「島のシマ」特集では、小さくてもつよく、やさしく、たのしい地域共同体(シマ)の動きを探るべく、人口150〜300人程度の集落単位で行われている素敵な取り組みについて、3島の方に伺いました。今回は、津堅島(つけんじま|沖縄県)で活動されている玉城盛哲さんのお話をお届けします。(制作・ritokei編集部)
※ページ下の「特集記事 目次」より関連記事をご覧いただけます。ぜひ併せてお読みください。
※この記事は『季刊ritokei』38号(2022年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
>>前回:「島に暮らす読者に聞きましたシマを想う島の声【特集|つよく やさしく たのしい 地域共同体に学ぶ 島のシマ】」はこちら
各家系の伝統行事を「一斉」に行い縁をつなぐ
津堅集落はモズク養殖やニンジン栽培が盛んで、住民の多くは顔見知りという温かな島です。戦争で一度は途絶えた祭祀芸能を住民の努力で復活させてきた歴史を持つ津堅には、伝統行事を大切にする気風があります。年間を通じて行われる祭祀は、子どもからお年寄りまで幅広い年代が交流し信頼を深める大切な機会。棒踊りやエイサーなどの保存継承会も複数活動しています。なかでも、毎年4月に行われる清明祭(以下、シーミー)は島最大の行事です。
沖縄地方のシーミーは、旧暦3月のうちに各家系の親戚縁者で行われますが、津堅では普段は疎遠になりがちな島外の親類・知人とも交流できるよう「村清明祭」として一斉に行います。沖縄本島と島を結ぶ定期船も増便して数百人もの人を迎え、お墓の前で先祖供養と子孫繁栄を祈願しながらご馳走を食べ、酒を酌み交わしながら盛り上がるのです。島外に住む親類が夫や妻、子どもなど新しい家族を連れて帰島し、親類縁者に紹介する貴重な機会でもあり、私も毎年楽しみにしていました。
左:伝統を重んじ、多くの祭祀行事が旧暦に合わせて行われる津堅島/右:島をあげて行うことで、縁故者の交流機会を創出してきた村清明祭
ここ数年は、コロナ禍のため島外からの参加は自粛をお願いし、島内の親類同士で集まっています。漁業者が船漕ぎを競い合うハーリー大会や、地域の人も参加する小中学校の運動会など、人が集まる行事はどれも休止せざるを得ず少しさみしいですが、それ以外は普段通り地域の中で交流を楽しんでいます。今は地域住民の健康を守ることを第一に、再び島がにぎわう日を心待ちにしています。
【お話を伺った人】
津堅自治会(約180世帯370人)
玉城盛哲(たましろ・せいてつ)さん
津堅島出身。中学校卒業を機に、進学のため沖縄本島へ。30歳で津堅島に戻り、1995年から1999年まで自治会長を務める。うるま市議会議員を経て、2008年より津堅自治会会長。
>>次回:「おもしろい共同売店のあるシマはおもしろい【特集|つよく やさしく たのしい 地域共同体に学ぶ 島のシマ】」に続く