つくろう、島の未来

2021年12月07日 火曜日

つくろう、島の未来

広く深い海にひそむ魚たちの味わい方は島それぞれ。日本の島々に存在する魚食と魚食を支える背景に迫るべく、伊豆諸島・家島諸島・対馬島・五島市・沖永良部島の編集者5組と島の方々に協力いただき現地取材を敢行!島の住民目線の魚食ネタをお楽しみください。

ここでは、伊豆諸島(いずしょとう|東京都)のおいしい魚食 BEST3、魚の背景、魚食にまつわるユニークな活動をお届けします。

※この記事は『季刊ritokei』35号』(2021年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

うちの島のおいしい魚食 BEST3

①島寿司(べっこう)
旬の地魚を醤油ダレに漬けた握り寿司です。伊豆大島では青唐辛子を効かせた醤油に漬けた辛めの味で、艶やかな色から「べっこう」の別名も。新島では甘めのヅケに辛子を付けて食べるなど島によって味付けが異なります。

カンパチやブダイ、メジナ、キハダなど旬の白身魚を使いますが、なかでもキンメダイは伊豆諸島を代表する魚として食べられ、脂がのったコクと旨味が酢飯によく合います。

②サビの背ごし
サビは骨が多く鋭いので皮の方から細かく包丁を入れる背ごしという骨切りの下処理をしていただきます。その身はマグロのトロにも匹敵する上品な脂の旨みが特徴で、柑橘と島唐辛子を効かせた酢味噌と合わせると絶品です。

大島では「サビ」「ナワキリ」など呼び名はさまざま。標準和名は「クロシビカマス」。150メートル以上の深海に棲み、皮は黒く身は真っ白、上品な脂がとてもおいしい魚です。

③くさや
独特な香りと風味が特徴の「くさや」は伊豆諸島が誇る珍味。青ムロアジやトビウオなどを発酵液に漬け込んでつくる干物で、塩や水が貴重だった暮らしの中で生まれました。仕込み液は200年以上前から使われているものも。

青ムロアジは別名「クサヤモロ」とも呼ばれ、くさやづくりに欠かせない魚です。近海で捕れた青ムロは脂が少なく身が引き締まり、くさやにすると強い旨味を生み出します。

東京湾の南に位置する伊豆諸島海域は、複雑な海底地形と黒潮の流れによって多種多様な魚が棲息する日本有数の好漁地として知られ、古くから漁業を主産業として発展してきた歴史があります。特に東京に近い伊豆諸島北部では、脂がのって煮ても焼いてもおいしいキンメダイや、上品で柔らかな身がクセになる高級魚タカベをはじめ、カンパチ、イサキ、メダイ、イセエビ、赤イカなどがよく食べられています。

伊豆大島、利島、新島、式根島、神津島はもちろん、東京の11島では郷土料理の「島寿司」をはじめ、同じ魚でも異なる味付けや料理で食べているので、島ごとの違いを食べ比べる楽しみがあります。またテングサやトコブシといった海藻や貝類も豊富で、産地ならではのつくりたてヘルシーな「ところてん」や風味の強い新鮮な「島海苔」なども人気です。

そのおいしい魚どこからきたの?

島々で味わえるおいしい魚たちは一体どこからきているのでしょう。ここではおいしい魚の背景で活躍する、漁師の仕事や想いに迫ります。


キンメダイ

魚種
鮮やかな朱色のボディと大きな目が特徴の深海魚キンメダイは、通年捕れますが特に秋〜冬は脂がのって絶品。

棲み家
キンメダイは海底200〜800メートルの岩礁域で、小魚や甲殻類などをエサにして棲息している深海魚です。伊豆諸島と伊豆半島に挟まれた海域で通年捕れることから、伊豆諸島北部では漁業の中心になっています。


漁法
キンメ漁は早朝から1本釣りで行います。1本の糸に30〜50本の枝糸をつけ、それぞれに針がついた独特のしかけを水深300〜500メートルまで下ろします。漁師1人につき2本を持ってキンメが食い付くのを待ちます。

漁業者情報
伊豆諸島でキンメダイ漁を営む多くの漁師の中から今回取材したのは、新島・大三丸。新島で「さぶちゃん」の愛称で知られる親方・大沼三郎船長を中心に、移住者の熊谷さんと20歳の新島っ子・池田くんの3人で日々漁を行っています。漁師の担い手不足が深刻な問題となるなか、フレッシュな若手漁師が活躍する活気にあふれた船。

漁業の喜び
漁師の仕事は生きた魚と自然が相手で、不思議と釣れるときはいくらでも釣れるのに、ダメなときは何をやってもダメ。特にキンメ漁は仕掛けをつくるのに何時間もかかるので、食いついてくれないときは本当に悔しくなります。でも、その分たくさん揚がるとうれしいし、お金にもなる。シンプルなのが漁のおもしろさだなと思います。


お話を伺った人
新島・大三丸熊谷雄輔(くまがい・ゆうすけ)さん埼玉県出身。腕ひとつで勝負できる漁業の仕事に興味を持ち、就業フェアで知り合った大三丸の大沼船長を頼って2020年6月に新島へ移住。現在は、ほぼ毎日海に出てキンメダイや赤イカ、黒ムツ漁などを手掛ける。「新島で釣れるキンメダイは脂がのって絶品。ぜひ食べてください!」

魚食にまつわるHOT TOPIC

食べるだけじゃない!島々の魚食文化を守るため展開されている島々の取り組みや、ユニークな活動を紹介します♪

伊豆諸島から始まる海の環境対策

2010年に「日本ジオパーク」に認定された伊豆大島では、土地に育まれた景観や動植物、人々の暮らしを大切な宝物として守りながら活用する取り組みを行っています。「くさや」はそんな独特な環境が生み出した貴重な魚食。次世代へ継承すべき文化として伊豆大島ジオパーク認定ブランドに登録されました。

また、同じく「くさや」づくりが盛んな新島では、くさやの魅力を再認識し、魚が棲む海の環境問題を喚起することを目的に、くさや型のアルミ製洗濯バサミ「Hossy」を全世帯に無料配布し、海洋ゴミ削減を目指しています。

\ここで味わおう!/島のおいしい魚たち

5つの離島エリアで親しまれているおいしい魚を味わうならここ!担当編集者がおすすめする飲食店やお取り寄せサイトで、おいしい魚を味わいませんか?
※緊急事態宣言等により休業や営業時間に変動がある場合がございます


寿し光 (伊豆大島)
新鮮な地魚を使ったお寿司が自慢。中でもサビの皮目を軽く炙り棒状のお寿司にした「ゴジラ寿司」は、香ばしい香りと上品な白身の味が最高です。
東京都大島町元町1-4-7
☎04992-2-0888
http://oshima-bussan.co.jp/sushikou/


焼き鳥大三 (新島)
大三丸の大沼船長が店主をつとめる居酒屋さん。近海モノの新鮮な地魚を味わえます。炭火で焼いた「キンメのネギマ」は名物として地元でも人気。
東京都新島村本村5-3-1
☎04992-5-0109


東京愛らんど
伊豆諸島や小笠原諸島の特産品を取り扱うネットショップ。伊豆大島や新島のくさや、海産物をおとりよせできます。楽天市場とYahoo!ショッピングのほか、東京・竹芝旅客ターミナル内にアンテナショップもあり。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/tokyoislands/

取材を終えて……
伊豆諸島の編集者からメッセージ

新島OIGIE(新島)&トウオンデザイン(大島)
東京の島をベースとしたメディアの企画・編集・制作を行う新島OIGIE(新島)とトウオンデザイン(伊豆大島)の連合チーム。東京の島同士、手を取り合うなら今でしょ!?と言わんばかりの勢いでコラボレーション促進中。

東京諸島は実に奥が深い!今回取り上げさせていただいた魚食だけでみても各島、各地域で調理方法が異なっていたり、そもそも食べる習慣がない地域があったりと実に多種多様で複雑。これは一刻も早く実際に島々を訪れて自らの五感をフル稼働させながら体感して欲しい!早く安心して人々が往来できる日々が戻ってきますように……。(伊豆大島編集担当・千葉努/新島編集担当・宮川由美)

特集記事 目次

おいしい!たのしい!島の魚食図鑑

海に囲まれた島国・日本の近海には約4,000種もの魚が存在し、海と共に生きる人々が多く暮らす島々には、個性豊かな魚食が存在しています。「おいしい!たのしい!島の魚食図鑑」特集では、リトケイ読者が選ぶ「忘れられない島の魚」や、島や魚を愛する人々のインタビュー、5つの離島エリアでの現地取材記事などなど、おいしい海の幸を盛りだくさんに「島の魚食」の魅力をお届けします。

この特集は、日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて制作しています。

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