つくろう、島の未来

2024年03月03日 日曜日

つくろう、島の未来

リトケイが一般社団法人Chefs for the Blue(シェフスフォーザブルー、以下C-BLUE)と協力して進めている、島々の魚を使ったおいしく食べて海もよろこぶ商品開発。

恵比寿でフレンチレストラン「アムール」の総料理長を務め、C-BLUEにも所属するシェフ・後藤祐輔さんと共に、対馬島(つしまじま|長崎県)のアイゴ、弓削島(ゆげじま|愛媛県)のチヌ、与論島(よろんじま|鹿児島県)のテングハギという3島3種の魚を使ったレトルト商品の開発を進めています。

今回は、それぞれの魚の特徴を活かしてバリエーション豊かなスープを考案した後藤シェフに、プロジェクトに参加を決めた理由や、レシピ開発における工夫を伺いました。

2021年より「島の魚食」を盛り上げるプロジェクトを継続するリトケイは、豊かな海と日本の魚食文化を未来につなぐことをミッションに活動するC-BLUEと共に、島々の未利用魚や低利用魚を活用したサステナブルで海の学びにつながる商品づくりに取り組んでいます。

本企画は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

取材・ritokei編集部 文・べっくやちひろ

『日本人でしか表現できないフランス料理』に取り組む、後藤祐輔シェフ

人物紹介

アムール
後藤祐輔さん
1979年5月25日東京都出身。『ミシュランガイド東京 2013』にて一つ星を獲得。以後7年連続で一つ星を獲得。2016年11月、シャンパーニュ騎士団より「シュバリエ・ドヌール」の称号を叙任。フランス料理の技術、精神をベースに日本の食材を活かした『日本人でしか表現できないフランス料理』に取り組む。本プロジェクトでは、対馬島のアイゴ、弓削島のチヌ、与論島のテングハギのおいしさを引き出すレシピ開発を担当。
https://gotoyusuke.jp/

NPOリトケイ
編集部 石原みどり
『ritokei』で編集・記事執筆。本プロジェクトでは広報を担当。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワークの食いしん坊。著書に『くじらとくっかるの島めぐり あまみの甘み あまみの香り 奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島と黒糖焼酎をつくる全25蔵の話』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。

レストランは、海と消費者の間に立つ広報担当

後藤シェフはアムールの総料理長を務められるかたわら、C-BLUE(※)の所属シェフとしても活動されています。C-BLUEにはどのような経緯で参加を決めたのでしょうか?

※参考記事
>>【リトケイ海の商品開発】トップシェフ集団C-BLUEとリトケイが協力。島々の未低利用魚を活用したサステナブルな商品づくり

まず僕自身、5、6年前から魚が手に入りづらい状況を実感し始めました。乱獲による漁獲量の減少や温暖化などさまざまな理由で、日本の魚が危機的状況にあり、一刻も早く手を打たないといけないことを肌で感じたんです。

そのタイミングでC-BLUEが海の課題解決に向け活動していることを知り、自分が感じている課題とも何か重なる部分があるのではないかと、講演を聞きに行ったのがきっかけですね。

恵比寿のフレンチレストラン「アムール」。料理に使ったさまざまな貝の殻が彩る花壇は後藤シェフの手づくり

今回、未利用魚を使ったレシピ開発のプロジェクトに参加を決めた理由を聞かせていただけますか。

まだまだ世の中に海の現状を知ってもらえていないと感じたからです。飲食業従事者や漁師の方が意識を変えるのはもちろん大事ですが、消費者が現状を知り、魚の食べ方に対する意識を高めることも必要です。

僕たちはレストランという立場から、お客さまに海の現状を伝えていく役目を担っていると考えています。今回の未利用魚のプロジェクトもその一環になるものと考え、喜んでお引き受けしました。

3島3種の魚を活かし、バラエティ豊かなスープに

3島3種の魚を使ってスープをつくるにあたり、どのような点を工夫されましたか?

それぞれの特徴や身質、味わい、香りを活かせたらおもしろいなと思って取り組みました。

弓削島のチヌはクセも少なく、逆になぜあまり食べられていないのかが不思議なほど。ふわっとした身質なので、食べ応えが出るよう大きめのカットで入れ、クリーム系のまろやかなスープに仕上げました。

対馬のアイゴは、若干の磯臭さがあるため、あえてスパイスと合わせ、アイゴの風味とスパイスの香りを調和させました。豆や野菜をたくさん入れ、アイゴの風味を活かした旨みたっぷりの食べ応えのあるスープにしています。

与論島のテングハギは、しっかりした身質が特徴。そのままよりも、すり身にしたらいいのではと思いフィッシュボールにしました。山椒を隠し味に、きのこを加えて和風に。キクラゲも入れてぷりっとした食感を楽しめるスープにしました。

たっぷりの野菜と豆、香り高いスパイスを組み合わせた「対馬島のアイゴと野菜の具沢山スープ」

お店やメディアを通じて海の課題を伝えていきたい

プロジェクトに参加されたことで、ご自身の海や漁業の課題への向き合い方について、変化したところはありますか?

自分たちも含め、魚を調理して提供する側も考え方を変えなければいけないとより強く思うようになりました。たとえば「このメニューはこの魚」と決めつけるのではなく、漁師さんに今日入っている魚を聞いて、そこから柔軟にメニューを考えていけないだろうかと。

そのためには、料理人自身がレパートリーや調理法の引き出しを増やす必要がありますが、そういう飲食店が増えれば、魚の乱獲を防ぐことができますよね。

人気メニュー「オマール海老のビスク」にちなみ飾られたオブジェは、お客様からプレゼントされたもの

後藤シェフは、テレビなどのメディア露出も増えていますが、視聴をきっかけにご活動や、海の課題を知る方もいるのでは。

そうですね。テレビ番組で海の課題について直接語る機会はあまりないのですが、僕自身や「アムール」の考え方を知ってもらうきっかけになるので、店の中だけにいるよりも、伝えたいことを多くの人に伝えられる可能性が広がると感じています。

実際に、テレビ番組がきっかけで「アムール」に来店してくださる若い方も増えており、うれしく思っています。まずは、存在を知っていただかないと。

「アムール」では料理を味わいながら、海の課題について知ることができる。レストランは環境や漁業水産業のこれからを考える、共感の輪を広げていける場所でもあるんですね。

これからも、さまざまなご活躍を楽しみにしています。今日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


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