つくろう、島の未来

2020年05月29日 金曜日

聞きなれないウイルスに感染し、重症化した患者が肺炎を発症するという事例が、日本国内で報道され始めたのは2020年1月のこと。

その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界各地に広がり、3月12日にはWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)状態であることを発表。日本国内でも学校の休校や不急不要の外出自粛、3密(密集・密接・密閉)の回避が叫ばれ、4月7日には感染拡大が特に懸念される7都府県が新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」の対象地域となり、4月16日には全国47都道府県のすべてがその対象となりました。

こうした状況を受け、国内約420島の有人離島を有する市町村でも、4月初旬から住民の移動や観光客の来島、出身者の帰省などを自粛するよう呼びかける動きが拡がってきました(詳細は「島々からの渡島自粛要請まとめ」へ)。

万が一、医療体制が万全でない島で感染症が蔓延してしまえば、島の生き字引でもあるお年寄りに、島の経済や社会を支える現役世代、島の未来を担う子どもたちまでが危険にさらされてしまいます。

一方、人の移動や接触が制限されることで、モノやお金の流れも滞り、宿泊施設や飲食店、交通機関をはじめ、島の経済を回してきた多くの事業者が、休業状態となり、廃業する事業者も現れています。

では、感染症の蔓延を防ぎながら、島の経済と社会を維持していくためにはどうすればよいのでしょうか。

リトケイでは、少しでも島の経済を回していけるよう「未来のわたしに島旅を。今のわたしに島ギフトを」というウェブ企画を通じて、「宿泊料金の前払い」や「島産品の通販」ができる予約・購入サイトを集め、PRする活動も始めていますが、新型コロナウイルスの収束は未だ不透明です。

そこでこの先、どのように島の未来を考えていくのがよいのか、ヒントを探るため、島を支える当事者に直接、島の状況を尋ねるオンライン座談会を開きました。

小高陽子さん・木寺智美さん(小値賀島)、山下賢太さん(上甑島)、安倍あづみさん(深島)、古村英次郎さん(沖永良部島)、鯨本あつこ・多和田真也・宮本なみこ・矢吹飛鳥(以下、まとめてリトケイ)

参加いただいたのは、同企画にECサイトを掲載している小値賀島(長崎)、深島(大分)、上甑島(鹿児島)、沖永良部島(鹿児島)の4島。

この会は当初、島とリトケイで意見交換を行うだけの非公開の場として開きましたが、対話を進めるうちに、新型コロナウイルスという難局を超え、島と人の、今と未来を切り拓くヒントが散りばめられていたことを実感したため、参加者の了解を得て公開させていただくことにしました。

島と本土を行き来できない今、島を支える人と、想う人の知恵を集め、難局を乗り越えるために、私たちは何を考えていけばよいのでしょうか。

4月21日に実施したオンライン座談会から、一緒に考えていきませんか?


4月21日 小値賀島・深島・上甑島・沖永良部島
新型コロナの影響とこれから

リトケイ

今日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、みなさんの島ではコロナの影響はいかがでしょうか。

山下
上甑島

甑島列島は、本土と合併をした薩摩川内市の一部離島です。自粛要請のタイミングは早いとは言い切れず、ようやく昨日(4月20日)、市のホームページに甑島列島への渡島自粛のメッセージが掲載されました。私たちの宿は、3月中旬ごろから自粛の検討をはじめ、他の離島で感染者の発表があったことを重く受け止めて4月3日に、いち早く新規のご予約を停止し、実質休業を発表したのですが、島ではそれがきっかけで色々な批判もあります。

リトケイ

自粛で批判されてしまうんですか?

山下
上甑島

観光以外にも仕事で島を訪れている業者さんなどもいらっしゃるなか、「来島者(業者)を受け入れている自分たちは悪者か?」「自分のところから(感染者が)出ないように先に自粛を始めて責任は他にたらい回しか?」など。我々の配慮が足りていない部分も過分にあったかと思いますが、危機的状況においては、それ以上に守らないといけないものもあり、私たちはそれをやむなく優先しました。

山下賢太さん。鹿児島県薩摩川内市の一部離島・上甑島出身。進学後、島にUターンし東シナ海の小さな島ブランド社を立ち上げ、豆腐屋やベーカリー、FUJIYA HOSTELなどを経営する http://island-ecs.jp/ 。山下さんのこちらのインタビュー記事もご参考ください

リトケイ

行政が方針をはっきり出していない状況では自粛要請が事業者任せになってしまうので、良かれと思って行動したところで、トラブルになるということですか……。

山下
上甑島

インターネットを介して情報を得る人たちと、そうでない人では情報量が違うので、(いかに行動するか)温度感があります。コロナ云々というよりも、人の噂で人が窮地に立たされている状態も一部ありますね……。

リトケイ

4島のなかでは上甑島と深島が一部離島ですよね。深島も自治体からの自粛要請はまだですよね?

安倍
深島

佐伯市には4島の島があって、それぞれの船の運航会社が自粛のお願いを出していますが、 自治体からの要請はまだ特にないです(※)。 ※オンライン座談会が行われた4月21日時点の状況。その後、佐伯市は4月24日に渡島自粛要請を発表しました。

安倍あづみさん。深島出身の夫・阿部達也さんと結婚し2016年より深島在住。2児の母として、島を支えるひとりとして、深島みその製造販売や宿、飲食店の経営を行なっている。深島は大分県佐伯市の一部離島

リトケイ

沖永良部島ではコロナウイルスの感染者も発生されましたが、現在はいかがでしょうか?

古村
沖永良部島

「島へのコロナウィルスの流入は3月23日」と報道がありましたが、発症者は発熱してからPCR検査を受けるまでに数日かかっており、島内の濃厚接触者が19人出ました。幸いその後はひとりも感染者が出ていないので、ことなきを得ていますが、問題は私たち(民間人)のもとに情報が一切入ってこないことでした。どこの病院に入院しているのかすら分からないので、想像で地域がおかしくなる現象が起こりそうになっていました。

リトケイ

先ほどの上甑島のように人の噂で島の人たちが苦しんでしまうような。

古村
沖永良部島

沖永良部島の人たちが冷静に対処をしてくれたので、(悪い噂の)広がりはなかったんですけど、島に感染者が出たことで飲食店は10日間ほど、ほぼ稼働しない状態で、ホテルも4月1日からゴールデンウィークまでの予約が全部なくなりました。感染者が出るまでは、島内の人たちも(島外を)行ったり来たりしていましたが、以降はその流れも止まっています。

古村英次郎さん。奄美群島・沖永良部島出身。おきのえらぶ島観光協会事務局長。同協会は和泊町・知名町の両町にあった観光協会を統合し、2015年に発足 http://www.okinoerabujima.info/

リトケイ

沖永良部島は和泊町と知名町の2町1島で、来島自粛のメッセージは両町の連名で出されていますね。

古村
沖永良部島

観光協会と商工会の会長連名で両町に要望書もっていき、来島の自粛要請を両町から出してくださいとお願いしました。行政も準備をしていたので翌日に来島自粛の要請を出していただきました。

リトケイ

そして今は、島の産品や前払いできる宿泊チケットをECサイトで販売されている状態ですね。

古村
沖永良部島

観光協会でも島の特産品を預かって販売していますし、飲食店の皆様の協力をしていこうと、ECサイトを使って販促をしていました。ここ1年は島外のお客さんを見込めないかもしれない状況で、島内の経済をどう動かしていこうかということを、一番に考えながら動いています。

おきのえらぶ島観光協会のホームページ内で島内で生産される産品を販売中 http://www.okinoerabujima.info/

リトケイ

ここ1年……。そうなる可能性もありますよね。

古村
沖永良部島

イタリアやフランスに比べると(日本は)そこまで厳格に規制しているわけではないので、本当に怖いのはゴールデンウィ

ークです。
リトケイ

やはり人の動きがありそうですか?

古村
沖永良部島

島の人にも親心があります。進学で今年初めて島外に出た子どもたちが、学校もなく、バイトもできない、何もすることがない状態となると、やっぱり帰ってこいと呼び戻したくなるのが現実です。

リトケイ

学生はもちろん、大都市で仕事を失って家賃も払えなくなるような、苦しい出身者もいますよね。

古村
沖永良部島

今、行政に相談しているのは、休業状態の宿泊所を2週間の待機施設とし、島外から帰ってきた人たちはそこに滞在してもらう、という仕組みです。夢をもって島から送り出した子どもたちに、帰ってこいとも言えない島になってはいけない。

リトケイ

海外に取り残されてしまった日本人をなんとか帰国させているようなイメージですよね。

古村
沖永良部島

ただ、すごく難しい問題で、今でも「自宅待機してください」と言う町内放送は流れていますが、おそらく帰省する若い子たちの中には2週間の自宅待機に耐えきれない子が出てくるかもしれない。どうやってルールづくりしていくか、知恵を絞らないといけないんです。

リトケイ

そして何とか、休業状態にある宿泊施設の稼働にもつながるといいですよね。小値賀島はどうですか?

小高
小値賀島

4月8日に町長名で旅行自粛と帰省自粛の要請が出されました。人口2,300人ぐらいの小さい島で、もしウイルスが入ってきてしまったら大変なことになるので、島の観光窓口である「おぢかアイランドツーリズム」さんと町が協議を重ねながら、小値賀町として柔軟にしっかり対応してくれている状態です。 

 
リトケイ

観光事業者などの反応はいかがですか?

小高
小値賀島

うちは港のお土産屋なので、私自身にとっても生産者さんにとってもものすごい打撃ですが、他の事業者さんからの(自粛要請に対する)怒りは感じていません。みなさん、とても辛い状況ですが、早く宣言をしてくれてよかった、何とか(状況を理解して)生き延びられるように頑張っていこうという意識でいます。

長崎県の五島列島の北端に浮かぶ小値賀島でアイランドツーリズム(島暮らし体験)を案内するおぢかアイランドツーリズムの木寺智美さん(左)と、島産品の製造販売やオンラインショップを運営するしまうま商会の小高陽子さん(右)。古民家ステイや民泊などを活用した小値賀島の地域づくりはこちらの過去記事をご参考ください

木寺
小値賀島

おぢかアイランドツーリズムとしても、「古民家ステイ」や販売商品などを持っているので辛いところです。(小値賀町内にある)野崎島が世界遺産になったので、そこに来るお客様も多かったんですけど、早い段階から来島自粛のメッセージを出して、(来島者側にも)ご協力いただいています。

リトケイ

前払いできる宿泊チケットや、飲食チケットのEC販売はいかがですか?

木寺
小値賀島

影響を受けている宿泊施設、飲食店、お土産品店にお声がけし、参加を承諾された事業者の前払い型チケットを販売しています。

リトケイ

深島はどうでしょう? 他の島々に比べると人口が少ないので、事情も異なるかと思います。

安倍
深島

そうですね。島の人口は15人なので、住民同士で何をするというのはまったくなくて、島のばあちゃんたちはコロナウイルスに対しても、よく分かっていないかもしれません。4〜5月から夏の間は(観光客が増える)稼ぎ時なので、それがゼロになるのは痛いです。

リトケイ

深島では伝統的な「深島みそ」をEC販売されていますよね。

深島でつくられる伝統的な発酵調味料「深島みそ」

安倍
深島

深島みそは佐伯市内、県内、県外のファンの方が買ってくださっているので、ありがたいですが、それだけでは生活ができないので、どうにか考えなければいけないと思っています。

リトケイ

たとえば沖永良部島だと人口が1万人以上いらっしゃるので、島の中だけでもアイデアを集めて実行することができそうですが、人口15人の島の場合は、島外の人といかに連携できるかにもかかっているように思います。

安倍
深島

佐伯市の4島は大きくても人口200〜300人で、それぞれが抱えている問題も異なると思うんですが、これからどうやって経済活動をして、生活を維持していくのかを考えないといけないと思っています。

リトケイ

深島では年金生活の人も多いですか?

安倍
深島

多いですね。1軒だけ漁師さんもいますが、魚価が下がっているので厳しい状況だそうです。

リトケイ

本当に厳しい状況ですよね。

>> オンライン座談会は後半へ続きます


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コロナ禍にある今、リトケイでは「島と人の今と未来を守るためのヒント」を探るべく、過去の記事にご登場いただいた方々を中心に、オンライン座談会やオンラインインタビューを実施し、当サイトから発信して参ります。

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