つくろう、島の未来

2020年10月01日 木曜日

新型コロナウイルス感染症の影響により、4月16日に「石垣市緊急事態宣言」を発令した石垣島では、5月31日まで宣言の継続が予定されています。

八重山諸島の中心島として、2019年度は147万人を超える観光客が訪れた石垣島(いしがきじま|沖縄県)も、人影がまばらとなり、昨年3月に126,948人だった入域観光客数も、今年3月は78,704人まで激減。4月以降は「観光客はほぼゼロ」となり、観光関連事業者をはじめ、農業漁業に携わる生産者など多くの人が苦境に立たされています。

そんななか、島内では飲食店や、観光関連事業者、農家などの生産者を応援するべく、新たな循環をつくる動きが加速。石垣島グルメプロモーション協会の池淵功寛さんに話を伺いました。

人影が消えた観光の島。多くの事業者が休業状態に

リトケイ

現在の石垣島はどのような様子でしょうか?

池淵

テレビでは「石垣島に観光客が押し寄せている」というニュースもありましたが、過剰な報道もあった印象で、4月の緊急事態宣言後は観光客はほぼゼロで、人もほとんど歩いていません。(島内で)感染者が出た時は大騒ぎになりましたが、今は落ち着いています。

観光客の姿が消えた石垣島の様子(画像提供・石垣島グルメプロモーション協会)

リトケイ

休業状態にある事業者も多いのですか?

池淵

観光業は休業状態で、飲食店も6割程は閉めていて、開けているお店はテイクアウトなどをされています。

リトケイ

給付金などでしのぐ状態でしょうか。

池淵

雇用助成金の申請もできますが、石垣島には個人事業者が多く、雇用保険が支払われていないバイトの人も多いんです。また、雇用助成金を申請しても、バイトや役員には支払われませんし、給付金も住民票を石垣島に移さないままダイビングショップや飲食店で働いているバイトや、島外から建設工事に来ている作業員などもたくさんいて島では申請ができない状態です。

リトケイ

石垣島に住民票を移さないまま石垣島に住んでいる長期滞在者ってどのくらいいるんですか?

池淵

石垣島の人口は5万人弱ですが、実際は7万人程滞在しているんじゃないかと言われています。

リトケイ

すごい人数ですね。

池淵

建設工事などは(コロナ禍でも)そのまま仕事を続けられていますが、観光関連事業は何もすることがないですね。

新たな循環をつくる飲食店と食卓を結ぶデリバリー代行サービス

リトケイ

そこで今回、島の飲食店と食卓を結ぶデリバリー代行サービスとして『石垣島ぐるデリ』を思い立ったわけですね。経緯を教えていただいてもよいでしょうか?

池淵

はい。石垣島のほとんどの企業や店舗が苦しい状況で、住民もお店に足を運んで食事をすることが出来ない状況になったので、石垣島でも飲食店がテイクアウトに踏み切るようになりました。

そのため石垣島グルメプロモーション協会では、特設ホームページを開設して、SNSでテイクアウトが可能な飲食店を紹介したり、「テイクアウトできます」というのぼり旗の無償配布などを行ってきました。

テイクアウト可能な飲食店の目印となるのぼり(画像提供・石垣島グルメプロモーション協会)

リトケイ

石垣島にはどのくらいの飲食店があるんですか?

池淵

飲食業協会に登録している店舗だけでも約250店舗あるので、全体では500店舗以上あると思います。

リトケイ

石垣島は市街地中心にバラエティに富んだ飲食店がたくさんある印象です。

池淵

そうですね。もともとは食堂が圧倒的に多かったんですが、最近は観光向けのカフェも多くて、海沿いにはアジアンテイスト、ハワイアンテイストのカフェがあり、居酒屋、ダイニングレストラン、焼肉屋も多いですね。

リトケイ

そういったお店が皆さん、お困りなんですね……。

池淵

はい。個人店が多いのでテイクアウトには踏み切れても、デリバリーまではできないお店が多くて、首都圏のようなデリバリー代行業などもないので、島の飲食店と食卓を結ぶデリバリー代行サービス「石垣島ぐるデリ」をスタートすることにしました。 

リトケイ

具体的にはどんな仕組みでしょう?

池淵

家や職場に居ながら島内飲食店の料理デリバリーを注文できるウェブサービスで、飲食店は、お客様の注文情報を「石垣島ぐるデリ」から受け取り料理を用意。そのお料理を「石垣島ぐるデリ」の配達員が、お客様が指定した届け先までデリバリーする仕組みです。

「石垣島ぐるデリ」の仕組み(画像提供・石垣島グルメプロモーション協会)

池淵

飲食店の「石垣島ぐるデリ」への登録料は無料で、月額料金なども一切かからないようにしますが、メニューの受注が完了した時のみ、クレジット決済手数料を含めたサービス利用手数料14%かかる仕組みです。

リトケイ

お客さまの負担はあるんですか?

池淵

お客様には1回(1店舗)のご注文につきお品代と390円の配達料をウェブ上で決済していただきます。この配達料は全額、配達員に支払われます。

数百社にのぼる観光関連事業者を配達員に

リトケイ

どんな人が配達員になるのでしょう?

池淵

新型コロナの影響で、レンタカーやタクシー、マリンショップなども売り上げが激減しているので、まずはこうした事業者に配達業務を委託し、観光客が戻ったら少しずつ個人の一般配達員にシフトさせていく予定です。

リトケイ

観光事業者は全体でどのくらいいるんですか?

池淵

ダイビングショップだけで300社程あります。マリン関係の方は副業をしている人も多いのですが、今年は繁忙期の売り上げが飛んでしまう状況です。(配達業務の委託だけで)金銭的にすべてサポートするのは難しいですが、仕事があって活躍できる場所があるだけでも精神的に良いと思います。

リトケイ

いま、実施されているクラウドファンディングでは、この仕組みをつくる立ち上げ資金を募っているわけですね。

池淵

はい。目標は200万円で現在までに100万円のご支援をいただいているんですが、ご支援金を初期費用に活用させていただくことで、一般的には飲食店の登録費用と販売手数料が20〜35%になるところを、販売手数料14%に抑えて運用できると試算しています。

「石垣ぐるデリ」でデリバリーできるメニューのイメージ(画像提供・石垣島グルメプロモーション協会)

リトケイ

コロナ禍でさまざまな仕組みが登場していますが、これをきっかけにコロナ後にも活用できる良い仕組みになるといいですね。

池淵

支援者の中には「この仕組みをこんな風に活用できるのではないか?」とアドバイスもくださる方もいて、面白い話だと「デリバリーサービスの仕組みを介護福祉に使えないか?」という話もありました。

リトケイ

介護福祉分野に展開できるんですか?

池淵

ウェブで決済できるので、内地に住んでいる子どもや孫が、島のおじいちゃんおばあちゃんに健康的なごはんを届けたり、地元のオーガニック食とか、昔おばあちゃんが好きだったお店の味とかをプレゼントできるかもしれません。

リトケイ

面白いですね。

池淵

今回のことで気が付いたのは、石垣島グルメプロモーション協会にいる僕たちでも知らないお店があったことです。地元では知られていないけど、観光客に人気のお店があったり。

ですので、今回を機に島内に新しい循環ができて、利用してくれる人が増えたらと思います。

行き場を失ったパインをマスコットキャラが応援!

リトケイ

飲食のほか、石垣島で課題になっていることはありますか?

池淵

ちょうどこれからがパインやマグロの時期なんですが、今年は飛行機が減便されているので冷凍物流が難しく、本土側も飲食店が休業していたりで出荷先がない状態です。

本当だったらこの時期は東京や海外で石垣島のプロモーションをしている予定で、島内の農家さんに発注していたものもすべてキャンセルし、お土産屋さんにも全品返却となりました。

リトケイ

苦しい状況ですね。

池淵

パインは2年かけて育てているのに、収穫の人手も見込めず、売り先もないので収穫しないで見過ごすという人の声も聞こえているので、「ぱいーぐるの恩返し」という特産品の流通販売を応援する企画もスタートしました。

特産品をPRする石垣島のご当地キャラ「ぱいーぐる」(画像提供・石垣島グルメプロモーション協会)

リトケイ

苦しい状況でも様々な企画が立ち上がっているんですね。

池淵

ありがたいことに、石垣島にはいろんなスキルを持った人がいるので、新企画を立ち上げる時も前向きに「こんなことができるんじゃないのか」「こういう風にやったらいいよ」と言ってくれる仲間がいます。

自分だけだと不安になることも、情報を仕入れてくれたり、方向性のズレを修正してくれる仲間と、自信を持って進めるのがありがたいです。

飲食店を1軒1軒まわっていると、これまではスーパーで買っていた食材を地元産の卵とか野菜に変えて、地元の食材をできるだけメニューに取り入れるようにしているお店も増えているので、コロナをきっかけに今まで忘れていた島の恵みへの感謝を思い出せる機会にもなると思います。


【関連サイト】
石垣島の飲食店と島の食卓を結ぶデリバリー代行サービス『石垣島ぐるデリ』
石垣島グルメプロモーション協会
ぱいーぐるの恩返し(ぱいーぐるオフィシャルサイト)

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