つくろう、島の未来

2021年10月23日 土曜日

つくろう、島の未来

広く深い海にひそむ魚たちの味わい方は島それぞれ。日本の島々に存在する魚食と魚食を支える背景に迫るべく、伊豆諸島・家島諸島・対馬島・五島市・沖永良部島の編集者5組と島の方々に協力いただき現地取材を敢行!島の住民目線の魚食ネタをお楽しみください。

ここでは、沖永良部島(おきのえらぶじま|鹿児島県)のおいしい魚食 BEST3、魚の背景、魚食にまつわるユニークな活動をお届けします。

※この記事は『季刊ritokei』35号』(2021年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

うちの島のおいしい魚食 BEST3

①焼き伊勢海老
豪快に1匹丸々焼いた焼き伊勢海老は、赤く立派でお値段もお高めで、ハレの日の彩りにピッタリ。歯ごたえのある身にえび味噌を絡め、マヨネーズを付けていただきます。お盆や正月など家族が集うときの定番料理です。

イセエビ科のエビで、南西諸島 から本州の太平洋沿岸に広く分 布。沖永良部島では、漁期の8 月末~4 月に漁獲されます。立派 な見た目から地元では剥製を額 に入れて飾る文化も。

②スミチャの唐揚げ
白身魚の唐揚げで、頭から尻尾までがぶりと食べられ老若男女に人気の魚料理です。スミチャは釣り人の顔なじみ、揚げ物は大量でも家庭で一気に調理できるため定番化したのかもしれません。島の食卓を思わせる一品です。

スミチャは斑点模様の魚を指す方言で、おもにカンモンハタのこと。南西諸島のサンゴ礁が発達したエリアに分布するハタ科の魚で、島では町魚に登録されるほどよく釣れます。

③アカマチの刺身
アカマチは島方言でハマダイを指します。美しい赤色の魚体から、沖永良部島ではお祝いの席などのハレの日で重宝されており、コリコリとした歯ごたえが好評です。赤さが映えるようお頭付きのお造りとしてよく出ます。

ハマダイは南西諸島から伊豆諸島付近に分布するフエダイ科の魚です。スジアラとシロクラベラと並ぶ沖縄三大高級魚に数えられ、琉球文化の沖永良部島でも珍重されています。

この3つは、いかに島の暮らしに根付き、島民から親しまれているかを基準に選びました。焼き伊勢海老とアカマチの刺身はハレの日の外食、スミチャの唐揚げは釣りをした休日の食卓というイメージです。実はスミチャは2021年5月1日に和泊町の町魚に登録され、島の新たな顔となりました。ほかにも、アカマチと同じく島で釣れるフエダイ科の魚にアオマチ(アオダイ)とシロマチ(ヒメダイ)がありますが、味はほぼ同じ。赤色=高級といった価値観が伝わる話です。

なお、島の水産業を支える二大巨頭ソデイカとキハダマグロは、島では比較的歴史が短く、ほとんど島外に出荷されるため外しています。ただ、島で水産加工品をつくる動きがあり、近い将来、島を代表する新たな魚食が誕生するかもしれません。

そのおいしい魚どこからきたの?

島々で味わえるおいしい魚たちは一体どこからきているのでしょう。ここではおいしい魚の背景で活躍する、漁師の仕事や想いに迫ります。


伊勢海老

魚種
高級食材、伊勢海老。ある漁師さんは「泳ぐ諭吉」と例えるが、傷つき角が折れると瞬く間に値が落ちます。

棲み家
国内では南西諸島から本州太平洋沿岸にかけ、温暖な水温の場所に広く生息します。夜行性のため日中は岩棚や岩穴に潜んでおり、サンゴ礁が隆起した沖永良部島ではリーフのへりの割れ目などが網漁に狙い目の漁場です。


漁法
夜に行う素潜り漁と、日中に行う網漁があります。伊勢海老はデリケートなので扱いは丁寧に。前者は専用のエビバサミで捕獲。後者は潮位の高い大潮に5~6日間にかけ網を張り、かかれば網ごと切り離して捕獲します。


漁業者情報
沖永良部島で伊勢海老の漁業権を持つ漁師は、地元漁協に属する70人余。販路は、山田さんのように自らの店で調理したり、セリに出したり、個人向けに販売したりとさまざま。最近ではふるさと納税の返礼品として良い値で売れるとか。素潜り漁は体力勝負、最近は若い移住者の方が伊勢海老漁を始めるケースも増えています。


漁業の喜び
やっぱりたくさん捕れるとうれしいよね。5~6人でやる追い込み漁も順調にいけば3時間でひとり2万は稼げるけど、魚を逃すと赤字だから海だけで食うのは難しい。だからうちのメンバーはみんな半農半漁、今の時期はジャガイモで忙しくていつもはできない。その中でコロナと関係なく買ってくれる取引先はありがたいよ。


お話を伺った人
山田輝夫(やまだ・てるお)さん
漁師歴48年の山田さん。昼はベテラン漁師として網を引き、夜は居酒屋『漁り火(いさりび)』店主として自ら捕まえた海の幸をさばく。自身は父の、父は祖父の漁を見て育った。今日も沖永良部島の漁業をつむぐ。「海人(うみんちゅ)の苦労もある。おいしく食べてほしいよね」

魚食にまつわるHOT TOPIC

食べるだけじゃない!島々の魚食文化を守るため展開されている島々の取り組みや、ユニークな活動を紹介します♪

地元漁協が取り組む島のお魚島内消費キャンペーン

沖永良部島の水産業は島外出荷が7割と、島外消費に偏り気味です。そこで「島内消費を増やそう」と役場と地元漁協がタッグを組んで実施したキャンペーンがユニーク。島の漁業関係者なら誰もが知る漁協の組合長を、ビックリマンシール風にデフォルメして鮮魚などの商品に貼付。シールを集めると500円のお魚チケットと交換できる仕組みで、結果、セリ取り扱い金額は4割近く増し、「組合長をひと目見たい」とセリの見学者までも増えました。

\ここで味わおう!/島のおいしい魚たち

5つの離島エリアで親しまれているおいしい魚を味わうならここ!担当編集者がおすすめする飲食店やお取り寄せサイトで、おいしい魚を味わいませんか?
※緊急事態宣言等により休業や営業時間に変動がある場合がございます


居酒屋 漁り火(いさりび)
伊勢海老漁師の山田さんが切り盛りするお店。店に入ると目の前にある生け簀は迫力満点。海老のほか、鮮魚や貝などが多彩な料理で堪能できます。
鹿児島県大島郡和泊町手々知名512-100
☎0997-92-1452


海邦丸(かいほうまる)
漁業も農業も料理人もこなす草部さんのお店。そのとき捕れた新鮮な島魚や夜光貝などの刺身盛りが人気。築地で培われたという経験は伊達じゃない。
鹿児島県大島郡知名町瀬利覚2113
☎090-4994-5859

ふるさと納税
本土で島魚を味わえる店は少ないが、島内2町ともにふるさと納税の返礼品の中にも海鮮多し。小林海産など、若い世代を中心に伊勢海老などが提供されています。
https://item.rakuten.co.jp/f465330-wadomari/ac001/

取材を終えて……
沖永良部島の編集者からメッセージ

前田翔清(まえだ・かすが)さん
沖永良部島和泊町職員の前田さん。水族館で働くことが夢だったが叶わず、SNSで職員募集を知りUターン。豊富な知識で地元漁業を支援。島魚研究&魚食啓蒙団体「沖永良部フィッシング」代表の顔も持つ。
(うちの島のおいしい魚食 BEST3を担当)



“海からタダで捕れていい商売だな”。農家が多いこの島ではそうも言われると、漁師さんが教えてくれました。仕事は等しく素晴らしく、彼らが培った技術と命がけで漁に出た魚を僕らは食べられる。それを感じられる記事になれたらほうらしゃ(うれしい)です。地元漁協は6月に二次産業(加工品製造)に挑戦、島の新名物に乞うご期待!(沖永良部島編集担当・ネルソン水嶋)

特集記事 目次

おいしい!たのしい!島の魚食図鑑

海に囲まれた島国・日本の近海には約4,000種もの魚が存在し、海と共に生きる人々が多く暮らす島々には、個性豊かな魚食が存在しています。「おいしい!たのしい!島の魚食図鑑」特集では、リトケイ読者が選ぶ「忘れられない島の魚」や、島や魚を愛する人々のインタビュー、5つの離島エリアでの現地取材記事などなど、おいしい海の幸を盛りだくさんに「島の魚食」の魅力をお届けします。

この特集は、日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて制作しています。

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