つくろう、島の未来

2024年10月03日 木曜日

つくろう、島の未来


超難関といわれる「日本さかな検定」(通称ととけん)1級に史上最年少で合格した伊藤柚貴くんは、自身が食べた魚をイラストに描きおこし、その味を独自に格付けするさかな博士。
そんな柚貴くんがふれあった島の魚について聞きました♪

聞き手・ritokei編集部

※この記事は『季刊ritokei』35号(2021年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

魚食はたのしい宝探し♪

ritokei

柚貴くんは「さかな博士」と呼ばれていますが、お魚のどんなところが好きなんですか?

柚貴くん

全部です!!かわいいし、おいしいし、おもしろいし、奥が深いです♪

ritokei

その言葉だけで魚愛がビシバシ伝わってきますが、例えばどんなところがかわいいですか?

柚貴くん

目とか……しぐさとか……。泳いでいるところもすごくかわいいです。

ritokei

なるほど。柚貴くんが魚を好きになったのは、年長さんの頃にお寿司屋さんで魚へんの漢字が書かれた湯のみに興味を持ったことがきっかけと聞きました。

柚貴くん

はい。例えば、「魚」と「春」でなんで鰆(さわら)?と疑問に思って調べるようになりました。それからサンタクロースに「頭と内臓のあるお魚」を頼んだら尾頭付きのカツオをもらえて、大喜びでさばいたのが始まりで今にいたります(笑)

ritokei

すごいエピソードですね。それから食べた魚を記録するようになったんですか?

柚貴くん

テレビでさかなクンが555種類の魚を食べたことがあると知って、僕もどのくらい食べたかなあと思って記録を始めました。今は414種類です(取材当時)。

ritokei

414種類!柚貴くんの記録は『さかな博士のレアうま魚図鑑』にまとめられていますが、特に好きなお魚を教えてください。

柚貴くん

一番はアイブリです。ブリといってもアイブリ属なのでブリじゃなくて、カンパチに似ているからスーパーとかではカンパチとして売られていることもあります。他にはホウセキキントキも好きです。五島でよく捕れる魚ですごくおいしいんです!

ritokei

柚貴くんは魚市場の常連さんとのこと。五島列島(ごとうれっとう|長崎県)とか壱岐(いき)対馬(つしま)の魚にもたくさん出会うと思いますが、なかでも対馬で水揚げされたヨコヅナマルコバンというお魚は、その魚と知りながら食べたのは柚貴くんが日本初だったそうですね。

柚貴くん

はい。行きつけの魚屋さんがめずらしい魚が入ったときに柚貴用といってとっておいてくれるんですが、2019年の冬に店長さんから魚の写真が届いたんです。写真をみてマルコバンだ!と思って放課後に買いにいったら、クリスマス&お年玉プレゼントだといってもらったんです。

ritokei

へええ。

柚貴くん

それで、刺身とアラ煮にして食べているときに、骨の形がマルコバンとは違っていることに気づいて、ヨコヅナマルコバンだと気づきました。

ritokei

いろいろとすごいですね。

柚貴くん

『日本産 魚料理大全』の著者である西潟正人先生にメールをしたら、研究者の先生に伝えてくれて、とっていた骨格標本(柚貴くんは骨も集めているとのこと)と記録していたサイズとか写真や動画を送ったら、正式にヨコヅナマルコバンだと認められたんです。

※ ちなみにこのとき柚貴くんが食したヨコヅナマルコバンは日本で発見された2個体目となり、対馬産は種の分布として北限記録に。柚貴くんは日本でこの種と認識して初めて食べた人間だというお墨付きをもらい、報告文にも掲載されました。

ritokei

柚貴くんの図鑑を見ると、そんなめずらしいヨコヅナマルコバンも刺身や煮付け、炙り、カマ焼き、湯引きなどいろんな食べ方で味わったみたいで。しかもすべて自分で料理しているそうですね。

柚貴くん

はい♪お母さんは魚を食べるのは好きだけど魚に触れないので、魚全般はぼくが全部料理しています!

ritokei

すごい!ちなみにどんな魚料理が好きですか?

柚貴くん

料理することが多いのはアジですね。釣りでもアジのサビキ釣りが多いです。買ってくる魚でもマアジの中にメアジなど他の魚がまぎれていたりするので宝探しみたいな感じです。

※ 柚貴くん曰く、マアジとメアジは皮目が少しだけ違っているとのこと

ritokei

なるほど。島の魚料理で気になっているものなどありますか?

柚貴くん

前に知り合いが東京に行くといっていたのでお土産に「くさや」をお願いしたら断られてしまいました(笑)。あと、沖縄料理店に行ったときにグルクンの唐揚げがあったらお店の人に「この魚みせてください」と頼んでいます。

ritokei

???

柚貴くん

グルクンは3種類あって、クマザサハナムロとタカサゴ、ニセタカサゴがあるんです。尾びれの色が違うのですが、クマザサハナムロだけ出会えてなくて……。

ritokei

どこにいても宝探ししているんですね。お休みの日は釣りも楽しまれているそうですが、島に釣りに行くことはありますか?

柚貴くん

はい。近いところだと能古島(のこのしま|福岡県)とか大島(おおしま|福岡県宗方市)など。種子島(たねがしま|鹿児島県)にも釣りに行きました!種子島はフェリーからトビウオが見えたし、港にいっぱい熱帯魚がいて!漁港が水族館みたいで印象的でした。2日間釣りをしたらアカバナ(カンパチが巨大化したもの)と98センチのブリが釣れたんです♪

ritokei

なんだか魚の方から柚貴くんに近づいて来ているみたいですね。これから行ってみたい島はありますか?

柚貴くん

西表島(いりおもてじま|沖縄県)に行ってみたいです。アトクギスやナンヨウチヌとか西表島付近にいる魚をみてみたいです♪

ritokei

ぜひ行ってほしいです!日本の島々でたくさんのお魚に出会ってくださいね♪


伊藤柚貴(いとう・ゆずき)
福岡市在住の中学1年生。2019年8月、「日本さかな検定」1級に史上最年少で合格。6歳の頃から自分で食べてきた400種以上に上る魚のほとんどをスケッチし、それら全てについて独自の基準で格付け。”魚食ノート”に記録し続けている。また、釣りや魚をさばくのも得意で、本格的な包丁を使った調理まで。若きさかな博士としてテレビ番組にも多数出演。著書は『さかな博士のレアうま魚図鑑』

さかな芸人ハットリさんと中学生さかな博士・伊藤柚貴くん出演!
6/6(日)無料のトークライブ(オンライン配信)を開催します♪


2021年6月6日(日)11時〜12時、伊藤柚貴くんと、さかな芸人ハットリさんをゲストに交え、「おいしい!楽しい!島の魚食図鑑」スペシャルトークライブをオンライン配信します。
親子で楽しめる、無料のトークライブ。「島が大好き」「お魚大好き」という方、「魚食嫌いのお子さんがいる」という方にもおすすめします!

特集記事 目次

特集|おいしい!たのしい!島の魚食図鑑

海に囲まれた島国・日本の近海には約4,000種もの魚が存在し、海と共に生きる人々が多く暮らす島々には、個性豊かな魚食が存在しています。「おいしい!たのしい!島の魚食図鑑」特集では、リトケイ読者が選ぶ「忘れられない島の魚」や、島や魚を愛する人々のインタビュー、5つの離島エリアでの現地取材記事などなど、おいしい海の幸を盛りだくさんに「島の魚食」の魅力をお届けします。

この特集は、日本財団「海と日本PROJECT」の助成を受けて制作しています。

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