つくろう、島の未来

2024年12月07日 土曜日

つくろう、島の未来

国内約400島の有人離島のうち、人口500人未満の小規模離島は63パーセントにのぼります。2022年、離島経済新聞社では小規模離島101島へのアンケート調査を実施。
その後、先進的な取り組みを行う島や課題を抱える島など、10地域で行った現地調査の一部をレポートします。

※このプロジェクトは日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて実施しています。

※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

6. 高井神島(たかいかみしま|愛媛県)
高齢化率の高い7人の島 海洋ごみ清掃まで手が回らない

冬季には北風の影響でペットボトルや流木が集まるという高井神島では、毎年、弓削商船高専の生徒が海岸清掃に訪れる。

ほかにも愛媛県内のボランティアグループも清掃に来ていたが、コロナ禍で激減。高齢化率も高く、わずか7人の住民では海洋ごみの清掃まで手が回らない状況にある。

2023年度に高井神小中学校が廃校となることから、同施設を島の関係人口が集える場とできないかと期待されている。

7.浮島(うかしま|山口県)
漁協が底引き網で海洋ごみを回収 仕分けは青年部がボランティアで担当

漁業が盛んな浮島では山口県漁業協同組合浮島支店が中心となり、底引き網での海底清掃を行っている。

引き上げられるごみは、可燃物や金属、発泡スチロール、タイヤ、自転車など多岐に渡り、年2〜3回の活動でフレキシブルコンテナバッグ50袋以上が回収される。

回収・運搬費用は町の予算になるが、手作業でごみを仕分ける作業は漁協青年部がボランティアで行っている。活動予算も常態的に不足しているのが現状だ。

8. 地島(じのしま|福岡県)
企業と連携した清掃活動をきっかけに外部との連携ニーズが高まる

地島では地元漁協や区長、学校長などで組織される元気な地島づくり協議会が中心となり、海岸清掃が行われている。漂着ごみには国内外のペットボトルや家庭ごみ、発泡スチロールや漁具が目立つ。

悩みは住民の高齢化による人手不足や回収したごみを運搬できるフェリーの運航が月2回に限られるため、ごみの搬出が難しいこと。

2022年には湖池屋と連携した大規模な清掃活動を実施し、130人体制で計2トンを清掃。この実績を受け、島内では外部と連携した中規模な清掃活動のニーズが高まっている。

9. 高島(たかしま|長崎県長崎市)
シュノーケリングピクニックで年間1,000人以上が海洋ごみを回収

ペットボトルや釣り客による釣り針・釣り糸などのごみが多くみられる高島では、市民活動団体「やったろう de 高島」や高島振興協同組合が海水浴場の清掃活動を実施。

やったろう de 高島では、4〜10月に多種類の珊瑚や熱帯魚など豊かな海中景観を楽しめる「シュノーケリングピクニック」を実施。昨年は年間1,672人、のべ1万人以上が参加している。

リピーターも多いという参加者は福岡県をはじめ県外が多く、長崎市内の小・中学生の体験・研修先としても選ばれている。

10. 野甫島・伊平屋島(のほじま・いへやじま|沖縄県)
村が負担する海洋ごみの一部に環境協力税(入島税)を活用

人口90人の野甫島の海岸清掃は、橋でつながる伊平屋島と合わせて伊平屋村が担っている。海岸清掃には国の補助(8割)を活用し、処理・運搬にも補助(9割)を活用している。

回収される漂着ごみ(年間50トン以上)は産業廃棄物として取り扱われ、すべてが沖縄本島へ搬出・処理される。村負担となる費用には旅客船などで伊平屋村に入域する際に徴収される環境協力税100円(※)の一部を活用。

子どもを含む島内のボランティア活動も行われているが、人材不足が目下の悩みだ。
※障害者、高校生以下は課税免除

>>101島アンケートの調査結果はこちらからもご覧いただけます
https://ritokei.com/shizen/26972

※同調査は該当地域の海洋ごみ問題に携わる、行政担当者・自治会・ボランティア団体等にご協力いただき、2022年6月〜11月にかけて実施しました。ご協力いただいた皆さまに感謝を申し上げます


日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

特集記事 目次

特集|きれいな島をいつまでも ごみについて考えよう

最近、島に「ごみ」が増えていると感じませんか?
あちこちの海辺や、人が立ち寄らない隠れた場所にもう、どうにも隠れきれなくなったと言わんばかりに佇むごみ。
島の人々は口々に「昔はそんなになかった」と言います。ごみと呼ばれるものが自然界に存在しないとすれば、それはすべて、人の営みと価値観から生まれたものといえるでしょう。
この特集では、「きれいな島をいつまでも」という願いを込めて島のごみについて考えていきます。

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