つくろう、島の未来

2025年03月06日 木曜日

つくろう、島の未来

有人離島専門フリーペーパー『季刊ritokei(リトケイ)vol.48』「三方よしのシマづくり」(2025年2月25日発行)

2月25日に有人離島専門フリーペーパー『季刊ritokei』48号「三方よしのシマづくり」を発行しました。3月上旬より全国約1,300カ所の公式設置ポイントにて配布・閲覧を順次スタート、ウェブ版『ritokei』でも順次記事を公開していきます。48号の目次や見どころを紹介します。

近江商人が掲げた「買い手よし、売り手よし、世間よし」の 「三方よし」。『持続可能な資本主義-100年後も生き残る会社の「八方よし」 の経営哲学』(ディスカヴァー携書)では、経営者、株主、社員のみならず国や地球に対しても利益ある経営によって、四方八方あらゆる方面に 「良し」とする「八方よし」を提唱しています。

経営も、地域づくりも、究極の理想は、あらゆる方面を笑顔にする 「八方よし」。『季刊ritokei』48号「八方よしのシマづくり」では、 2024年に開催された「第1回未来のシマ共創アワード」(以下、未来のシマ共創アワード)で高評価を得た団体を例に、八方よしのヒントをお届けします。

特集の冒頭を飾るのは、「未来のシマ共創アワード」サステナブル経営部門で最優秀賞に輝いた、長崎県・対馬島の丸徳水産の皆さん。磯焼けを起こす食害魚として捕獲・焼却処分されていたアイゴやイスズミの命を無駄にせず、おいしいメンチカツにして食卓や学校給食に届けた「そう介プロジェクト」などの取り組みが「八方よし」を実現しています。

「社員教育ではまず自分がやって見せる」「地域でのおしゃべりを通して理解者を増やす」「一番身近な家族を大事にすることでスタッフを含む会社のことも大事にできる」など、経営で大事にしていることを伺いました。

石田秀輝(いしだ・ひでき)沖永良部島在住。 東北大学名誉教授。
一般社団法人サステナブル経営推進機構 代表理事

沖永良部島在住、「未来のシマ共創アワード」で審査員を努めた石田秀輝先生いわく、理想の八方よしは自然界に見られる「生態系」。地域づくりでは「自立閉鎖系システム」といえる島のような環境に、他地域の事例をそのまま当てはめても、うまくいかない。その場に合わせた最適解を考える必要があると説きます。

「八方よし」が目指すのは、循環型の社会。「とにかく稼がなきゃ」という経済的価値だけにとどまらず、人・歴史・自然などの資本を循環させることで、新たな資本を生み出すことができる。そんな循環型経済につながる「島々で育つ八方よしの種」として、全国の島々から9つのプロジェクトを紹介しています。

全国の島の小・中・高校生を対象とした「未来のシマ共創アワード」地球一個分の暮らし部門では、鹿児島県・屋久島の鹿児島県立屋久島高等学校による継続的な活動「屋久高環境フェスタ」が最優秀賞に選ばれました。

2021年度にスタートした同イベントは、世界自然遺産の島・屋久島の課題や魅力を見つめ直す機会をつくる屋久島高校の課題研究から始まり、5年間にわたり先輩から後輩へとバトンを引き継いでいく中で、30以上の島内外の企業や大学が連携し、700人が来場するイベントへと成長しています。

そんな取り組みを第1回から見守りサポートしてきた斉藤武先生と、トークセッションで専門家らに交じり登壇した大木咲愛(おおき・ささら)さんにお話を伺いました。

同じく島の高校生による取り組みとして、長崎県五島列島・福江島にある長崎県立後藤高等学校の生徒の活動が、「未来のシマ共創アワード」地球一個分の暮らし部門で大和リース賞を受賞しました。

海ごみから楽器をつくり、オリジナルの楽曲で文化祭に挑んだ高校生たちのチャレンジにご注目ください。

特集ではほかにも、大阪と島根県・隠岐諸島の二拠点居住と副業で八方よしを実現する「旅する小さな工務店」の島田広之さん(島後など)や、米国で生まれた「ゼブラ企業」の概念を日本に導入した阿座上陽平さんら、事業を通じて八方よしを実現する仕事人に取材。

「都市と自然、どちらもある日々を」をコンセプトに掲げる「Nature Tokyo Experience」との連動規格として、東京の新島三宅島八丈島の皆さんとリトケイ代表・鯨本あつこの対談「東京離島の皆さんと考える。自然環境を活用した『八方よし』のローカルツーリズム」を掲載しています。

定番コーナーのインタビューでは、2月15日に鹿児島市で開催されたイベント「島祭 -Shimasai-」で、「事業継承と人材育成」について鹿児島の島人たちが語り合った対談をお届けします。

事業継承や人材育成は、全国の島々に共通のテーマともいえます。与論島の村上竜雄さん、沖永良部島の金城良太郎さん、徳之島の大保健司さん、屋久島の荒木政孝さんらが語る、現在進行形の想いに耳を傾けてみましょう。

©️Rikiya Nakamura

島々に携わる仕事人の想いを紹介する「島々仕事人」は、屋久島から『サウンターマガジン』などを刊行する出版社・キルティの国本真治さんが登場。

2024年に出版され話題となった書籍『南洋のソングライン―幻の屋久島古謡を追って』(著・大石始)など、島を拠点に世界とつながり、文化を耕す国本さんの活動についてお聞きしました。

400島あれば400通りある島の文化を島に暮らす文化人が紹介する「島から島へ紹介したい島文化」今回は、薩摩の流人が製法を伝え、伊豆諸島の島人たちの手で受け継がれてきた島焼酎「東京島酒」のお話。

島酒の語り部として活動するリトケイ編集部の石原みどりが、2024年にGI認定を受け、世界ブランドとして一歩を踏み出した「東京島酒」の歩みをひもときます。

島にまつわる本や映画、音楽をお届けする「島Books & Cultute」は、ウェブ版『ritokei』での連載から生まれた写真集『百島百祭』(著・黒岩正和)や、今年1月直木賞に選ばれた『藍を継ぐ海』(著・伊与原新)など、強くてうつくしい島を描く6冊を選書しました。

島に暮らす人が自身の想いを綴る「島人コラム」では、愛媛県・八幡浜大島での地域づくり活動を振り返る乗松稔明さん、長崎県・度島で中学生と地域づくりや防災に取り組む石田由香さん、香川県・直島で小学生のサードプレイスを立ち上げた江幡紗恵さん、3人の寄稿コラムをお届けします。

東京・文京区の筑波大学附属高等学校(以下、筑波大学附属高校)は、全国に約80校ある、リトケイの刊行物を学びに活用する学校のひとつ。

学校図書館には「島本」の棚があり、『世界がかわるシマ思考-離島に学ぶ、生きるすべ』や『季刊ritokei』の全バックナンバーもずらり。地図コーナーにも、国土地理院発行の日本地図とともにリトケイの「島の大きさ一覧ポスター」が設置されています。

2024年度は、島について学びを深める特別講座「シマから考える!日本の未来」がスタート。日本の離島地域を対象に、14人の生徒が自ら決めたテーマに沿って研究を進めています。

各自の研究テーマは「持続可能な観光産業のために何をすべきか」「島の人間関係と防災」「地元に残り続けるためには」など、『季刊ritokei』の特集テーマにもなりそうなものばかり。48号では、2025年1月22日におじゃました授業の様子をレポートしています。

1年単位で島の学校に通うことができる「離島留学」制度に注目が集まっています。リトケイ編集部にも、読者から「離島留学を検討している」との声が届きます。そこで、リトケイは2024年10月から12月にかけて、鹿児島県・甑島列島(上甑島下甑島)と、三重県・答志島で「シマ育親子モニターツアー」を開催しました。

島の人・文化・自然にふれる、2泊3日の親子留学体験。島の子育て環境に思いを寄せる8組の親子が参加したモニターツアーの様子を、写真たっぷりに紙面でお届けします。

リトケイの隠れた人気コーナー「有人離島の人口変動」では、平成27年・令和2年の国勢調査の人口と、リトケイ独自調べによる直近半年間の島々の人口変動を3カ月ごとに掲載。離島留学や移住の参考にしていただける、小学校・中学校・高校の設置状況も島ごとに掲載しています。

詳しくは『季刊ritokei』48号または、ウェブ版『ritokei』に順次掲載される記事をご覧ください。下記目次のリンクより、ウェブ版の記事をご覧いただけます(随時更新)。

ー 八方よしのシマづくり ー

●海も、島も、人々も皆の笑顔を生みだす熱源(対馬島・有限会社丸徳水産 犬束ゆかりさん)
●石田秀樹先生に聞く、八方よしを叶えるポイント(沖永良部島・石田秀樹さん)
●高校生と大人が連携する屋久島版の環境見本市(屋久島・鹿児島県立屋久島高等学校の皆さん)
●旅する小さな工務店は持続可能な未来モデル(隠岐諸島・島田広之さん)
●海ごみから楽器をつくる利他の心が生んだチャレンジ(福江島・長崎県立五島高等学校 川脇颯太さん、近藤泰一郎さん)
●島々で育つ八方よしの種(奄美大島・あまみん ほか)

ー インタビュー ー

●「駅伝のように島の営みを継いでいく」島祭-Shimasai-
●「島々仕事人」キルティ株式会社 Kilty BOOKS 国本真治さん

ー 定番企画 ー

●有人離島の人口変動|島々の人口変動をチェック!
●島Books & Culture|強くて、うつくしい島を知る一冊
●島から島へ紹介したい島文化「東京島酒」(伊豆諸島・石原みどり)
●島人コラム|八幡浜大島・度島・直島

ー 特別企画 ー

東京離島の皆さんと考える。自然資源を活用した「八方よし」のローカルツーリズム
●「シマ思考」で学ぼう!特別講座「シマから考える!日本の未来」in 筑波大学附属高等学校 密着レポ
●稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶフィロソフィ経営実践塾横浜 離島オンライン会員スタート
●離島留学を親子でプチ体験!シマ育モニターツアー