つくろう、島の未来

2019年11月13日 水曜日

有人離島を擁する都道県のうち、離島に暮らす人の数が最も多い鹿児島県では、島を支える地域おこし団体が、自立的・安定的に活動を継続できるよう支援すべく、2016年度より離島地域おこし団体事業化推進事業を実施している。この流れから2019年に鹿児島離島を支える当事者らが主導する「鹿児島離島文化経済圏(リトラボ)」がスタート。9月18日に種子島で行われたフィールドワークをレポートする。

(写真・鹿児島離島文化圏 文・鯨本あつこ)

9月19日。トレセン2日目の朝は、つい数時間前まで熱い議論が交わされていた「あずまや」での朝食からスタートした(トレセン1日目はこちらから)。

空は青くも、風が強い。天気予報では風速10メートルが予想されたため、もともと予定されていた「カヤックツアー」は中止に。種子島宇宙センターの見学に切り替えられることが参加メンバーに告げられた。

種子島トレセンに残された時間はあと8時間。この間に、種子島(たねがしま)の地域おこしを未来に進める議論をどこまで深化させられるだろうか。

朝食を終えた一行は、「あずまや」の近くにある、一軒の空き家を訪れた。

植物が生い茂る場所には、大きな石を組んだ石段と門柱があり、かつて庄屋屋敷だったという建屋は雨風にさらされ、朽ちようとしているようだ。

「あずまや」を再生した内野康平さんは、この場所も再生しようと考えている。「家主はそのまま朽ちればいいと言っていたが、博物館の館長も『なにかある』と言っていて、実際に鉄砲や弓などがたくさんでてきました。お金周りの計画はまだだけど、来月から解体工事をはじめて、屋根を抜いて構造補強をしようと思っています」(内野さん)

屋久島(やくしま)、奄美大島(あまみおおしま)、甑島(こしきじま)、硫黄島(いおうじま)に鹿児島本土や関東など、各地から種子島トレセンに集った参加メンバーは、ボロボロとも形容できる建物とその敷地を興味深く視察。

一体、この場所がどのように生まれ変わるのか。ワクワクした空気が流れるなか、空き家活用の現実問題について意見が飛び交った。

日本には800万戸以上の空き家が存在し、今後も増えると予想されている。そのため、行政による空き家活用を促進する補助金メニューも用意されているが、内野さんは「とりあえず自己資金で」この場を改修するという。

「補助金は活用しないのか?」という参加メンバーからの問いに、内野さんは「面倒だし、スピード感が落ちてしまう。その労力を考えたら稼げばいいかなと考えている」と回答。

トレセンのご意見番として栃木から参加している地域プロデューサーの風間教司さんは、拠点にカフェなどを多数経営してきた経験をもとに内野さんの意見に賛成。

「補助金を活用するといろいろと制約がかかり、がんじがらめになる。行政側に補助金を使って欲しいといわれて活用したら、周囲に『あいつばかり』と言われたこともある。以来、『一切とらない』と公言してきたら、周りからは『頑張ってるね』と言われるようになった」(風間さん)。

もちろん地域づくりには補助金が有効なケースも多くあるが、自らリスクを背負い、スピード感を持って動こうとするプレーヤーにとっては、しばしば足かせとなる場合があるということだろう。

「家主さんは『あげる』とも言ってくれていましたが、『あずまや』と同じく10年で契約して借りました。ここは集落にとって一番大事な場所にあるので、慎重にやっていきたい」という内野さんに、甑島の山下賢太さんは「その人(家主)の人生や、(土地の)バックグラウンドを大事にしながら仕組みをつくっているからできているんだと思う」と納得した顔を見せた。

参加メンバーはバスに乗り込み、南北に細長い種子島を南下。南種子町で地ビールをつくる「種子島ブルワリー からはな」へ向かった。

種子島産のたんかんやパッションフルーツ、お茶を使ったクラフトビールの製造工程を見学しながら、代表の伊藤理人さんに話を伺う。

サーファーでもある伊藤さんは「(需要に対して)供給が追いついていないので規模は拡大したい」と展望する一方、「全部の需要に応えて働き詰めになるようなことはしない。家族との時間を最優先できるよう覚悟して、仕事量を決めたい」と話す。

サーフィンのメッカとしても知られる種子島には、波を求めて移住する人もいるが、そもそも「波を求めて人生を選ぶ」という時点で、仕事と人生のバランスに対して、明確な方針を持っているといえる。

コネクトの上妻さん曰く「種子島には良い波が立つと仕事を休む人もいる」とのこと。暮らしの拠点を選ぶ基準はさまざまだが、種子島には少なくとも「波を求めて」集まってくる人が一定数存在するようだ。

一行はさらに南下し、宇宙航空研究開発機構JAXA(ジャクサ)が運営する種子島宇宙センターを訪問した。

実は、「あずまや」にJAXAの担当者が訪れたことをきっかけに、今後3年をかけてJAXAの社員食堂のリニューアルを内野さんが手掛けることになったという。生まれ変わる前の食堂見学を兼ねて昼食をとり、帰路につくバスの中では「社員食堂がどのような場所になったらいいか?」と意見が飛び交った。

ランチ後、南種子町から西之表市へ戻る道中、参加メンバーはビーチに立ち寄った。

強風のためトレセンのカヤックツアーは中止となっていたが、プロサーファーが腕を競う大会は行われていたのだ。

びゅうびゅうと風が音を立て、波打ち際には高い波が押し寄せているなか、サーファーは海に向かい、そのうねりに乗って海上をすべっていく。

セイルミーティングの基調講演で、古田秘馬さんがこういった。

「たとえば不動産価値で考えると、海辺の物件は価値がありません。でも、サーファーにとってはものすごく価値がある。僕たち(=島)はマイノリティだが、誰に対しての価値観なのかを問えば、世の中につながっていけるんです」と話した(詳しくは#02へ)。

「種子島の価値」を垣間見た一行は、種子島トレセンの最終プログラムに向かった。

(#07に続く 2019年11月4日公開)

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有人離島を擁する都道県のうち、離島に暮らす人の数が最も多い鹿児島県では、島を支える地域おこし団体が、自立的・安定的に活動を継続できるよう支援すべく、2016年度より離島地域おこし団体事業化推進事業を実施。この流れから新たに生まれたプロジェクト「鹿児島離島文化経済圏(リトラボ)」の動きをレポートする。

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