つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

鹿児島県大隅半島の南に浮かぶ屋久島(やくしま)。周囲約130kmの円い島の、山と川と海が接するわずかな平地に、ひしめき合って暮らしています。Uターンして、自らもコーヒーショップを営む島記者が、島ならではの小さな商いの話と季節のたよりを届けます。

#04 結婚パーティーは公民館

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ビーチにポツポツと海の家が建ちはじめ、一湊が1年で最も賑わう季節がやってきました。

深い「つ」の字を描く一湊湾の海水浴場は、波が穏やかで、県の水質調査でも特に高い透明度を誇っています。

 

眩しい陽射しのもとで海水浴を楽しんでいる方もたくさんいますが、地元民はもっぱら夕方、陽が傾きはじめてから海へと集まりはじめます。昼間の太陽を浴びた海水はほんのりと温かく、北西の番屋峰が強い西日を遮って、気持ちのいい夏の夕暮れ。

 

都会からきた人に驚かれるほど、きりりと涼しい夏の夜がはじまります。

 

■宴会はチームワークで

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夏のはじめ、すてきな結婚パーティーにお邪魔してきました。

花嫁は、かわいいかわいいyu-ちゃん。

 

私が、タウン誌『屋久島ヒトメクリ.』に連載している「手仕事めぐり」にて、すてきな写真を撮影してくれている「里びと写真家」です。

 

山や海をフィールドにする屋久島在住の写真家は数あれど、里をメインに撮影するのは、yu-ちゃんだけ。彼女がカメラを向けると、大人も子どもも不思議とみなリラックス。自分でも、みたこともない表情でファインダーにおさまっている、そんな才能の持ち主。普段は、屋久島町地域雇用創造推進協議会、通称ネクスト屋久島応援隊で島の情報サイト「屋久島マルシェ」の運営に携わりつつ、写真事務所「yu-photographs」を経営しています。

 

花婿は、「屋久島ガイド 山好き」を営む木下くん。ふたりとも5年ほど前にそれぞれ移住してきました。家族で綿密な計画を立て、移住する人もいれば、旅の延長みたいに単身やってきて、軽やかに暮らしはじめる人も多い屋久島。島好き同士、出会って結婚、というケースも珍しくありません。

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ローカルの披露宴は、居並ぶ爺婆たちの手前もあり、ホテルを会場に、席次が決められたオーソドックスなタイプが主流ですが、移住組は個性豊か。料理を持ち寄るポットラック形式や大皿の仕出し、お弁当にお寿司。会場もレストランやスタジオ、公民館や屋外などさまざまです。

 

今回、キャンプ場での開催が予定されていたのですが、あいにくのお天気で、公民館に変更。

新郎新婦の友人たちが中心となった手作りのパーティーのはじまりです。

 

大きなクーラーボックスに、漁協の製氷施設の氷をどさっと詰めてビールをたっぷり冷やします。グラスや皿は各々が持参、予備の紙皿や割り箸も用意して、サウンドシステムも持ち込んで。ビデオカメラもスチールカメラも友人たちが手分けして担当。専門業者に頼らない、宴会慣れした島暮らし、パーティー準備も速やかなのです。

 

■小さな商い大集合

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料理は島の人気店から。「ラ・ターブル」は、ケーク・サレ、グリーンサラダ、豆と雑穀と野菜のタルタル、シイラのバスク風煮込み、パエリヤ、そして野菜や果物を。『屋久島ヒトメクリ.』が営むレストランの自家製ソーセージや「いその香り」の唐揚げと海老フライ、「明源しの」の寿司、「おひさんの畑」のバゲットに「けい水産」の魚の燻製。さくらんぼがのった華やかな三段重ねのウエディングケーキは「スマイリー」の作。デザートにみんなでいただきました。

 

バルーンや切り絵で華やかに飾られた会場に、色とりどりのテーブルクロスと紫陽花。

極めつきは、ロマンチックなキャンドルのインスタレーション。島のキャンドルユニット「焚キャンドル」初の結婚パーティーの演出です。舞台や各テーブルに、大小さまざまのカラフルなキャンドルの炎が揺らめいて。時間を追うごとにその色を変えていきます。

パーテーションの向こうには、畳を敷いたキッズスペースも用意されていて、大人たちのおしゃべりに飽きた子どもたちが風船遊びを楽しんでいました。

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若草色のリボンが印象的な新婦のドレスは、お姉様のお下がり。ブーケはお母様の手作り。新郎の衣装は、なんと新婦のおじいさまのスーツを友人がリメイク。

会場の隅から隅まで、家族や友人たちの温かな思いやりに満ちていました。

 

■一軒家レストラン ラ・ターブル

見た目にも華やかな盛りつけで、ウエディングパーティーに引っ張りだこのラ・ターブルは、フレンチをベースとした家庭料理のお店。島の南、平内にあります。

お弁当やケータリングからスタートし、今は一軒家のレストランも営むいくちゃんも5年前に島にやってきました。栄養士の資格を生かし、ホテルの厨房などで働きながら経験を積み、独立開業に至りました。県道沿いとは思えない緑豊かな立地。縁側で履物を脱いで入店するスタイルが、リラックスを誘います。季節の花々が咲く敷地には、油絵とジュエリーのしずくギャラリー、道向こうにはシックなフラワーショップも。

 

ひそかにプロポーズトライアングルと名付けているこのエリア。敷地内のKEI NAKAMURA JEWELLERYにリングをオーダー、フラワーショップFRENCH COLORSのブーケとともに、ラ・ターブルでデザートとともに差し出す。

こんなロマンチックな島旅、いつかのプランにいかがでしょう?

 

(つづく)

     

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