国内約400島の有人離島のうち、人口500人未満の小規模離島は63パーセントにのぼります。2022年、離島経済新聞社では小規模離島101島へのアンケート調査を実施。
その後、先進的な取り組みを行う島や課題を抱える島など、10地域で行った現地調査の一部をレポートします。
※このプロジェクトは日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて実施しています。
※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
1. 飛島(とびしま|山形県)
20年におよぶ海洋ごみとの戦いで関係人口やアイデアが生まれた飛島
かつて海岸線に4メートルもの海洋ごみが堆積したことをきっかけに、島外と連携した「飛島クリーンアップ作戦」をスタートさせた飛島。
特筆すべきは海洋ごみ問題が島に関係人口を生むきっかけにもなっていることだ。クリーンアップ作戦の運営や参加をきっかけに移住者やリピーターとなった人も少なくない。
2022年には、本土側の企業や高専と共に開発した海ごみ運搬ロボットの実証実験も行われるなど、注目すべきアイデアも次々に生まれている。
2.網地島(あじしま|宮城県)
行政の支援不足が問われる高齢化が進む島の海岸清掃
東日本大震災の復興時にも行政による対応の遅れが指摘された網地島では、海洋ごみ対策においても対応不足が問われている。
現在、住民による海岸清掃は有償ボランティアとされているが、高齢化が進む島では人員も集まりにくい。島外からのボランティア受け入れも行っているが、ボランティアのお世話が必要な場合は受け皿が不足する。
島にはもともと、生活環境を良くするため自主的に活動する住民が多かったことから、行政側からは「島側でできる」という認識を持たれやすく、行政担当者の人事異動も影響し改善が進みにくいという。
3.菅島(すがしま|三重県)
本土側から流れ込むごみも多い伊勢湾 実情を伝えられる環境学習も検討
普段は地元漁協や学校運営協議会などが清掃活動を実施する菅島。流木などの大型ごみは1983年に菅島で起きた事故をきっかけに縁が続く航空自衛隊小牧基地が回収・処理を手伝う。
悩みは海苔に付着するマイクロプラスチックの増加や、増え続けるごみの保管や搬出が難しくなること。
伊勢湾に浮かぶ菅島には、愛知・岐阜・三重の河川から流れ出たごみも多いため、本土側の人々に実情を伝えられるよう環境学習になるボランティア活動の受け入れも検討している。
4.千振島(ちぶりじま|香川県) ※ 無人島
「ゆるく長く楽しく」続けたい 有志が集い町内の無人島を清掃
小豆島(しょうどしま|香川県)の土庄町では10人弱が集う有志団体「ハートフルゴレンジャー」が、町内の無人島清掃を行っている。
牡蠣養殖に使われるパイプや発泡スチロール、ペットボトルなどが漂着し、1回の清掃で多い時には20袋(90リットルのごみ袋)ほどを回収。
活動には個人所有の漁船が使われ、参加者から徴収する参加費1,500円を昼食代や船舶のガソリン代に充てられる。主催者はこうした活動が長く続くよう、無理なく楽しく続けることを目指している。
5.魚島(うおしま|愛媛県)
住民による清掃活動は行われるが処理困難物が置いたままに
魚島では役場や地元漁協の若手を中心に活動する元気な島づくり実行委員会はじめ、教育振興会ほか島内の各団体が清掃活動を行っている。
目立つごみは発泡スチロール、ペットボトル、空き缶、袋類、流木などで、台風通過後は特に多くのごみが集まる。
島内のごみは週1回、上島町の委託業者が弓削島(ゆげじま|愛媛県)まで運搬しているが、大きな流木などの運搬困難物は魚島クリーンセンターの敷地などに置いたままになっている。
>>小さな島の海洋ごみ問題 101島+10地域調査で見えてきたこと【特集|ごみについて考えよう】(後編)に続く
>>101島アンケートの調査結果はこちらからもご覧いただけます
https://ritokei.com/shizen/26972
※同調査は該当地域の海洋ごみ問題に携わる、行政担当者・自治会・ボランティア団体等にご協力いただき、2022年6月〜11月にかけて実施しました。ご協力いただいた皆さまに感謝を申し上げます
日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
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