つくろう、島の未来

2024年07月21日 日曜日

つくろう、島の未来

リトケイが一般社団法人Chefs for the Blue(シェフスフォーザブルー、以下C-BLUE)と協力して進めている、島々の魚を使ったおいしく食べて海もよろこぶ商品開発。

このプロジェクトでは、対馬島(つしまじま|長崎県)のアイゴ、弓削島(ゆげじま|愛媛県)のチヌ、与論島(よろんじま|鹿児島県)のテングハギという3島3種の魚を使ったレトルト商品を開発しています。

完成した商品は、魚屋sakana bacca(サカナバッカ)の都内3店舗で販売予定。同店は「毎日の食卓に感動と冒険を」をコンセプトに、全国各地から取り寄せた魚を丸のまま並べ、魚の捌き方や調理法をシェアし、新しい魚との出会いの場を提供する鮮魚店です。

今回登場いただくのは、魚屋sakana baccaを運営する株式会社フーディソンで広報を担当する、松谷涼子さん。同店を“魚食文化の発信基地”にしたいと語る松谷さんに、売り場づくりで大切にしていることや、めずらしい魚に親しんでもらうためのコミュニケーションの工夫を伺いました。

2021年より「島の魚食」を盛り上げるプロジェクトを継続するリトケイは、豊かな海と日本の魚食文化を未来につなぐことをミッションに活動するC-BLUEと共に、島々の未利用魚や低利用魚を活用したサステナブルで海の学びにつながる商品づくりに取り組んでいます。

本企画は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

取材・ritokei編集部 文・べっくやちひろ

青と白を基調にした、サカナバッカの路面店は従来の魚屋のイメージをくつがえすイメージ(提供:フーディソン)

人物紹介

株式会社フーディソン
松谷涼子さん
飲食店向け仕入れサイト「魚ポチ」や魚屋「サカナバッカ」のマーケティングリーダーや新規事業の立ち上げなどを経て、現在はフーディソンの広報を担当。

NPOリトケイ
編集部 石原みどり
『ritokei』で編集・記事執筆。本プロジェクトでは広報を担当。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワークの食いしん坊。著書にくじらとくっかるの島めぐり あまみの甘み あまみの香り 奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島と黒糖焼酎をつくる全25蔵の話』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。

「どうやって食べるとおいしいの?」会話が生まれる売り場づくり

「家庭で魚を食べない人の割合が年々増えている」と耳にします。これにはどういった背景があるのでしょうか。

魚の消費量が減っていることにはいろいろな要因があると思いますが、ひとつは肉が日常食として食卓に上るようになったことがあると思います。

水産庁のデータによると、2010年頃に一人当たりの肉の消費量が魚を上回りました(※)。もともと「魚=日常、肉=非日常」だったのが逆転したともいえそうです。sakana baccaを運営していても、魚を「ハレの日」に食べる人が増えているなと感じます。

※ 平成29年度『水産白書』より

流通の観点でいうと、スーパーが販売力を強く持つようになったことも大きいのではないでしょうか。スーパーで安定的に売れることが重視されるようになったことで、漁獲量にムラが少ない限られた魚種のみが流通するようになり、売れない魚を産地で消費するか廃棄する動きにつながったのだと思います。

sakana baccaではスーパーで見かけないような魚や、離島から届くめずらしい魚も扱っていますよね。そうした魚に親しんでもらうために、売り場づくりやお客さまとのコミュニケーションで工夫している点はありますか?

関東ではめずらしい九州や沖縄の魚、離島から届く魚なども並ぶsakana baccaの店内

sakana baccaは2024年1月現在、エキナカ5店舗、路面店3店舗を展開していますが、特に路面店では対面でのコミュニケーションを大切にしています。

コミュニケーションが生まれるきっかけづくりとして、売り場では産地から直接仕入れた色とりどりの魚を丸のまま並べて販売するようにしています。そうすることで、クルーとお客さまの間で「この魚は何ですか?」「どうやって食べるとおいしい?」という会話が生まれるんです。

私たちは魚を売るだけでなく、食への根源的な好奇心や楽しさも提供したいと考えています。日本の魚食文化のおいしさの発信基地のような売り場を目指して、日々魚の見せ方や声のかけ方を店舗のクルーたちは試行錯誤しています。

魚によく合うビールやワインなど、魚食を楽しむオリジナル商品も店内に並ぶ

対馬島の海底を見て感じた「なんとかしたい」という思い

仕入れの中で産地の島々とのやりとりもあると思いますが、これまでに何か印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

対馬島で「磯焼け」を起こした海を実際に見たときの体験は、かなり強烈に印象に残っています。対馬は海の栄養が豊富なイメージがありましたが、丸徳水産さん(※)の船に乗って海底を見せてもらったら、藻が全然ないんです。

※ 関連記事
>>【リトケイ海の商品開発】対馬島の生産者に聞きました!島ぐるみの「磯焼け」対策


「アイゴやイスズミが藻を食べてしまう」と困っている地元の声を直接聞き、現場を見ることで、より一層「力になりたい」という気持ちが強まりました。それからはフーディソンでも、全国的に生じている磯焼け問題の一因とされているアイゴやガンガゼを積極的に仕入れるようになりました。

本プロジェクトでは離島の未利用魚や低利用魚を使った商品開発に取り組んでいますが、こうした魚をさまざまな形で活用していくことで、海や食の環境はどのように良くなっていくと思われますか?

新島(にいじま|東京都)の「くさや」や「べっこう醤油」などをはじめ、各地の魚食文化も発信

「おいしい」を「なぜこの魚は流通していないのか?」の入口に

未利用魚・低利用魚を食べることは、海の課題を知るための一歩目としてハードルの低いアクションのひとつ。「おいしい」と感じることが「どうしてこの魚は流通していないんだろう?」というひとつの興味関心の切り口になると思うんです。

海や食の環境問題は山積みなので、持続可能な解決のためにはアクションをしたい人をどんどん巻き込んでいかなければいけません。「食べる」という小さなことからでも海のことを知ろうとする人が増えれば、環境に対する意識が高まり、海の課題解決の方法も広がっていくと考えています。

今回のプロジェクトを通じ、まず私たちがしっかり海の課題について勉強して、熱量を持ってお客さまに伝えていくことで良い波及を生めるように努力したいですね。

お買い物を通じて海の課題に触れることで、海のことを知ろうとする人・それぞれの立場から関わろうとする人が増えれば、活動を大きなうねりにできると感じました。今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

2月下旬に予定しているsakana baccaでのスープ販売イベントでも、よろしくお願いします!

プロジェクトの背景や関連イベントのお知らせを、この「島々会議」でお伝えしていきます。引き続きご注目ください。

     

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