つくろう、島の未来

2024年10月15日 火曜日

つくろう、島の未来

ひとえに「島の観光」といっても、地理的条件や自然環境、歴史、文化、産業構造、人口規模などの違いによって個性があります。

400島あれば400様ある個性の一端にふれるべく、7つの島に「観光の歴史」「見どころ」「課題」「取り組み」について尋ねました。

世界遺産・嚴島神社のある宮島は、宮島口桟橋(広島県廿日市市)よりフェリーで10分。一般社団法人宮島観光協会に聞いた、宮島観光とは? (取材・上島妙子)

この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

「杓子」から始まった宮島の観光産業

宮島を代表する土産物の「杓子」ですが、宮島は昔から観光地であったもののこれといった土産物がなかったため、寛政年間に弁財天の琵琶をヒントに僧誓真が考案したことが、宮島の観光産業の始まりと言われております。

嚴島神社の鳥居(©️PIXTA)

国内外の観光客を魅了する世界遺産の「厳島神社」「弥山」

年間来島者が400万人を超える宮島ですが、客層はご年配の方から小さなお子様まで幅広く、近年は世界各国からの外国人観光客も大幅に増加し、中でもフランス、スペイン、アメリカから多く訪れていただいており、宮島は国際色豊かな観光地となっております。

人気の高い観光スポットは、世界的に有名な「嚴島神社(創建593年)」をはじめとする神社仏閣です。また、806年に弘法大師・空海により開基され、嚴島神社とともに世界遺産に指定された「弥山原始林」を有する霊山「弥山」があり、国内外問わず多くの観光客の方々が訪問します。

弥山の「霊火堂」には、弘法大師が修行に使用した火が1200年以上にわたり燃え続けている「消えずの火」があり、巨岩奇石が点在する「弥山展望台」からは瀬戸内海の多島美が360度のパノラマでご覧いただけます。弥山は標高が535メートルということから軽登山のハイキングコースが外国人観光客に人気です。(登山以外にも山頂手前まではロープウエーで登ることも可能です)

弥山からの景色(©️PIXTA)

「ストレスフリー観光」を目指し桟橋、駐車場などを整備

宮島は100%観光産業で成り立っている島であるため観光産業と経済が直結しており、観光産業が落ち込めばそのまま島全体の経済に影響を及ぼすことから、宮島にとって観光産業とは非常に重要な事業であると言えます。

来島者に「また宮島に訪れたい」と思っていただけるように“お客様に快適にお過ごしいただくこと”を第一に考えておりますが、観光客が増加するとそれに応じて受け入れ体制を強化していく必要があり、そのためには各施設の待ち時間や商店街の混雑解消などが課題となります。

具体的な課題を改善するための取り組みとしては、宮島の玄関口となる「宮島口地区」の“まちづくり整備事業”を現在進めており、観光案内所・物販施設・多目的スペースを設けた「宮島口新旅客ターミナル(桟橋)」を来年のオリンピックまでに供用開始する予定です。

また、その周辺の道路・駐車場についても並行して整備を進めており、周辺道路の渋滞緩和により、お客様にストレスなく観光していただけるよう“ストレスフリー観光”を目指して、様々な視点から取り組んでおります。

一般社団法人宮島観光協会の窓口(提供・宮島観光協会)

大鳥居や弥山の神々しい山並みを船上から味わって

「本土(宮島口)からフェリーで約10分で到着!」と、気軽に訪れることのできる宮島ですが、短時間だとしても船で渡らないと到着できないという“特別感”は気分を昂らせてくれます。

また、フェリーで渡って来る際に宮島の稜線をご覧いただくと、弥山の山並みが観音様の寝姿に見えるため、嚴島神社の大鳥居のみならず、その神々しい姿をご覧いただきながら、短い船旅を経て宮島へお越しいただければ幸いです。

特集記事 目次

特集|島と人が幸せな観光とは?

現在、国が定義する日本の有人離島は416島。豊かな自然や多様な歴史文化、人と人が助け合う共助社会が存在する島は、いずれも住民やゆかりを持つ人にとって重要な場所であり、海洋資源や国土保全の視点に立てば、すべての日本人にとって重要な拠点ともいえる。 しかしながら、多くの島では戦後から人口減少が続き、離島地域に暮らす0~14歳の人口は、平成17年から27年までの10年間だけで、20%も減少している現実がある(平成17年、27年国勢調査)。 いくら愛着があっても、島を担う人が不在となれば、その島の文化は途絶えてしまう。離島経済新聞社では、住民にとって、島を想う人にとって、すべての日本人にとって、重要な島の営みが健やかに続いていくことを願い、「島の幸せ」を「健全な持続」と説き、持続可能な離島経済のあり方を追求。 今回は、多くの島で産業の中心を担う「観光」をテーマに、持続可能な観光を考える。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

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