島に嫁ぎたい女子と島の男子との出会いのきっかけをつくる「島コン」が日本全国の島々で行われている。五島列島(ごとうれっとう|長崎県)で島コンを展開するのは、ファッション業界をはじめ華やかな業界で働くメンバーで構成されるSKI→JAPAN(スキジャパン)。一見、派手に映るせいか「よくチャラいと言われますね」と笑うメンバーに、島コンの話を伺いました。※この記事は『季刊ritokei』10号(2014年8月発行号)掲載記事になります。
未来の島のお母さん?
都会でばりばり働く女子と島の豊かさ(と男子)が出会う
SKI→JAPANの島コン
(聞き手・鯨本あつこ)
「周りにはバリバリ働いているのになかなか彼氏ができず、疲れている女子がたくさんいて、そんな優秀な女子たちをもうちょっと幸せにできないかなと思って島コンを思いついたんです」。自らも人気ファッションメーカーでバリバリ働く狩野さんはそう活動のきっかけを語る。
狩野さんを中心に構成されるSKI→JAPAN(スキジャパン)は、本業はファッション、PR、大手ディベロッパーなど華やかな業界で活躍するメンバー4人で構成されるチーム。「長崎が好きで通っていた」という狩野真希さんが会社の同僚、取引先、呑み仲間に声を掛けて集まったという。メンバーのひとり、青木あずみさんは長崎離島の縁もある。「出身は長崎なんですが、祖父母は小値賀島(おぢかじま|長崎県小値賀町)の隣にある斑島(まだらしま|長崎県小値賀町)出身。親戚や家はまだ島にあるので夏休みなどは遊びに行っていました」(青木さん)。ほかにもメンバーには対馬出身者がいる。
「島コンの話を進めていくうちに知り合いづてに福江島(ふくえじま|長崎県五島市)で『ソトノマ』の有川智子さんに出会って企画が具体化したんです」(狩野さん)。現地の協力者を得たことで企画は前進し、昨年の10月、11月に福江島、今年3月に上五島で「島コン」を行い、6月には婚活に限らない「島ライフ」ツアーを福江島で実施。各ツアーにそれぞれ十数人の女子が参加した。
都内で働く女子が参加しやすいようスケジュールは、金曜日中に長崎に入り、翌朝に島へ渡って1.5日で島を楽しみ、日曜のうちに都内に戻るというタイトなもの。参加する女子たちの特徴は、結婚へのポテンシャルが高く、専業主婦願望はなく、島で起業したり仕事を探すことを考えているアクティブさだという。
そんな都会の女子と島の男子たちとの出会いはどのようにつくられるのだろう。
「目に見える順番が大事なので、ある程度は島の見せ方を編集している部分もあります」と狩野さん。船で到着した時、バスにのった時、昼食をとる場所、海辺をまわる順番、泊まる宿の清潔さなどメンバーとイメージしながら「どうしたら女子がアガるか?何をやったら冷めるか?」をじっくり考え、プログラムを組んでいる。一方、受け入れ側の男子に対しては「男子の良いところをどんどん出してもらいます。料理が上手かったらその場で料理をしてもらうとか!」と、お互いの魅力を知れる機会もつくる。
島に滞在するのは1.5日。仲を深めるにはもう少し時間が欲しいところだが、「120%の魅力を伝えるのではなく余韻を残すのも大切」と割り切り、インターネット上での交流へと導く。
「Facebookのグループをつくって交流するようにしたら、お互いつながりがあって何回も会っている人もいるみたいです。島の男子は最初、東京は遠いし……みたいな感覚があったんですが、最近は変わってきていて、仕事で東京に行くことがあれば女子たちとも会っているみたいですね」(青木さん)。
SNSには島と都会のように離れている場所でも、それぞれの日常や価値観を共有できる良さがある。「『漁に行ってきます!』みたいな投稿をすると女子たちから『気を付けてね』みたいなコメントがついたり。男子たちも『今日の海はこんなです』と、島の良さを伝えてくれるんです」と狩野さん。
こうしたコミュニケーションを経た男子からは「都会の女子がイメージと違った」「女子たちの声を通して改めて島の良さに気付いた」という声も聞こえ、心の距離が縮まっている様子が伺える。また、参加女子のうち2割ほどの人は3カ月以内に島に再訪し、なかには両親を連れて行く人もいるという。
「私たちはあくまで外の人なので、東京にいるからできることをやりたいです」と言う狩野さんは最後に「島コンをやりながら島に教わったことが多いんです。おこがましい話ですが、最初は島を活性化をするぞ!と思っていた部分もあって。でも今はむしろお世話になってます!ありがとうございます!頭があがりません!みたいな感じで」と笑う。
「島の男子たちにはバーベキューで料亭で出るようなスープを作れるような料理上手な子もいて。彼らからはいろんな生き方があることや、ご飯ひとつ食べるにしても野菜にこだわるだけで全然違うことを教えてもらって、自分たちの生活も豊かになりました。それを都会の人たちに還元していきたいですね」(狩野さん)。
自ら都会でばりばり働く女子だからこそ理解できる都会の価値観を持ちながら、島の若手と協力してバランスのとれた出会いの場をつくるSKI→JAPANの島コン。島のお母さん候補となる女子のみなさんにはぜひチェックしてほしい。