つくろう、島の未来

2020年08月10日 月曜日

新型コロナウイルスの収束が不透明ななか、この難局を超えるためのヒントを探るべく2020年4月21日に開催した、リトケイと小値賀島(長崎)、深島(大分)、上甑島(鹿児島)、沖永良部島(鹿児島)の4島のオンライン座談会の後半(前半はこちらからご覧ください)。

4月21日 小値賀島・深島・上甑島・沖永良部島
新型コロナの影響とこれから(後半)

リトケイ

何とかお金が回るといいなと思い、リトケイでも「未来のわたしに島旅を。今のわたしに島ギフトを」というウェブ企画をつくり、島の皆さんにお声掛けさせていただいています。ECについて少しお話を伺ってもよいでしょうか?

安倍
深島

うちは島のばあちゃんたちと一緒につくっている味噌と、私たちが運営している宿の宿泊チケットを「ディープマリン」の名前で販売しています。

阿部さんが運営するでぃーぷまりん深島のオンラインショップ https://fukashima.thebase.in/

小高
小値賀島

しまうま商会は、外に流通させる方法がなく、基本的にすべて島の中で循環している商品を島外に紹介することで、島に外貨を入れることを目的につくった会社です。その取り組みのひとつとして島の特産品を販売するネットショップを運営しています。ネットショップでは、島の加工事業者、製造会社、そして町の財団法人である小値賀島担い手公社さんの商品を販売しています。近隣の島の商品も一部お取り扱いさせていただいており、現在ネットでは200点ほどの商品を取り扱っています。

小値賀島の産品を販売するしまうま商会のオンラインショップ http://www.shima-uma.net/

木寺
小値賀島

おぢかアイランドツーリズムでは、宿とアクティビティと飲食の前払いチケットを販売していて、代金を事業者に入金しています。今、さらに事業者を増やしているところです。手数料は今の所うち(アイランドツーリズム)が持つようにしています。島外の方の応援とともに、地元でも結構反響があります。

リトケイ

手数料をアイランドツーリズムさんが持ってしまうと、厳しいのではないでしょうか?

木寺
小値賀島

現状、観光はストップしていますし正直なところかなり厳しいですね。この課題については町も認識してくれていて、今サポートの方法がないか検討してくださっています。

おぢかアイランドツーリズムで販売している島宿や飲食店などの前払いチケット https://ojikajima.thebase.in/

リトケイ

アイランドツーリズムさんの売り上げになる部分はあるんですか?

木寺
小値賀島

宿泊業者さんの販売している前払いチケットに、普段は島内の宿泊施設などで販売していただいている『小さな島で』という本をセットで付けさせてもらっていて、本の代金はアイランドツーリズムの売上になります。また、本を買っていただきやすいよう、本の単品売りも始めました。

小高
小値賀島

木寺さんをはじめとするおぢかアイランドツーリズムの皆さんは、今回の前払いチケットの取り組みに対して、ご高齢の宿泊事業者さんにも「コロナでこれから世の中が変わっていくから」「島の外には小値賀のことを応援してくれる人がたくさんいるからやってみないか」って、一軒一軒説得をしていて、素晴らしいと思います。

牛たちが草を食むのどかな風景が広がる小値賀島(提供・しまうま商会)

リトケイ

そういった動きのできる方がいる島は強いですよね。小値賀島と沖永良部島は事業者が直接ECサイトを運営するのではなく、観光協会がとりまとめて販売している状態ですが、沖永良部島の販売商品はいかがでしょうか?

古村
沖永良部島

そうですね、今はホテルが13カ所、アクティビティーが6カ所、飲食店17カ所。あと、物販もありますが、やっぱり手数料の問題がどうしたものかと……。うちは事業体が一般社団法人で、町からの負担金も運営資金の中に入っていますが、手数料を負担するまでの運転資金を考えるときつい状態です。(手数料がどのくらいの規模になるのか)具体的な数字を出して、手数料分だけでも負担していただけないか町に相談しているところです。

おきのえらぶ島観光協会でも宿泊施設やアクティビティの前払いチケットを販売中https://okinoreabu.theshop.jp/

リトケイ

手数料部分、どうにかできるといいですよね。前払いチケットの売り上げも観光協会が取りまとめていらっしゃいますが、お金の流れはどのようになっているんですか?

古村
沖永良部島

入金を確認してから2〜3日後には即座に(各事業者に)現金を振り込み、購入者の情報を事業者に渡しています。

リトケイ

観光協会自体も売り上げがない状態ではないでしょうか?

古村
沖永良部島

僕らの事業主体(おきのえらぶ島観光協会)も売り上げがほとんど見込めない状態になっていています。

リトケイ

きついですよね。

古村
沖永良部島

だから今、島内の官公庁に行って、「島のお菓子を食べてください」と営業をかけています。観光協会で預かっている特産品などを、学校、役場、病院、介護施設などで、積極的に買って、食べていただく活動です。

沖永良部島の景勝地「田皆崎」(提供・おきのえらぶ島観光協会)

古村
沖永良部島

そしてもうひとつは、島内に小学校が9つ、中学校が4つ、高校が1つあるんですけれども、修学旅行がすべて来年1月に延期になりました。1月でも本当に行けるか疑問ですが、修学旅行を何とか実現させてあげたいので、島内のアクティビティや島内宿泊所を使った、島内での修学旅行ができないかと考えています。

リトケイ

島内の修学旅行は面白いですね。そんな企画がない限り、地元の宿泊施設に泊まる経験もできませんし。甑島はどうでしょう?

山下
上甑島

僕らはもともと、お客さんがただ寝るだけの宿であるなら、(宿の経営を)始めていなかったと思うんです。僕らの宿は、(超有名観光地ではない)島をどういう風に知ってもらうかを考えて「甑島の日常に渡す小さな島宿」というコンセプトを立てていたので、そこを改めて考えました。

リトケイ

初心に立ち戻ったわけですね。

山下
上甑島

日常に渡す宿であるのに、身勝手に休業してしまうと、漁をしている漁師さんとか、農家さんとか、周囲への影響が少なからず出てきます。そういうことに、モヤモヤを抱えていて、その人たちと今の自分にできることは何か? と考えていた時に、昔、取得してそのまま放置していたECサイトのことを思い出して、そこで宿の前払いチケットや商品の販売を始めました。

上甑島のFUJIYA HOSTELの前払いチケットや島の産品を販売中 https://ysst.base.ec/

山下
上甑島

そのあと、普段からお世話になっている島の人からも「何とかしたい」「(EC販売を)やりたいけどどうしていいか分からない」という反響があったので、この2週間で16商品まで増やしている状態です。

リトケイ

ECサイトを通じてお客さんに直接販売するというのは強い印象ですか?

山下
上甑島

そうですね。通販会社ではないので限界がありますが、僕らの守れる範囲として少なくともうちの宿に関わっていただいている島の人たちに、安心してこれから先も(事業を)続けてもらえることができるように必死になってやっています。

山下さんのECサイトで販売されている「日本一のきびなご」 https://ysst.base.ec/

山下
上甑島

だけど、実際にはモノを売っている感覚はなくて、僕らは何を届けているのかを考えています。なぜこの商品を扱っているのか、毎日のように言葉をブラッシュアップしていて。無理やり、広告費をかけて大量に販売しているといつか限界がくるので、そうでない価値観や世界観を大切にしようとしています。

リトケイ

古村さんは先ほど「1年かかる」という可能性もお話されていましたが、皆さん、この状態が1年かかると仮定したときに、課題やアイデア、手伝ってほしいことなどはありますか?

小高
小値賀島

「帰ってこないでほしい」という宣言は島を守るうえでは英断ですが、島から都会に出ている人が大人数いて、仕事も失い、ふるさとにも帰れないような人のためにできることはないのか? とずっと考えています。

例えば、ECサイトやネットショップというサービスを使って、島に帰れない家族のところに何かを届けるとか、帰れない人たちの代わりにできることはないかと考えていますが、一方で、運送会社さんに負担がかかることも離島の辛さで……。皆さんの力がないと、何も運ぶことができないんですよね。

リトケイ

確かにそうですよね。

安倍
深島

深島は小さいので、島に住んでいる自分たちだけではなく、本土側にある佐伯市内のネットワークも含めて考える必要があると思ってます。例えば、先程話に出た地域内の修学旅行なども考えていかなければ……なんですが、そういう時に、今、オンラインで話をしているようにZOOMをつないで何かを進めるのって、今まで直接会って話をしてた人とはなかなか難しい。

約15人が暮らす深島の風景。たくさんの猫たちが暮らす島としても知られている(提供・阿部あづみさん)

安倍
深島

佐伯市内の人たちとやっていくこと、隣の屋形島、大入島、大島と足並みをそろえること、自分たちだけでやっていくことを区別しながらやっていきたいなと、自分勝手には思っていますが……。

リトケイ

オンライン会議でものごとを進めるって、普段から慣れている人じゃないとなかなか難しいところがありますよね。甑島はいかがですか?

山下
上甑島

正直、地域のことはこれからです。答えのない局面で、保守的ではない考えを表現すると批判の矢面に立たされやすいですよね。これは、僕があまり言うことを聞かないからなんですけど(笑)。

リトケイ

島外から入ってくる情報量も多くて、行動力もある人だと、そういう側面を持ってしまいますよね。

山下
上甑島

今、うちで管理している物件は島内に10軒あって、そのうちの9軒が同じ町の中にあって、6軒は半径400メートル以内に集合しています。島外に依存している商売は厳しいけど、ベーカリーや豆腐屋の売り上げは大幅に変化していないことを考えると、マイクロコミュニティを大切にしたビジネスは今、強いと感じています。

上甑島で早朝からつくられている豆腐製造の風景(提供・東シナ海の小さな島ブランド社)

リトケイ

都市部の商店街でも、もともと地元からの需要があるお店は強いですね。

山下
上甑島

外と繋がって依存している商売がことごとく崩れ落ちている印象です。例えば、南海トラフの地震が予想されていたり、すごい勢いで石油の価格が下落していたりしますが、そういったことが起きて、今までの概念が全部ひっくり返るようなことが起きてもおかしくない。だから、150人の集落でエネルギー事業を立ち上げたり、長期的な話では自分たちでファンドを立ち上げるとか、そういうことをマイクロコミュニティに持ち込んで、その上で、外と繋がっていくような風にしていけたらなと考えています。

リトケイ

山下さんはコロナ以前、ものすごい数の島外出張に出かけていましたよね。そういう意味では、今ほど島の中にいることはなかったかもしれないので、内側を見つめる時間にもなりそうな気がします。地域内での持続可能性を追求するという点では、沖永良部島の活動も盛んですが、古村さんはいかがですか?

古村
沖永良部島

そう、4年くらい前から仲間たちと「自足」の概念について考えながら活動しています。沖永良部島には東北大学の石田教授が住んでいるんですが、石田教授はよく「バックキャスト(※)」とおっしゃっていて、それはつまり、制約を受け入れてどうやっていくか? ということ。地球温暖化もコロナも、完全になくなる保障はないなか、ずっと付き合っていく可能性を考えた時に、「移動できない」という制約に対して、どのようにルールをつくっていくのか? ということを考えていこうと思っています。

※制約を肯定して解を求める思考法で、地球環境問題など制約が排除できない問題の解決に効果的な方法。制約を排除して解を求める思考はフォーキャスト思考と呼ばれる

リトケイ

SDGs(持続可能な開発目標)の考え方でもバックキャストは重要ですよね。

古村
沖永良部島

何もなければ、2040年とかに来ると言われていた苦境が、1カ月後にきてしまったという状況が今だと思うんですが、この状況でどうやって経済活動をするのか?というのを、商工会や農家さんなどいろいろなところと連携し、助け合いながら進めていきたいです。

沖永良部島の「エラブユリ」。島では花卉栽培や農業が盛ん(提供・おきのえらぶ島観光協会)

古村
沖永良部島

沖永良部島には大学のサテライト(詳細はこちらのリトケイ過去記事を参照ください)もあって、通信教育で島にいながら4年生大学の単位が取れます。エネルギー問題もしかり、集落というコミュニティで何かを考えていくには良いきっかけかもしれません。

リトケイ

もともと持続可能な地域のあり方を考えていた島にとっては、これまで少しずつ動かしてきたことを一気に実践するタイミングとなっているのかもしれません。

古村
沖永良部島

それと、先払いチケットは島の中の人も結構買ってくれています。顔が見える間柄で、血の通った経済活動を探していくことも大事だなと思います。

リトケイ

最終的にはどの活動も、島の持続可能性につながっていってほしいです。リトケイでもECサイトの宣伝はしたいものの、島々がどうしたら持続していけるのかも、リトケイのメディアを通じて、皆さんと一緒に考えていきたいです。皆さん、今日はありがとうございました。


今回、登場いただいた島々の商品はこちらのページよりご購入いただけます。

コロナ禍にある今、リトケイでは「島と人の今と未来を守るためのヒント」を探るべく、過去の記事にご登場いただいた方々を中心に、オンライン座談会やオンラインインタビューを実施し、当サイトから発信して参ります。

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新型コロナウイルスという難局を超え、島と人の、今と未来を切り拓くヒントを共有する、島々×リトケイの「オンライン座談会」や「オンラインインタビュー」

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