一般社団法人Chefs for the Blue(シェフスフォーザブルー、以下C-BLUE)は、豊かな海の資源と食文化を守るため、フードジャーナリストとトップシェフたちが立ち上げた料理人チーム。
現在43人のシェフが在籍し、シェフと共に学び考える勉強会・講演会やフードイベント、自治体・企業との協働プロジェクトなど、持続可能な海をつくるためのさまざまな活動に取り組んでいます。
今回は、リトケイがC-BLUEと協力して進めている、離島の未低利用魚を使ったレトルト食品開発のプロジェクトについてご紹介します。
2021年より「島の魚食」を盛り上げるプロジェクトを継続するリトケイは、豊かな海と日本の魚食文化を未来につなぐことをミッションに活動するC-BLUEと共に、島々の未利用魚や低利用魚を活用したサステナブルで海の学びにつながる商品づくりに取り組んでいます。
本企画は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
取材・ritokei編集部 文・べっくやちひろ
島々の漁業を応援することは、日本の海を守ること
一般社団法人シェフスフォーザブルーは、豊かな海の資源と食文化を守るため、フードジャーナリストとトップシェフたちが立ち上げた料理人チーム。
現在は43人のシェフが在籍し、シェフと共に学び考える勉強会・講演会やフードイベント、自治体・企業との協働プロジェクトなど、持続可能な海をつくるためのさまざまな活動に取り組んでいます。
2023年夏、そんなC-BLUEとritokeiとの共同プロジェクトがスタートしました。それは、離島の未利用魚を使った商品の開発。離島で揚がる魚のうち、普段は市場に並ばないものをセレクトし、おいしく食べられるスープを開発するプロジェクトです。
「日本は広大な排他的経済水域を持つ国ですが、広い海の隅々まで目を行き渡らせ、海の環境を守っていくのは大変なことなんです。だから離島で漁業に関わる人々は、日本の海を守るためにいなくてはならない存在。島々の漁業を応援することは日本の海を守ることに直結するので、離島にはずっと関心がありました」と語るのは、C-BLUE代表の佐々木ひろこさん。
「離島の漁業を守りたい」という課題意識が一致したことから、この取り組みはスタートしました。離島の未利用魚・低利用魚を積極的に食べることは、これまで値が付かなかった魚の価値を高めて漁業関係者の新たな収入を生んだり、生態系のバランスを整えて島周辺の豊かな漁場を守ったりすることにつながるからです。
おいしく食べて、海の課題解決にもつながる商品を
佐々木さんと一緒にプロジェクトの中心を担うのは、外食業界でさまざまな加工品の企画・開発に携わってきた松尾琴美さん。さらに佐々木さんと松尾さんからの声かけにより、恵比寿のフレンチレストラン「アムール」の後藤祐輔シェフがレシピ監修で参加しています。
メニューの第一弾は、長崎県・対馬島(つしまじま)のアイゴを使ったスープ。なぜアイゴが選ばれたのか。それは、現在日本の海が抱えている課題に深く関わる魚だから。佐々木さんは次のように話します。
「アイゴは海藻類を食べてしまうので、温暖化によるアイゴの活性化は磯焼け(=浅海の岩場で海藻の群落が消失すること)の大きな原因になります。アイゴを食べること、きちんと値がつく魚にすることで、漁業者が進んで水揚げすることにつながり、磯焼けを食い止める可能性があると考えました。『私たちが関わる以上、海の課題解決にもつながる商品をつくりたい』という気持ちからアイゴを使うことになりました」
3種の魚の個性を活かし、常温保存のレトルト食品に
離島の産品を島外に販売する場合、地理的条件から製造や保管、流通などのコストが高くなるため、保管流通コストのかかる冷凍食品ではなく、常温保存できるレトルト食品を開発することに。
本プロジェクトでは、3島3種の未利用魚・低利用魚を活用しましたが、魚種によっては独特のクセが出やすいことも課題となりました。
「3種の中で特に大変だったのはアイゴですね。海の砂漠化を止めるためにうまく消費しなければならない一方で、おいしく調理するのが難しいことを実感しました」と松尾さん。
課題を乗り越えるため、どのような工夫を凝らしておいしく食べられるレトルト商品を開発したのか。後編では、企画・製造の裏側を対談形式でお届けします。