つくろう、島の未来

2024年03月28日 木曜日

つくろう、島の未来

4月28日、インターネットを介して生産者と購入者をつなぐ「デリ河岸(デリカシ)」が立ち上がりました。

運営するのは、大分県の姫島(ひめしま|姫島村)の株式会社おおいた姫島。約1,900人が暮らす1村1島の離島・姫島出身で同サービスを立ち上げた小岩直和さんに話を伺いました。

本企画では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて苦境に立たされる、島の暮らしや経済を支える動きを【コロナに負けるな!】と題して紹介します。

大分離島・姫島で生まれたプロ専用「デリ河岸」とは?

リトケイ

4月28日にオープンされた「デリ河岸」について教えてください。

小岩

もともと、全国の飲食店や小売店と地方の農家さん、漁師さんをつなぐオンライン市場(河岸)として、2020年7月にオープンする予定でした。

一般向けではなく、飲食店や小売店などへの卸しを目的にしたプロ専用サービスとして開発しましたが、コロナ禍で飲食店も生産者も苦しい状況となったため、正式オープン前の準備期間中に、一般消費者向けにサービスを解放することになりました。

デリ河岸を運営する株式会社おおいた姫島代表の小岩直和さん。リトケイの鯨本あつこがオンライン取材を行いました

リトケイ

小岩さんは全国の百貨店や通販サイト等で姫島の産品を販売されてきた経験をお持ちですが、ご自身で新しいサービスをつくられたきっかけは?

小岩

百貨店催事などで、同じように地方の特産品を売る販売者や生産者の声を聞いてきました。どの地域も少子高齢化で、後継者も不足しており、漁業の低迷など、姫島と同じ課題を多く抱えていることを知りました。

しかしその一方で、どこの地域にも良いものをつくる農業者や漁業者がいて、そういう生産者の想いや、良質な食材を直接小売店や飲食店に届けることができれば、離島でも持続可能な産業が構築できると思い、デリ河岸を構想しました。

地方の新鮮素材をお取り寄せできる「デリ河岸」 https://delikacy.jp/

リトケイ

開発におおいた姫島のほか、どういったパートナーが携わっていますか?

小岩

姫島村は「ITアイランド構想」を推進しているので、都市部のIT企業が複数社、サテライトオフィスを構えています。デリ河岸の開発では、姫島にオフィスのあるIT企業や大分県の協力をもとに開発しました。

リトケイ

インターネットを介して生産者が購入者と直接、商品を売り買いできる仕組みといえば、「ポケットマルシェ」や「食べチョク」など複数のサービスがありますが、デリ河岸のサービスにはどのような特徴がありますか?

小岩

前提として(生産者にとって)商品を販売できる出口はいろいろあった方がいいと思っていますが、(デリ河岸は)例えば「鯛だけが欲しい」という飲食店があったら、デリ河岸のLINEで「鯛」をチェックしていれば、生産者が鯛を出品した時に即時通知がきて、購入できるような仕組みです。

「魚介類・水産加工品」「農産物・農産加工品」「精肉・肉加工品」のカテゴリから希望産品をチェックできる

リトケイ

生産者側からすると、魚が獲れた瞬間にデリ河岸を通じて飲食店に直接販売できるわけですね。

小岩

また、生産者の顔が見えることも大事にしています。大分の離島でいえば「大入島の宮本さんの牡蠣」とか「屋形島の後藤さんのヒオウギ貝」など、個人にブランドがついてくれば、高級レストラン等でストーリーつきでお客さんに提供することができるからです。

リトケイ

離島地域の産品は一大消費地に近い地域よりも送料が高くなるので、ブランド力も重要ですね。

小岩

ただ、生産者に話しているのは、このシステムだけで全てを賄えるわけではないことです。デリ河岸のシステムをつかって、売り上げを1.1〜1.2倍程度にしながら、自分自身に価値をつけていってはどうですか? と提案しています。

リトケイ

生産者自らがデリ河岸を活用しながら自身のブランド力を養っていくイメージですね。

小岩

離島や地方には可能性のある食材がたくさん眠っているので、デリ河岸を通じて離島のような地域の生産者ネットワークをつくれたらと思っています。

リトケイ

「デリ河岸コンソーシアム」という任意組合も設立されていらっしゃいますね。

小岩

私はデリ河岸ができたことで、島の生産者と飲食店の悩みを聞ける立場になれたんですが、島の生産者仲間が増えれば、各地の食材をまとめて飲食店に提案することもできますし、課題を持っている産品の販路をみんなで考えることもできます。

大入島の宮本さんや屋形島の後藤さんは、自分でも販売をしていますが、そうした事業者さんは、一般消費者向けに販売する価格と、飲食店向けの卸価格が違っていることが課題だったりします。

一方、(自分では販売していない)漁だけを一生懸命やっている人ですと、(自分で販売したくても)システムにさわることができないという課題を持っていたりします。

デリ河岸では現在、姫島のほか、大入島(おおにゅうじま)、深島(ふかしま)、屋形島(やかたじま)などの特産品が販売されている

小岩

いいものをつくっているのに、市場にしか販路がないというのは厳しいけれど、かといって量産しているところが、個人向けに販売するのも簡単ではない。こういうバランス感覚を、飲食店と生産者側の悩みを共に聞きながら、みんなで解決してけたらと思っています。

リトケイ

デリ河岸をプラットフォームとして、島の生産者同士がチームとなれる可能性があるわけですね。

小岩

(生産の問題において)一番困っているのは行政ではなく、末端にいる生産者です。

本来は、材料が持っている生産者が強くないといけないのに、市場向けに出すと買い叩かれて、安い時期に買った業者が儲けを出している。そういった状況を、生産者同士がつながることで解決していけたらと思います。

リトケイ

コロナ禍は想定になかったと思いますが、生産者や飲食店などの登録はどのくらいの規模を目指しているんですか?

小岩

生産者側では、正式オープンとなる7月1日時点で、大分県内の生産者と、レトルト加工などを行う業者も含めて20組程度に登録いただくことをイメージしています。

飲食店側は1,000〜2,000軒を目標にしたいので、広報パンフレットづくり等を進めています。コロナ禍については地道にやっていくしかありません。

リトケイ

現在は、大分県内の生産者中心に登録されているようですが、他の島々の生産者でも登録できるんですか?

小岩

もちろんです。今のところ登録は承認制にしていますが、確実に仲間を増やしていきたいと思います。

離島地域の生産者でも登録できるデリ河岸の詳細は、公式ホームページよりご覧ください。


【関連リンク】
地方のとれたてをいつでもお届け「デリ河岸」 https://delikacy.jp/

特集記事 目次

島と人の今と未来を守るには? 新型コロナと生きるアイデアと課題を共有

新型コロナウイルスという難局を超え、島と人の、今と未来を切り拓くヒントを共有する、島々×リトケイの「オンライン座談会」や「オンラインインタビュー」

ritokei特集