つくろう、島の未来

2022年07月06日 水曜日

つくろう、島の未来

「島のシマ」特集ではつよく・やさしく・たのしい地域共同体(シマ)をつくる人々の動きや、心豊かなシマを保つためのヒントをお届けします。コミュニティFM局「あまみエフエムディ!ウェイヴ」(以下、あまみエフエム)の皆さんに、奄美のシマで出会った素敵な取り組みについて教えてもらいました。(制作・ritokei編集部)
※ページ下の「特集記事 目次」より関連記事をご覧いただけます。ぜひ併せてお読みください。

※この記事は『季刊ritokei』38号(2022年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

お話を伺った人


麓憲吾(ふもと・けんご)さん
奄美大島の中心市街地・名瀬出身。奄美大島にてライブハウス「ASIVI(アシビ)」やラジオ局「あまみエフエムディ!ウェイヴ」を運営。島に生まれ育ったことを誇りに思える「島アイデンティティ」をテーマに活動


渡陽子(わたり・ようこ)さん
奄美大島のローカルエリア・宇検村田検集落出身。2011年あまみエフエムに営業職を希望して入社するが、島口(島の方言)での絶妙かつ素朴なトークが話題となり、名物パーソナリティとなる

皆さんは奄美の集落をめぐられていますが、奄美(※)にはいくつシマがあるのでしょう?

※ ここでは奄美大島に加計呂麻島(かけろまじま|鹿児島県)・請島(うけしま|鹿児島県)・与路島(よろしま|鹿児島県)を含めたエリアを指します

一度数えたことがあるんですが、町内会も含めたら150から160くらいありました。

150以上!そんな奄美で最近注目のシマはありますか?

「ナキャワキャ島自慢」(※)というコーナーで、毎週ひとつの集落に行って、区長さんとか住民の方にインタビューしているんですが、最近だと須野崎原(すのさきばる)集落(以下、崎原)がおもしろいですね。

※ 奄美の集落をめぐり「ナキャワキャ島(あなたと私の集落)」の自慢をインタビューする人気コーナー

ここ1年くらいの話ですが、「バルサキバル(BAL SAKIBARU)」という名前で、Iターンで集落に移り住んだ方と集落の方々がSNSで集落の情報を発信したり、蕎麦打ちが上手な人がいるから集落の人にも食べて欲しいといって、公民館で蕎麦を提供したりされています。

崎原集落はおふたりの感覚ではもともとどういうイメージでしたか?

あやまる岬という観光スポットのふもとにあるので、(何もなければ)通り過ぎている場所でしたね〜。

ですね。通り過ぎてきた印象があります。けれどこういう活動があると、外の人も行ってみようという気持ちになりますよね。

バルが始まる前から月に1回くらい集落の方々がお茶飲みに集まっていて、おばあちゃんたちが「自分のシマの踊りはこんなのよ〜」と踊っていたそうです。そんなお茶飲みから始まったんですかね〜。

なるほど。他はどうでしょう?

大和村の名音(なおん)集落ですね。今はアクセスも便利になっているけど、昔は山を通らないと行けなかった場所で、集落内がとても仲が良くて。青年団、壮年団、婦人会とか、みんなが飲み会で集まっているそうです。

お茶飲みの次は飲み会ですね。

名音集落は「イショシャ(漁師の意味)」といって潜り(潜水)上手な人が多いんです。

捕ってきた魚や貝を食べるのにみんなで集まるうち、「集落をこうしたいよね〜」という話が出て「名音フェスティバル」という音楽祭を小学校の体育館でやったり、「名音大学」という集落のことをみんなで話し合える場をつくったり、知る人ぞ知る名音の良さを外向けにアピールしたり……すばらしい集落だなと思います。

名音集落ではクリスマスに電飾を施した軽トラが登場。集落の親から預かったクリスマスプレゼントを、サンタに扮した大人たちが集落の子どもたちに配って回る。
目的は「子どもたちを喜ばせるため」であり、全力で楽しむ大人の背中を見た子どもたちに「集落っておもしろいよねと思ってもらうため」

おもしろいですね。他に防災や助け合いなどで注目されている集落はありますか?

集落に限らない取り組みですが、今年1月にトンガの噴火で津波が発生したとき、避難する上でいろんな課題があったので、地域内でアンケートを取りながら助け合いをもう一度見直そうという動きがあります。

主体は誰でしょう?

この例だと婦人会ですね。

へえ。婦人会しかり自治会、青年団、壮年団、消防団など色々な集まりがあると思いますが、ものごとの主体になるのは、どんな集まりが多いのでしょう?

地区によって違うと思いますが、やっぱり青年団がある地域は青年団がいろんなサバクリ(段取り)を担っていて、青年団がない場合は区長さんなどですね〜。

……それがですよ(コロナ禍により)2年間飲み会がなかったせいで、奄美でも青年団活動がかなり減っていると聞くんですよ。コロナ禍でもコミュニケーションが取れている集落は活動も活発なんですが、自粛を続けているところはなかなか動きが見えないんです……(涙)。

コロナは集落の連帯感にも大きく影響しているんですね……(汗)。

ですね……。何かあったときに飲み会で解決するとかできないですし……(苦笑)。

やっぱり青年団がしっかりしているところは連帯感があって、私の地元(宇検村の田検(たけん)集落)でもみんな、誰がどこにいるか分かっているから、(津波で)避難しなければいけないときでも、誰がどこに誰を運んでとか、避難所にござを敷いてとか、逃げ遅れた人は誰で……という動きがすぐにできたそうです。

すごいですね。いざという時の連携は、日頃のお茶飲みや飲み会のたまものですよね。とはいえ、過疎化地域では青年団がなくなるケースも多いと聞きます。若者の少ない集落にもおもしろい動きはありますか?

住用(すみよう)の市(いち)集落は年配の方が頑張っています。若い方が数人しかいないので、昔なら10人くらいの青年団でやるようなことも2〜3人でやっていたりするんですが、年配の方たちが公民館で月に1〜2回、八月踊りを踊る会を開いているんです。Iターンの人でも子どもたちでも読めるように、大きな紙に八月踊りの歌詞を書いて公民館の四方八方に貼って。強制参加ではないですけどみんなやってますね。

八月踊りを踊る会の風景。各集落で行われる伝統行事はこうした会を通じても継承されています

それは集落外の人に向けた取り組みではなく?

はい、若い世代の方で歌が分からない方とか、小さな子どもたちも一緒に歌詞を覚えて歌えるように集落の人が集落の人に向けてやっているものですね。

奄美は伝統文化も多様で、シマ唄も地域によって違うと聞きますが、集落レベルで文化を継承する動きがあるんですね。福祉系の取り組みもありますか?

大和村には、年配の方が朝起きたときに「今日も元気よ」という意味で、家の前に小さな旗を立てる集落があります。旗がなかったら倒れているかもしれないので、集落の人が「旗が出てないよ」と家に入る。それで実際に倒れている方がいて助かった例もあると聞きました。

集落の人々に「今日も元気よ」と伝える黄色い旗は、島に限らず過疎・高齢化が進む集落で参考にできる好例

とてもいいですね。島に限らず高齢の方が増えている集落でマネできそうです。「ナキャワキャ島自慢」で訪れた集落で、お二人がおもしろいと感じたことはありますか?

取材で奄美各地を訪れる渡さん(左手前)と住民の皆さん。リアルな声はあまみエフエムの放送で視聴できます。

そうですねえ。大和村のおじいちゃんはずっとケンムン(※)の話をしていましたね。真面目にですよ。

※ 奄美群島に伝わる妖怪

「最近、ケンムンが見られなくなったのは飛行機が飛ぶようになったからだ」「飛行機が飛ぶ前までは見ることができたのに」と。「青い炎が見えたのであればケンムンだったね」とか、「魚を捕って帰る時になぜか籠の中に入っている魚の目が無くなっていたからケンムンだと思って怖くなって、落として逃げた」みたいな話を、みんなで真面目に話されていましたね。

「ナキャワキャ島自慢」では、そこの集落に必ずひとつはある武勇伝を聞きたいと思っていて、例えば「自分が小学生の時にあそこにクジラがあがって、みんなで解体して食べたよね」というエピソードが、その集落に行ったら必ず出てくるんです。

集落のみんなが知っているエピソードみたいな話は、他の人にとっては大した話ではないかもしれないけれど、その集落の人にとっては「あの時あんなことがあったよね〜」と話題にしながら一生盛り上がっていけるので、すごくいいですよね。

集落の記憶ですね。そういった集落で受け継がれてきた言葉のなかで、例えば「格言」とか「教え」のようなものはありますか?

「きむだかさむつなよ〜」とかですかね。「狭いシマに住んでいくためには山の木みたいに高いところで人を見たらダメだよ。お互いに気遣って、もっとへりくだっていなさいね。いばりんぼうになってはいけないよ」と教えてもらったことがあります。

他にも、「水や山うかげ、人や世間うかげ」という言葉で、「水があるから山がある、山があるから水があるということのように、人がいるから自分がいる、だから人に恩返ししなければいけないよ」というのもあります。

こういう話をしてくださる方は、すごい学校を出ているわけではなくても、自然の大変さを見つめながら、ずっと謙虚に生きてこられているんですよね。

素敵ですね。

格言というよりも姿勢になりますが、奄美では「唄者が唄を生業とせず」というモラル感があって、「仕事をしながら唄うのがシマ唄だ」といわれているのがすごく島らしいなと思っています。

民謡居酒屋を乱立させてビジネス化してしまうのではなく、文化を守ろう、次世代に繋ごうというアマチュアリズムの姿勢だから何百年も続いてきている。

もちろん外向けに表現する方もいますけど、例えば民謡で日本一になったとしても「日本一になれたけど、シマ一にはなかなかなれんよ」といったりすることが素敵だなと思います。

市集落の例にもつながりますが、アマチュアである姿勢が推奨される風土であれば、プロでなくても誰でもシマ唄を唄いやすいですよね。だから奄美の文化は現在進行形で生きているわけですね。

ちなみに、アマチュアリズムのアマは奄美のアマですよ(笑)。

ははは(笑)。

崎原集落の「中の人」に聞きました

お話を伺った人
野崎末雄(のざき・すえお)さん
20代で島を出て関東で暮らし、2年前にUターン。
ふるさとの集落に人を呼び込む楽しいことを企画しながら妻とのんびり島暮らし中

奄美大島北部の崎原集落には、40世帯約90人が暮らしていて高齢化率は6割ほど。集落の良さを知ってもらい、子育て世代のUIターンも呼び込めるよう、集落の人の「得意なこと」を持ち寄れる「バルサキバル(BAL SAKIBARU)」を始めました。

地域の蕎麦打ち名人による蕎麦、ホテルで料理人として働く移住者のカレーなどを提供。両者のコラボメニューも人気です

集落が所有する公民館を店舗とし、営業許可を取得して週に3回ランチ提供。SNSの得意な移住者が情報発信を担うことで、さまざまな人が集落外からも立ち寄るようになりました。

他にもシマ唄などのライブ企画や、毎月第2日曜日を「崎原海の日」と定めて海岸清掃を行ったり、集落外からでも参加できる活動を楽しみながら継続しています。

通りに面し眺めの良い場所にあった耕作放棄地に花を植え、共同で野菜やハーブを栽培する「みんなの畑」に再生。高齢者が花を楽しみに出かける場所にもなっています

>>「人類学者の山極壽一さんに聞いたゴリラと屋久島に学ぶシマと島の可能性(前編)【特集|つよく やさしく たのしい 地域共同体に学ぶ 島のシマ】」に続く

特集記事 目次

特集|つよく やさしく たのしい 地域共同体に学ぶ 島のシマ

今回の特集は「島のシマ」。 シマ・集落・村落・字・区など、多様な呼び名がある地域共同体(特集内ではシマ・集落・コミュニティなどとも表現します)には、地域の歴史やそこで生きる人々の個性が織り込まれた独自の文化や暮らしが存在しています。

ここでは、暮らしや文化、社会福祉、子育て、教育、防災、産業振興など幅広いテーマで、つよく・やさしく・たのしいシマをつくる人々の動きや、心豊かなシマを保つためのヒントなどをご紹介。

あなたのシマを思い浮かべながら、リトケイと一緒に日本の島をのぞいてみませんか?

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