つくろう、島の未来

2024年04月25日 木曜日

つくろう、島の未来

拾えども拾えども島に押し寄せ続ける海洋ごみ。特に人口の少ない島々では人手や資金不足、搬出の問題など多様な課題を抱えています。
そこで離島経済新聞社では、有人離島の6割以上を占める人口500人未満程度の小規模離島の海洋ごみ問題を考えるオンラインコミュニティ「小規模離島の海ごみ問題を考える会」を設立。
2022年11月には、3つの先進事例と3島の現状や取り組みを共有するオンライン勉強会を開催しました。そこで語られた現状やアイデアの一部を紹介します。

※このプロジェクトは日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて実施しています。

※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

ゲスト出演者

金城由希乃(きんじょう・ゆきの)さん
沖縄市出身。「サンゴに優しい日焼け止め」の企画販売や、地域とビジターを繋ぎ海岸清掃を行う「プロジェクトマナティ」を立ち上げ、地域の人と繋がりながらいつでも気軽にクリーンアップできるプロジェクトを展開


宮坂大智(みやさか・だいち)さん
村おこしNPO法人ECOFF代表理事。国内外の離島や農山漁村で「住み込み型ボランティア」ツアーを主催。創業から延べ2,600人の若者が参加する同ツアーでは、海洋ごみ清掃を含む多様なボランティア活動が行われている


松本友哉(まつもと・ともや)さん
合同会社とびしま業務執行社員。UIターンと「合同会社とびしま」を設立。近年は飛島のオンラインコミュニティ「Cloud Island」構想を推進。海洋ごみと戦う「飛島クリーンアップ作戦」や海洋ごみ回収ロボットの開発などに携わる


地島(じのしま|福岡県)
発表者・宗像市元気な島づくり課 内野由太(うちの・ゆうた)さん
周囲9.3キロメートル。人口約130人。2003年にスタートした離島留学が人気。海洋ごみ清掃の一部で島外人材の協力も得ているが、人手・費用の不足や島外搬出など課題が残る。


魚島(うおしま|愛媛県)
発表者・愛媛県上島町地域おこし協力隊 佐藤滉治(さとう・こうじ)さん
周囲6.5キロメートル。人口約120人。因島の土生港から魚島港まで船で約60分。公民館活動として海洋ごみ清掃を行っているが、人口減少や高齢化による人手不足が深刻化している。


浮島(うかしま|山口県)
発表者・周防大島町生活衛生課 大谷快(おおたに・かい)さん
屋代島さとうみネットワーク 田中貞徳(たなか・さだのり)さん
周囲6.8キロメートル。人口約180人。水産業が盛んな浮島では海洋ごみ清掃も漁協が中心となり実施。費用不足や海洋ごみにより魚が傷つくなどの問題を抱えている。

【前編】小規模離島3島の実態と取り組み

本日は、小規模離島から、地島(福岡県宗像市)・魚島(愛媛県上島町)・浮島(山口県周防大島町)海洋ごみに関わる皆さんに集まっていただきました。

まずはご自身の島での取り組みについて教えてください。

地島では天然ワカメやウニなどの漁場を守るため、住民による海岸清掃が行われていますが、島外へごみを搬出できるフェリーの運航は月2回しかありません。

人口減少が進み、高齢化率も48.9パーセントと担い手不足が一番の課題です。人手の確保のため、島外の企業や大学と連携した大規模清掃や、ごみの発生源を調べる海洋ごみ調査も行っています。

地島では湖池屋などの企業や大学と連携した大規模清掃も実施している

魚島ではごみを島内で処理できないため、一般ごみも週に1度のフェリーで島外に運び出しています。

海洋ごみも島外に搬出する必要がありますが、大きな流木などは移動も困難です。少子高齢化と人口減少が進むなか、押し寄せる海洋ごみに島内では対応しきれなくなってきていると感じます。

また、学校存続のための取り組みとして、小・中学生の離島留学を推進しています。

魚島のごみ置き場。小さな島では処理が難しいごみや搬出を待つごみが堆積している

いりこの産地として知られる浮島では、主要産業の漁業で底引網にかかる大量の海底ごみが魚を傷つけ、商品価値が損なわれる被害が発生しています。

補助金を活用して回収処理を行っていますが、ロープや金属など多様な素材が混じり合う海底ごみの分別には大変手間がかかり、担い手も不足しています。

また、テトラポットに入り込んでしまった海洋ごみは回収がほぼ困難で、頭を悩ませています。他県から漂着するカキ養殖で使用されるプラスチック製スペーサーも問題になっていて、竹製に替える試みが進められています。

島で回収された海底ごみ。多種多様な素材が混じり合い、分別は困難な状況

島によって流れ着くごみの種類が多様であると分かります。一方で人手不足や搬出の難しさは共通しているので、皆で解決策を考えていきたいです。

>>【後編】ごみ拾いロボットも開発!飛島のユニークな海洋ごみ対策に続く

アーカイブ動画を限定公開中!

オンラインイベント「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」の様子をYoutubeで公開しています。(2023年5月31日まで)お申し込みいただいた方に、視聴用URLをお知らせします。

>>お申し込みフォーム

参加しませんか?
Facebookグループ「小規模離島の海ごみ問題を考える会」

人口規模の少ない離島地域が世界規模の課題に立ち向かうためには、多くの仲間が必要です。私たちと一緒に「サポーター」として島の海洋ごみ問題について考えていきませんか。読者の皆さまの参加をお待ちしております。

>>Facebookグループ「小規模離島の海ごみ問題を考える会」


【「小規模離島の海ごみ問題を考える勉強会」概要】

内容:2022年度に離島経済新聞社が実施した小規模離島地域の実態調査より、課題を抱える3地域の実情を共有。海洋ごみ清掃に関する先進事例の紹介や意見交換を実施
日時:2022年11月25日(金)13:00~15:00
開催場所:Zoom MTGによるオンラインイベント
参加人数:170人(リアルタイム70人/アーカイブ動画視聴100人)

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/

特集記事 目次

特集|きれいな島をいつまでも ごみについて考えよう

最近、島に「ごみ」が増えていると感じませんか?
あちこちの海辺や、人が立ち寄らない隠れた場所にもう、どうにも隠れきれなくなったと言わんばかりに佇むごみ。
島の人々は口々に「昔はそんなになかった」と言います。ごみと呼ばれるものが自然界に存在しないとすれば、それはすべて、人の営みと価値観から生まれたものといえるでしょう。
この特集では、「きれいな島をいつまでも」という願いを込めて島のごみについて考えていきます。

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