄物処理法では「自ら利用したり他人に有償で譲り渡したりすることができないために不要になったものであって、例えば、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿等の汚物又は不要物で、固形状又は液状のもの」がごみとされています。ごみは「一般廃棄物」と「産業廃棄物」のふたつに分けられますが、島には「海洋ごみ」も多く存在します。

特集【きれいな島をいつまでも】では、「きれいな島がいつまでも続くように」という願いを込めて、島のごみについて考えていきます。

※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

ごみの種類

一般廃棄物
産業廃棄物以外の廃棄物を指す。し尿のほか、主に家庭から発生する家庭系ごみ、オフィスや飲食店から発生する事業系ごみも含まれる。

ポイント
●2020年の総排出量は4,167万トン(東京ドーム約112杯分)
●資源化されたごみは833万トン、埋め立て等の最終処分量は364万トン
●1年間にかかるごみ処理費用は約2兆1,290億円(国民1人当たりに換算すると約1万6,800円)で前年度に比べて増加傾向
●2020年度末時点の一般廃棄物の最終処分場は全国に1,602施設。満杯になるまでの残余年数は全国平均で22.4年
※ 参考資料:環境省『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和2年度)について』(2022/3/29)

処理方法
市町村によって分別回収が行われている。「不燃ごみ」「可燃ごみ」「資源ごみ」などに大別され、焼却施設や粗大ごみなどを破砕する施設、堆肥化などを行う施設などで中間処理され、資源化もしくは最終処分される。分別や処理方法は市町村によって異なり、島内で処理できない島では本土側の処理施設へ輸送される。

産業廃棄物
事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令で定められた20種類と、廃棄物処理法に規定する「輸入された廃棄物」を指す。

ポイント
●法令で定められた20種類は燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残渣、動物系固形不要物、ゴムくず、金属くず、ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず、鉱さい、がれき類、動物のふん尿、動物の死体、ばいじん、輸入された廃棄物、上記の産業廃棄物を処分するために処理したもの
●1年間の排出量は約4億トン前後で推移
●1年間の排出量は3.86億トン(2019年)で前年度に比べて712万トン増加
※ 参考資料:環境省『産業廃棄物の排出・処理状況等(令和元年度実績)』(2022/2/15)

処理方法
産業廃棄物は原則として、排出事業者が責任を持って処理しなければならない。自ら処理できない事業者は産業廃棄物処理業の許可を持つ処理業者へ委託する。「循環型社会形成推進基本法」「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」などの法律に従い、産業廃棄物を正しく分別・保管し、収集・運搬、中間処理、再生処理・最終処分が行われる。

海洋ごみ
海岸に漂着する「漂着ごみ」、海に漂う「漂流ごみ」、海底に堆積する「海底ごみ」を指し、特に自然界では分解されないプラスチックごみが問題となっている。

ポイント
●生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響等、さまざまな問題を引き起こしている
●マイクロプラスチック(直径5mm以下の微細なプラスチックごみ)は世界的な問題
●海洋のプラスチックごみは2025年までに推定2億5000万トンに達する見込み
(参照・国際環境NGO「環境調査エージェンシー」)
●海岸線の長さでは世界6位規模の日本の沿岸地域に、どれだけの海洋ごみが存在するのかは不明

処理方法
市町村などの地方公共団体が行う清掃事業や、ボランティア団体によるビーチクリーンなどにより回収・処理が行われている。海岸漂着物処理推進法や海洋プラスチックごみ対策アクションプランなどの関係法令等に基づき、地方公共団体への財政支援や、処理費用の一部が補助されているが、増え続けるごみに対して対策は追いついていない。

もっと知りたい人にはこちらの情報もおすすめです。
>>産業廃棄物の基礎知識「学ぼう産廃知識」(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)https://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/index.html
>>廃棄物処理に関する法令・制度等、一般廃棄物・産業廃棄物に係る各種施策(環境省)https://www.env.go.jp/recycle/waste/index.html
>>プラスチックを含む海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)対策(環境省)https://www.env.go.jp/water/marine_litter/index.html

カラスは伝えたい 島特有のごみ問題と静脈物流

四方を海に囲まれる離島地域には、ごみについても特有の問題があります。ここでは、カラスが紹介したい「高額な処理費用」と「静脈物流」について紹介します。

都市部に比べて4〜5倍?!島が負担するごみ処理手数料

2022年11月、奥尻島(おくしりとう|北海道)の広報誌『広報おくしり』に高額なごみ処理費用についての紹介記事「奥尻町の廃棄物処理状況等に関するお知らせ」が掲載された。

奥尻町では、大きく「燃えるごみ」「燃えないごみ」「資源ごみ」の3種類に分類され、ごみ処理が行われている。「燃えるごみ」は環境センターで焼却処理され、「燃えないごみ」は不燃物埋立処分場で埋立処理、「資源ごみ」は本土側の処理業者へ引き渡し、再資源化(リサイクル)されている。

本土側では、ごみ処理事業を周辺市町村と連携した広域処理を実施し、費用負担の削減に務める市町村が目立つが、奥尻町は離島であるがゆえ、ごみ処理事業は町単独で行っている。

そのため、奥尻町と他市町村との1人当たりのごみ処理費などを比較した町民1人当たりのごみ処理費用(表)をみると、札幌市に比べて4〜5倍もの費用がかかっていることが分かる。

まず、小規模離島では焼却施設の導入や維持管理にかかるコストが割高になり、島外の市町村と連携した広域処理を行うにも搬出費用や委託費用が必要になる。

奥尻町と他市町村との一人当たりのごみ処理費などを比較した町民一人当たりのごみ処理費用
※ 令和2年度環境省一般廃棄物処理実態調査結果より抜粋

リサイクル施設を抱えることも簡単ではないため、ごみ問題の解決に重要な「3R(ごみを減らすリデュース、繰り返し使うリユース、再資源化するリサイクル)」でも、島内で行えないものは島外搬出が必要になるため、やはり費用がかかる。

奥尻町では、高額なごみ処理費用の背景を伝えるとともに、各家庭に対してごみの減量化への理解や協力を求めながら、ごみ処理費用の削減を目指しているが、ごみ問題はどの島に暮らす住民にとっても重要な問題。離島地域ならではの根本的な問題として知っておきたい。

ごみ問題を考えるために知っておきたい「静脈物流」

島特有のごみ問題を知るためには「静脈物流」というキーワードにも関心を寄せたい。物流の流れを血流になぞらえた表現で、ものが生まれて消費されるまでの流れは「動脈物流」、ものが返品・回収・廃棄または再生されるまでの流れは「静脈物流」と呼ばれ、廃棄物処理業やリサイクル業などは「静脈産業」とも呼ばれる。

参考資料:財団法人九州運輸振興センター「鹿児島離島における静脈物流ネットワークのあり方に関する調査研究」(平成17年度)

島のごみを島外に運ぶ静脈物流は、対象となる島の市町村や都道県、処理事業者、航路などの事情により回収方法はさまざまだが、本土と橋でつながらない島では特に、海上輸送費が重荷となる。

海上輸送費の一部は、離島振興法などの島の暮らしを支える法律や各種法律により補助されているが、それでも「本土に比べ輸送代が余分にかかる」「リサイクルで得られる利益を運搬コストが上回ってしまう」「リサイクル料金が払えない家庭では自宅敷地内に放置されている」などを理由に、静脈物流に乗りきれないごみ(一時保管・不法投棄・退蔵など)が発生する状況にある。

きれいな島がいつまでも続くためには、動脈物流と静脈物流がバランスよく巡ることが重要。そのためには、「共同輸送などの効率的な輸送」「特別に配慮した海上運賃の設定」「手続きの簡素化」など、島の人口規模や地理的条件に合わせた静脈物流システムの構築と、人の営みから発生するごみを抑制する知恵や努力が重要だ。

特集記事 目次

特集|きれいな島をいつまでも ごみについて考えよう

最近、島に「ごみ」が増えていると感じませんか?
あちこちの海辺や、人が立ち寄らない隠れた場所にもう、どうにも隠れきれなくなったと言わんばかりに佇むごみ。
島の人々は口々に「昔はそんなになかった」と言います。ごみと呼ばれるものが自然界に存在しないとすれば、それはすべて、人の営みと価値観から生まれたものといえるでしょう。
この特集では、「きれいな島をいつまでも」という願いを込めて島のごみについて考えていきます。

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