つくろう、島の未来

2024年12月08日 日曜日

つくろう、島の未来

伊豆諸島・新島で2016年9月10日に行なわれたウェディングパーティ。新郎は新島在住の成沢 亮さん、新婦は都心で働いていた鞘師小百合さん。2人の出会いは、新島村主催の「島婚2013 新島・式根島」という婚活イベントでした。2人は意気投合し、カップリング成立。その後も都心と新島を行ったり来たりしながら、愛を育んでいったそう。『季刊ritokei』21号「島と結婚」特集との連動企画として、成沢さんご夫婦のウェディングパーティーの様子をたっぷりレポートします。(写真提供・新島未来会議 文・薮下佳代)

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島外から来た新婦の家族や友人らをもてなす、アットホームなウエディングが開催された

島おこしの一環として定着してきた「新島ウエディング」

新婦の小百合さんは三重県出身、都内の印刷会社に勤めていたため、大切な家族や友人、仕事仲間にも、自分が嫁いだ素敵な新島を見てほしい。そんな気持ちから「島外のゲストを島に呼ぶ」パーティを開催することになりました。

村の施設である「21クリエートセンター」で行なわれたパーティのテーマは「ホームパーティ」。本好きな2人がセレクトした本をたくさん並べて手にとれるようにし、2人の好きな音楽を流しながら、島の食材を使ったおいしい食事を楽しむ。それはまるで2人の自宅に招かれているかのようなリラックスした空間でした。

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島の住民らが手づくりしたシェルフには、新郎新婦が好きな本を飾って手に取って見られるような演出に

そんなウエディングの会場設営、音響、進行、料理のケータリングなどはすべて、島の住民の手によるもの。行政や企業などが主体ではなく、住民が自主的に関わりながら、イベントをつくりあげています。その窓口となっているのが、「新島未来会議」です。

代表の石野泰介さんと副代表の木村諭史さん、島在住の2人が中心となり、ウエディング事業を進めてきました。今までに手がけた「新島ウエディング」は、今回の成沢さんカップルで、なんと10回目を迎えました。

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お料理も、テーブルセッティングも、音響も司会もすべて島の住民が担当。本業を持ちながらにもかかわらず、みな玄人はだし

ある時、新島に通っている友人から「大好きな新島で結婚式をあげたい」と相談された石野さんは、新島村商工会に話を持ちかけました。

島外の人が島で結婚式をあげるということは、今まで前例がありませんでしたが、ちょうどその頃、商工会としても木村さんをプロジェクトに招いたワークショップの実施や新島のロケーションを活かしたケータリング事業に乗り出したこともあって、商工会や多くの住民からの支援を取りつけ、「新島ウエディング」のプロジェクトが動き出すことになりました。

毎回、「新島ウエディング実行委員会」を編成し、新郎新婦の要望を組み込みながら、島の立地を活かしたパーティを開催。美しい白砂とエメラルドグリーンの海でビーチウエディングをしたり、農園を貸し切って、島の野菜を使った食事を提供したり。遠くから来たゲストを“新島らしい”演出でおもてなしするウエディングは大好評で、年に1〜2回のペースで開催してきました。

「初めて開催した時、新郎新婦だけでなく、新島に初めて来たゲストたちがとても喜んでくれて。『自分たちだけでこんなことができるんだ!』と感動しました。海がきれい、波がいいだけだと思っていた島が、急に輝いて見えた。自分の住んでいる島の魅力が初めてわかったんです」。そう話す石野さんは、「新島が好きな人たちを全力でサポートしたい」そんな思いでウエディング事業に携わってきたと言います。

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新島ウエディングを始めるきっかけとなった第1回目の結婚式。羽伏浦(はぶしうら)ビーチの白砂がバージンロードに

「島婚」も「ウエディング」も、島の人と外の人、都市と地方が交わる場所であり、島の人にとっても、ゲストをもてなし、島をPRする大事な場所。だから、毎回全力投球。しかもすべてが手づくりだからこそ、どこにもない唯一無二のイベントになり、そこに島の人のおもてなしの心と情熱を感じます。その成果は、ゲストの顔を見れば一目瞭然。「気持ち」が人を確かに動かすのです。

「僕たちだけでなく、島を好きな人(サポーター)と島の住民が、一緒に創っていくことが大事だと思っています。それが島と島外をつなげるきっかけになりますし、島内の人材や仕事を創りながら、島の新しい魅力も創っていく。それが新島の未来を創っていくんだと思います」と木村さん。

島を好きな島外の人たちと一緒に島の未来を創っていく。そんないままでにない地域活性のあり方に、新島の未来を変えるヒントがあるのかもしれません。

     

離島経済新聞 目次

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