つくろう、島の未来

2022年12月06日 火曜日

つくろう、島の未来

近年、美しい島の景観を汚す「海ごみ」が増えています。人の営みから排出されるごみが海へ流れ出し、漂流・漂着する海ごみ問題は、地球規模の課題として問題視され、日本の沿岸地域でも多様な清掃活動が行われています。そんななか、人口わずかな島々は海ごみ問題にどのように立ち向かっているのか?実態を調査すべく約100島を取材しました。

※この記事は『季刊ritokei』39号(2022年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

どうやって解決する?小さな島の海ごみ問題

海辺に散乱するペットボトルやプラスチック片、ビニール袋に注射器、波消しブロックの隙間に入り込んだ漁具や発泡スチロールなど、年々と増加する「海ごみ」が沿岸地域の美観を脅かしています。

国内各地で大規模な清掃活動が行われるなか、人口わずかな小規模離島地域では、どのように清掃活動を行なっているのか。離島経済新聞社では日本財団「海と日本プロジェクト」との共同で、2022年6月から8月にかけて小規模離島(人口規模は数名から500人程度未満)を取材しました。

人手不足・資金不足・ごみの島外搬出費用等に悩む島々

有効回答のあった101島のうち、海ごみの清掃活動を行なっていたのは76島。8割近い島で清掃活動が行われていた一方、高齢者率が高く、行政機関が立地しないなどの理由により、海ごみ清掃の実態そのものが把握されていない地域も1割程度存在しました。

清掃活動のある島々でも、人手不足や資金不足などさまざまな問題に頭を抱える実態が見えてきました。人手不足の問題では、高齢化により海ごみを拾える住民が不在である島や、コロナ禍によりボランティアの受け入れを中止せざるを得なかった島などがあり、資金不足の問題では、ボランティア受け入れのための交通費の捻出や、島内で処理できないごみの島外搬出費用の負担が重たく、清掃活動を拡大できない島が多くありました。

海ごみ回収箱を設置する島やボランティアを受け入れる島も

一部の島では、観光などで訪れた来島者がごみを拾うためのごみ袋や回収箱を設置するなど、日常的に海ごみを拾えるアイデアを実践。

社会貢献を目的にした企業や大学サークル等によるビーチクリーン活動を定期開催するなど、活動に力を入れる島もありますが、拾っても拾っても流れ着くのが海ごみ。有効な打開策が見つからない中、海ごみ問題に立ち向かい続けるには人手や資金、仕組みなどを補強することが重要です。

多くの島が島外からの支援を希望

今後、海ごみ清掃活動の拡大を希望する島々に、民間企業や団体、社会人や学生ボランティアなどの協力が得られる場合に希望するか尋ねたところ、9割が受け入れを希望しました。

人口わずかな島では、島外ボランティアの受け入れそのものが容易でない島も多くありますが、美しい海と島々を守るためには、清掃活動の活性化が重要。離島経済新聞社では引き続き実態調査を行い、海ごみ問題に取り組んでいます。

【アンケート回答(一部抜粋)】

調査概要:調査対象島および対象者:人口概ね500人以下の小規模離島(101島)を管轄する行政の担当課職員または自治会長、漁協や学校関係者など
調査方法:電話・FAX・メール・オンライン回答フォームを使用した聞き取り調査
調査期間:2022年6〜8月

Q1 お住まいの島で海ごみの清掃活動を行なっていますか?

「はい」の具体例

●公民館活動として海岸清掃を定期実施

●海開き前に学校関係者が清掃活動を実施

●地域の地縁団体と島内に事業所を持つ企業が協力して定期的に清掃活動を実施

●都道県による委託事業、国の直営事業、漁協受託事業などの海岸管理として清掃を実施

実施主体や団体は?
地元および国や県などの行政機関、自治会(青年団・子ども会・公民館活動等)、ボランティア団体(環境保護団体や学生団体、島外企業など)、学校関係者(児童生徒、保護者を含む)、まちづくり団体、漁業従事者や観光事業者、委託業者など

「いいえ」または「把握していない」理由

●住民は草刈りなど集落の清掃活動で手一杯なので漂着ごみまで手が回っていない

●遠隔地にあり、清掃活動を行おうにも協力者がいない。また、島に住んでいる世帯も数える程しかおらず、皆が高齢者である

●コロナ禍以降は清掃活動を行っても島外の搬出や処分方法が難しいので行っていない

●ビーチが少なく漁港が多いため

●やってもきりがないうえに人手がない

Q2 海ごみ清掃活動を今後拡大したいですか?

Q3 民間企業や団体、社会人や学生ボランティアなどの協力が得られる場合、希望しますか?

※ Q2で「はい」と答えた地域のみ回答

Q4 海ごみ清掃活動に島外からの協力者は参加していますか?

※ Q1で「はい」と答えた地域のみ回答

「はい」の具体例

●来島した観光客が、久高島離島振興総合センターでごみ袋をもらい、海岸やその付近のごみ拾いを行う。ごみを拾いながら海岸から上がると道があるので、ごみが溜まったら道においておくと島内の役員や委託された人がごみを回収し仕分け、沖縄県南城市に搬出する

●黒島(沖縄県竹富町)においては、回収ステーションを海岸に設置し、いつでも誰でも漂着物を回収できるよう取り組みを行っている。分別表を作成する等、ボランティア団体が管理を行っている

●伊吹島(香川県観音寺市)は浜辺がなく崖ばかりのため、一般市民参加型の清掃活動は実施していないが、水産庁の「水産多面的機能発揮対策」として、伊吹島の漁業者団体が主体となって伊吹島における漂流・堆積ごみの回収処理を行っている

●前島(岡山県瀬戸内市)では牛窓ウォータートレイルのエコロジーディスカウントとして、ツアー参加者がごみ拾いするとツアー料金から300円引きしている

●愛媛県松山市の離島(二神島、野忽那島、中島、興居島、釣島)ではNPO団体松山北高校興居島ボランティアチームが主催、企画し、島嶼部での海岸清掃活動や定期的な海岸状況調査を実施

「いいえ」または「把握していない」理由

●新型コロナウイルスの影響による活動自粛

●清掃活動を行うNPOから協力の打診があったがコロナ禍のため実現していない

●島外からの参加者に対し交通費等を工面できない

●人手は募集すれば集まると思うが、回収したごみの処理(島外への搬出)に費用がかかり難しい

●定期的にやろうと思っても、変則的な日常や仕組みの弱さによりなかなか続かない

●自治会で必要と考えていない

Q5 海ごみ清掃活動に関する悩みは?

※ 各地域がそれぞれ複数回答

●ボランティア以外では環境省の補助金を活用し回収・処理しているが、四方を海に囲まれた離島では漂着ごみが大量に打ち上げられるので、補助金の増額を要望する

●ごみが増えたのはここ25年程、ごみを無くしたいので一緒に清掃してくれる人がいればありがたい

●きりがない。清掃しても2週間で元に戻る。国や県にもっと力を入れてほしい。1年間通しての仕事として事業化してほしい。雇用環境ができれば移住定住にもつながります

●島内での海ごみ清掃活動は、地域住民の自主的な活動により実施しているが、ごみの運搬面における課題もあり、対処に苦心している。今後も地域での活動を持続させてゆくことと合わせて、行政、とりわけ海を管理する県がもっと主体的に対策を実施することで、より効果的な清掃活動が期待できるものと考える

●島内の浜は広いので、島内だけで行うには人手が足りないし、搬出まで一緒にやってもらえると助かります

●沖縄県竹富町では現在、漂着物は各島々から石垣島の処分業者に処分をお願いしていますが、活動にきりがなく、いつ限界を迎えてもおかしくない状況。埋め立て処分しかできない現状ではいつの日かごみの島になってしまう。再資源化に係る施設整備等まで今後を見据えた取り組みが必要だと考える。市町村だけでなく、国も一緒になって取り組んでいただきたい

●収集した海ごみは処理施設へ自己搬入する必要がある。市の処理施設へ無料で持ち込みが可能であるが、運搬する車両の確保、フェリー料金などは、運搬する側で用意している。また、島内の家庭ごみの収集と運搬は民間業者が実施しているため、費用の面で業者に運搬を依頼することが難しい

●毎年同じ量またはそれ以上が漂着しキリがない状況。島外に搬出するため多額の支出となる

●産業廃棄物など燃やせないものの島外搬出と処分に苦慮している

●海ごみを回収して運搬する場合、地元の船を使用しており費用負担が大きい。また、海ごみを回収する業者がいない

●ボランティアに来てもらえるのはありがたいがごみの搬出は住民が行うので、ボランティアの方にせっかく集めてもらっても処分に時間を取られるのが課題

●漂着ごみのうち島内処理困難物を島外搬出・処理したいが、受入れ先が見つからない

●漁協組合員及び島民全員が行うのが基本。高齢化が進み人手不足。分別に時間を要す。漁に出ることができないので水揚げが下がる

●人工物は極力回収したいが人力では難しい

●1人1人の意識や行動がごみの量を減らすため、必要のないものを買わない、ものを長く大切に使うなどの「リデュース」を心掛けるように変わらないと、ごみの削減は難しいと感じる

●干満によって1日に2回運ばれてくる漂着ごみ。清掃するにも荒天や雨天だけではなく猛暑の日もあります。継続した粘り強い活動が必要な課題で、克服は不可能と考えます。全てのごみは海を最終駅(ターミナル)としているのですから、地上ごみをゼロにする事が目標となるでしょう

●海ごみの処理には多くの費用や手間がかかりますが、しっかりと本土側の人にも実情を知っていただき、環境学習になる様なボランティア活動が組めればいいなと感じています

●どれだけごみを片付けてもキリがないので、根本的な仕組みづくりや政策が必要だと考える。(ごみを拾った人にメリットがある、換金できるなど…)ボランティアや善意には限度があり、多くの人が拾いたくなる原動力が必要

●観光客等から海ごみについての指摘を受けることがあり、対処せねばという思いはある

●回収しても新たにごみが海岸に漂着し、すぐに景観悪化を引き起こしている。また、本事業の財源は国庫補助に頼っており、国庫補助が継続されなくなると、本事業の実施が困難となる

●キリはないですが、いつの間にかごみに慣れてしまわないように、当たり前と思ってしまわないように、拾い続けるんだという意思は持ち続けたい

●人口が減り、高齢化が進み、作業できる人が限られ、いろんな作業が難しくなってきている

●海岸の清掃については、まずは島民の生活環境に影響を及ぼす部分を最優先で行いますので、生活範囲外にある海岸等については、後回しにせざるを得ない状況

●島の浜にあるごみは島内で発生したごみではなく、他の地域から潮にのって着いたものがほとんどで、元を絶たないと解決にはならない

●生まれ育った島を綺麗にしたいという想いが原動力となってボランティア清掃を行っているが、その想いを担う後継者がいない状態。自分たちだけで終わらせないためにも、協力してくれる関係者を増やし、後継者育成もできればと思っている

小さな島の海ごみ問題に取り組むサポーターを募集

離島経済新聞社ではこの問題を一緒に考え、行動してくださる個人・団体(企業や学生団体など)を大募集。まずはオンライン上での意見交換や勉強会からスタートし、小さな島の海ごみ問題に対応できるアイデアを集め、実行していく基盤をつくります。参加希望は離島経済新聞社(www.ritokei.org)のお問い合わせフォームよりお寄せください。


日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

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