リトケイとChefs for the Blue(シェフスフォーザブルー、以下C-BLUE)が協力して取り組んだ、島々の未利用魚や低利用魚を活用したレトルト食品「おいしく食べて海もよろこぶお魚スープ」の開発プロジェクト。
そのうちの一つ、弓削島(ゆげじま|愛媛県)で捕れるチヌは別名「クロダイ」と呼ばれ、ふわりとした身の質感が特徴。郷土料理にも使われ、瀬戸内では古くから親しまれてきた身近な魚です。
本プロジェクトで島々の魚を使ったレトルト加工を担当した株式会社愛媛海産の代表取締役社長 大塚康仁さんに、チヌの地元でのおいしい食べ方や、瀬戸内の海事情をお聞きしました。
2021年より「島の魚食」を盛り上げるプロジェクトを継続するリトケイは、豊かな海と日本の魚食文化を未来につなぐことをミッションに活動するC-BLUEと共に、島々の未利用魚や低利用魚を活用したサステナブルで海の学びにつながる商品づくりに取り組んでいます。
本企画は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
瀬戸内のチヌをスープにする理由
本プロジェクトでレトルト加工を担当したのは、愛媛県今治市で魚介の販売や加工品製造を営む株式会社愛媛海産。昭和54年の創業以来、瀬戸内の魚を扱ってきました。
元々は魚の卸や小売を営む魚屋として創業した同社は、やがて水産加工品も製造するように。瀬戸内の島々で水揚げされる魚も活用しながら、レトルトのカレーやパスタソースなど、さまざまな加工製造のノウハウを蓄積してきました。
また、2018年より愛媛県漁業協同組合魚島支所と協力し、契約する漁業者の網にかかる魚は全て買い取る「一船買い」を実施。島の漁業を下支えすることで、持続可能な漁業を応援しています。
そんな愛媛海産の大塚康仁さんを通じ、海苔の養殖がさかんな瀬戸内海でチヌが海苔を食べてしまう食害魚として問題になっていることを聞いたリトケイとC-BLUEは、チヌの商品化に挑戦。おいしく食べることで瀬戸内の漁業を応援できる「弓削島ごろっとチヌとさつまいものクラムチャウダー」が完成しました。
瀬戸内のチヌ、地元でのおいしい食べ方は?
チヌは通称クロダイと呼ばれ、関西では「チヌ」、山陰や九州では「チンダイ」「チン」などと呼ばれ親しまれています。浅い海域にも生息するチヌは磯からでも釣ることができ、かかると引きが強いため、釣り人にも人気の魚です。
瀬戸内海では、年間を通して豊富に水揚げされ、四国の郷土料理「さつま」(※)ではタイやメバルと並んでチヌがよく使われます。
※白身魚を塩焼きにしてほぐし、焼き目を付けた味噌と魚のだし汁でのばし、熱々のごはんにかけて食べる郷土料理
「特においしくなるのは、冬の時期。脂の乗った寒チヌは、高級品とされています」と、大塚さん。
大塚さんの地元・今治市の周辺では、チヌを食べると血液循環が良くなり、母乳がよく出るということで、妊婦や産後の女性に食べさせる習慣もあるとのこと。瀬戸内で古くから親しまれてきた、身近な魚なのです。
そんなチヌは近年、瀬戸内海でさかんな養殖海苔を食い荒らしてしまう食害魚として問題となっています。現状では、魚価が低いため捕獲が進んでおらず、増えすぎたチヌの利活用を進めることが地域で求められています。
島々の未利用魚・低利用魚を広域連携で加工・商品化
本プロジェクトでは、弓削島のチヌのほかにも、対馬島(つしまじま|長崎県)のアイゴ、与論島(よろんじま|鹿児島県)テングハギを原料としたレトルトスープの開発に挑戦。
C-BLUEのメンバーとして活動する恵比寿のフレンチレストラン「アムール」の後藤祐輔シェフが、それぞれの魚のおいしさを引き出すべく考案したレシピをもとに、豊富な経験とノウハウを持つ愛媛海産で加工製造を行いました。
製造にあたっては、リトケイとC-BLUEが島々の漁業者と愛媛海産の間に入ってスケジュールを調整。3島それぞれで水揚げされた魚を、現地で新鮮なうちに下処理、冷凍したものを同社へ送り、レトルト加工を行う多地域連携の製造体制をつくり、何度も試作を重ねました。
原料の中には、海藻を好むことから独特のクセが出やすい魚種もあり、少量で制作したレシピを、どう工場での加工製造に落とし込むかも課題に。
おいしく食べられるレトルトスープを実現するために、どんなアイデアや工夫で課題を乗り越えたのか。後編では、本プロジェクトで製造サポートを担当したC-BLUEの松尾琴美さんも交え、商品開発の裏側をお届けします。
【関連サイト】
>>株式会社愛媛海産
>>オンラインショップQUEEN MADE