つくろう、島の未来

2022年05月22日 日曜日

つくろう、島の未来

自身が暮らす島と、島をとりまく世界が持続可能であるためには、お金や経済のあり方やめぐり方に、どんな仕組みや思想があったら良いか?これからの島を担う40歳以下の若手世代に、それぞれの考えを伺いました。(制作・ritokei編集部)

※この記事は『季刊ritokei』37号(2022年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

>>前回:島の皆さんに聞く 島暮らしにある「お金では得られないもの」【特集|島で生きるために必要なお金の話】はこちら

離島は基本的に赤字 ゆえに島の資源を共有し島内外の人々との絆を育みたい(①飛島/山形県)

離島は基本的に赤字です。定期船の運航や港湾の整備など、支出の多くを島外の税収によって賄っています。人口減少社会において税収は厳しい状況が続くため、少ない予算の中でも離島の存続を望む島外の人々がいなければ成り立ちません。

自腹を切ってでも自分の好きな島を維持したいと思うほどの愛着を持った関係人口が不可欠なのです。そのためには、目の前の仕事をこなすことも大事ですが、日々の取り組みが島外の人々との関係づくりに繋がっているかどうか考える必要があります。

例えば、宿泊や体験といった観光業は、来島者と触れ合う絶好の機会であるため、長期的な関係を築いていくために、滞在にかかる経費を可能な限り減らして一緒にいる時間を増やす仕組みが考えられます。

大切なのは、島内のメリットを手放して島外にシェアすることです。自然や文化といった資源を共有してオープンな島づくりを進め、島内外の人々と共に愛着を育んでいきたいと思います。

【お話を伺った人】
松本友哉(まつもと・ともや)
1988年山口県生まれ。大阪の大学を卒業後、2012年に飛島へ移住。UIターンの若者と合同会社とびしまを設立し、飛島を舞台に新しい自治体のかたちを模索。「有給休暇3カ月制度」の導入などアイデアフルな展開で、社員100人を目指す

【飛島(とびしま|山形県)】
山形県唯一の島。高齢化率は80%を超え、島の小中学校は2019年より休校。2020年には飛島の営みを記録したドキュメンタリー映画『島にて』が公開。合同会社とびしまが運営するオンラインコミュニティには200名以上の関係人口が集う

アクセス:酒田港から定期船で約75分
人口:175人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:12km
行政区:山形県酒田市
子育て:小学校・中学校共に休校中
医療:診療所1施設 ※医師の在住なし

島っ子へ伝えたい人と人を繋ぐご縁 島は強く、優しく、便利(②母島/東京都)

今回のテーマをいただいた時に、根底は持続可能な島暮らしのためのコツだと感じました。もちろん、お金や島の経済の在り方、巡り方も大事なのですが、それに繋がる最も重要なものは、人と人を繋ぐ“ご縁”だと直感で感じました。

僕は小笠原に移住して20年になります。今は母島で暮らし、現在は高校生と小学生の娘がいます。母島は人口450人の小さな島なので、知らない子どもはいませんし、どの子も我が子のように見守っています。

そんな島出身の子どもたちが島に戻ってくると考えた時、どんな事を伝えたいか。島の暮らしは不便なようで、実はとても便利だと思います。

内地では考えられないような人の助けを受けることも多いです。困った時、悩んだ時、迷った時、仕事を探すとき、島に戻ろうとするとき、一番大事なのはその人と人のご縁を大切にして、島での人脈を築く事だと思います。

その中で「自分がどう島で生きたいかを伝えること」がカギだと思います。それができればあとは必要なものが巡ってきます。島はそれくらい強く、優しく、便利なのです。

【お話を伺った人】
宮城ジャイアン(みやぎ・じゃいあん)
1981年仙台市出身。本名は宮城雅司。2002年に小笠原へ移住。2児の父。宮城自然農園代表、地域のさまざまな仕事、野生動物調査の調査員や鳥獣保護員のほか、2021年に便利屋を開業。持続可能な暮らしのあり方を追求する

【母島(ははじま|東京都)】
東京都にありながら都心から最もアクセスに時間のかかる島。第三次産業従事者を中心に、パッションフルーツ栽培やカジキ漁などの第一次産業に従事する人が多い。近年は対話を通じて母島の未来を描く場づくりが行われている

アクセス:東京・竹芝港から父島まで約24時間(6日に1便)、父島から母島まで約2時間
人口:457人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:58km
行政区:東京都小笠原村
子育て:保育園、小学校、中学校が各1施設
医療:診療所1施設

子どもを産み育てる人がお金の不安を感じないよう まずは会社の制度を変えた(③利島/東京都)

産婦人科がない利島は、検診に行くだけでも往復3日かけて都内の病院に行かねばならず、出産もできない。国の制度で産休になる32週より前に里帰りしてもらわなければなりません。

島のお母さんたちはこれまで、有給を使わないようにして検診や、産休前のタイムラグに必要な休みに充てていたので、僕の会社では社労士や関係機関に掛け合って検診にかかる通院は特別休暇扱いできる制度に変えました。

うちは定期船の運航業務を行なっていて、船は365日止めるわけにはいかないし、従業員も足りていません。けれど、子育て層が子どもを産みにくく働きにくい島に未来はないでしょう。産休を取るのに嫌な顔をする上司がいる会社もあると聞くけど、うちは産休に入ると聞けば「そんなめでたい話はないだろう」と話します。

人口300人規模の島は臨機応変じゃないと生きていけない。昨年、利島で生まれた子どもは1人だけで常に危機感がある。だから少なくとも自分の会社では、産休はもちろん学校行事でも「早く帰っていいよ」と言える環境にしていきたいです。

【お話を伺った人】
清水雄太(しみず・ゆうた)
1986年春日部市出身。食品メーカーの営業を経て2010年に利島へ移住。農協職員を経て定期航路離着岸事業や村の賑わい創出を行う株式会社TOSHIMA代表に就任(従業員10名)。利島村婚活実行委員会の会長でもある

【利島(としま|東京都)】
島中に咲き誇る椿やサザエなどの海産物が有名。荒天時は船の着岸率が下がる利便性の低さが存在する一方、Iターン者が多く、過去60年以上にわたって人口が変動しないことでも注目を集めている

アクセス:下田港から利島港まで約1時間半、竹芝港から約2時間半ほか
人口:332人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:7.7km
行政区:東京都利島村
子育て:保育園、小学校、中学校が各1施設
医療:診療所1施設

貨幣と交換できない自然と人の力を信じて 良いバランスを見つけたい(④祝島/山口県)

海では魚が勝手に育ち、季節になれば浜にひじきが生えてくる。私たちは魚やひじきに値段をつけているけれど、本当はプライスレスのはずです。さまざまなものを貨幣と交換できるようにしてきた歴史を振り返ると、貨幣に換算できる領域を広げすぎたのではないかと感じています。

祝島をはじめ離島地域では、自然や人間関係といったお金に変えられない領域がまだ多く残っていると思っていて、貨幣に換算できる領域とそうではない領域の良いバランスを見つけたい。

以前、島に来てくれた友人に仕事の依頼をしたところ「お金はいらないから食べ物で」と言われ、お金だけではない関係が広がりつつあることを実感しました。

上関町の財政は厳しいですが、一方、輸送コストやインフラ整備など島が財政の恩恵を受けていることも事実です。これからますます現実を突きつけられていくことになると思いますが、生きていくのに大切なのは、お金に変えられない領域であると信じています。

【お話を伺った人】
秋山鈴明(あきやま・すずか)
1993年群馬県生まれ。大学在学中は東北の1次産業の現場に通う。卒業後、山口県上関町の祝島に移住。現在は漁業の傍ら、集落から出る家庭生ゴミの自主回収に取り組み、豚や牛を育てている。2022年、上関町議会選挙に出馬し当選

【祝島(いわいしま|山口県)】
主産業は農漁業で、ビワやタコ、ひじきなどが特産品。練った土と石を漆喰で塗り固めた「練塀」が集落のいたるところで見られる。移住者が増え、2021年には祝島小学校が5年ぶりに再開校している

アクセス:室津港から祝島港まで約40分、柳井港から1時間10分
人口:321人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:12.7km
行政区:山口県熊毛郡上関町
子育て:小学校・中学校が各1施設 ※中学校は休校中
医療:診療所1施設

島の資源を価値に変え稼いだ資金が 島の保全や教育にもつながるように(⑤竹島/鹿児島県)

私の住む竹島は人口70人をきりました。人口を増やすには収入源となる仕事が必要ですが、ただ稼ぐだけでなく環境問題などの課題を多角的に考えることが大事だと考えます。竹島学園の小中学生や先生たち・役場と取り組んでいるハマギプロジェクトは、減少してきている島の資源「ハマギ(ボタンボウフウ)」の保全・商品開発を教育の題材にしています。

開発した商品を販売することで得る売上金は翌年度のプロジェクトの運営資金となっていますが、今後は使い道も子どもたち自身に考えてもらいたいと考えています。

このプロジェクトは資源の保全・実践的な教育・ゆくゆくは産業創出と複合的な効果を生み出す可能性を秘めています。そしてここでしかできない取り組みであることが、子育て世代への移住PRにもなります。

それぞれの課題を別々のものとして捉えるのではなく、全て繋がっていることを理解して、それを価値に変えていくことが大切だと思います。

【お話を伺った人】
山﨑晋作(やまざき・しんさく)
1983年三島村生まれ。東京などでの生活を経て2014年に竹島にUターン。2児の父。2015年に「NPO法人みしまですよ」を設立。ふるさとを盛り上げるべく2019年に三島村村議会議員に出馬・当選。議員としても活動する

【竹島(たけしま|鹿児島県)】
竹島・黒島・硫黄島の3島からなる自治体(3島の総人口は約380人)の1島。島全体がリュウキュウチク(大名竹)に覆われ、筍も特産。三島村立三島竹島学園には島の子どものほか離島留学生も通う

アクセス:鹿児島港から竹島港まで約3時間
人口:62人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:12.8km
行政区:鹿児島県鹿児島郡三島村
子育て:保育所、小学校、中学校が各1施設
医療:診療所1施設

ネットが浸透し技術も進化 言い訳できない時代でも自分を育てれば何でも叶う(⑥上甑島/鹿児島県)

島で起業して10年が経ちました。産業振興はある程度やってきましたが、医療・福祉・教育などはフォローできていませんし、これからの島を考えると不動産やお金、エネルギーの話も避けて通れません。

お金は大事だけど、お金だけじゃない部分も大事。それらを同等に扱っていけるように、昨年は新会社を立ち上げ、島を舞台にお金・人・不動産という3つのファンドをつくるチャレンジを始めました。人がいない、場所がない、お金がないという言い訳をしなくて良い環境をつくるための会社です。

スマホもアプリも資金調達の方法も進化し、どんどん言い訳ができない世の中になっています。インターネットがある前提ではありますが「島だからできない」はなくなりました。

だから若い子たちには特に、色々なものにアンテナを張ってもらいたい。たった一人の成長が地域の成長に直結する時代なので、自分自身の中身を育てて欲しい。そして島の外で多種多様な世界観を持った人たちと出会い、帰ってきたら何でも叶います。きっと。

【お話を伺った人】
山下賢太(やました・けんた)
1985年上甑島生まれ。2児の父。JRA日本中央競馬会競馬学校を中退後、きびなご漁船の乗組員を経て京都造形芸術大学を卒業。Uターン後、東シナ海の小さな島ブランド株式会社、島守株式会社ほか多数の事業体を立ち上げ、他分野でも活躍

【上甑島(かみこしきしま|鹿児島県)】
鹿児島県薩摩川内市から西へ約30km、上甑島・中甑島・下甑島からなる甑島列島の1島。近年は島のUIターン者が手がける地域振興が注目を集め、コロナ禍においても若年層のリピーターを増やしている

アクセス:川内港から里港まで高速船で約50分、串木野新港から約70分
人口:1,875人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:81.1km
行政区:鹿児島県薩摩川内市
子育て:幼稚園、小学校、中学校が各2施設
医療:診療所3施設

経済発展に沸く石垣島 お金だけでなく感謝がまわる島であり続けられるように(⑦石垣島/沖縄県)

小さい頃、地元の商店でアイスを買って店のおばあに「ありがとう」と言ったら「いやいや、おばあはお金だよ(お金をもらったよ)」と言われて、私はおばあのプラスになるものをあげたんだなぁと思いました。

両親にも「お店の人がいないとハンバーガーも食べられないんだよ」と教えられていたので、お金をやりとりする時には感謝を感じていました。けれど、東京に出て買い物をしたときは、ただお金と商品をやりとりしているだけのようで、怖いと感じました。

今の石垣島は発展していて移住者も増えていますが、その一方で感謝が見えにくくなり、人と人との関係性の希薄化を懸念しています。お金とか経済の流れが活発になったことで、感謝をわざわざ伝えなくても成り立つ社会ができはじめているのかもしれません。

最近、石垣島には「まちのコイン」というアプリができました。「人と自然に感謝がまわる島」を合言葉に「ありがとう」をやりとりし、薄れつつある人と人のつながりを深めていけたらいいなと思っています。

【お話を伺った人】
岩倉千花(いわくら・ちか)
1991年石垣島生まれ。立命館アジア太平洋大学を卒業後、芸能プロダクションと地域コンサルタント会社で経験を積み2017年にUターン。八重山ヒト大学副学長。2020年に合同会社emptyを設立

【石垣島(いしがきじま|沖縄県)】
豊かな自然や文化を誇る「日本最南端の自然文化都市」として多くの人々が行き交う八重山諸島の中心島。2013年に新空港が開港以来、観光客数は増加。ピーク時の年間観光客数は147万人。移住者も多い

アクセス:羽田空港から石垣空港まで約3時間ほか
人口:49,710人(2021年12月住民基本台帳人口)
周囲:182.5km
行政区:沖縄県石垣市
子育て:幼保および認可外保育施設が約70施設、小学校20校、中学校9校、高校4校
医療:病院3施設、診療所25施設、歯科19施設

>>3人の有識者に聞いた、島とお金のこぼれ話【特集|島で生きるために必要なお金の話】に続く

特集記事 目次

島で生きるために必要なお金の話

生きていくために必要なものは?そう聞かれて「お金」を思い浮かべる人もいるでしょう。しかしながら、お金とは何か?なぜ必要か?どのくらい必要なのか?と聞かれると、答えに困る人もいるでしょう。

さらにそれが小さな島ならどうでしょう。島で生きるためにはどのくらいのお金が必要なのか?どんなことにどれだけのお金がかかるのか?そのお金はどこから得られるのか?

今回は離島地域で生きるために必要な「お金」を特集。生活のお金や社会を維持するためのお金、島の未来を持続可能にするためのお金の話を中心に、この春、娘が島を旅立つR島のシマノさん一家と考えていきます。

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